2022年07月11日更新
M&Aのよくある失敗パターン23選!実際の失敗例、成功するための対策も解説!
M&Aは希望しても必ず成立する取引ではないうえ、失敗に終わるケースもあります。成功するM&Aを実現するためには、過去の失敗例を学ぶことも重要です。この記事では、M&Aの失敗例の分析と成功するための対策を解説します。
目次
1. 日本で行われるM&Aは成功率が低い?
日本でのM&Aの成功率はあまり高くないといわれています。ここでいう成功とはM&A成約の可否ではなく、M&Aを実施した買い手側が、想定したとおりか、それ以上の成果を得られたという意味です。
現在、日本ではM&Aが盛んに行われるようになりました。成功率が高くない情報があるからといって、失敗を恐れM&Aを行わないでいると、チャンスロスしてしまっているかもしれません。
M&Aを実施することで、会社を急激に成長させている会社もたくさんあることも忘れないでください。
日本におけるM&Aの成功率
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2021年8月に発表した資料「2020年M&Aの実態調査」では、「過去5年間に実施した国内でのM&A成果」は以下のような結果でした。
- 期待を上回る成果:9%
- 期待どおりの成果:63%
- 期待を下回る成果:28%
これは、国内の単体売上高300億円以上の企業277社へのアンケート結果です。企業規模が違う中小企業のM&Aにそのまま当てはまるものではありませんが、参考値にはなるでしょう。
いずれにしろ、かつては成功率5割程度とも言われていた日本のM&Aが、段階を経て7割の成功率まで上がってきたといえます。しかし、一方でまだ3割は失敗していることになります。いかにそちら側にいかないようにするか、失敗例の分析は急務です。
2. M&Aにおける失敗とは
昨今、日本でも大企業による大規模なM&Aや、中小企業による事業譲渡、個人事業による小規模M&Aなど、M&Aがさかんに行われています。その目的は、新規事業参入の際のノウハウの獲得やコスト削減、既存事業強化などさまざまです。
M&Aは必ずしも成功するわけではありません。計画的に進めたり、専門家に相談したりしなければ、失敗するケースもあるでしょう。M&Aの失敗には以下のような要因があります。
- 投資対効果が悪い
- 損害が生じている
- 破産に追い込まれる
- のれんの減損損失が生じる
それぞれの失敗要因を見てみましょう。
①投資対効果が悪い
投資対効果が悪いとは、投資額に対して得られるリターンが少ないことを意味します。他にも買収したい企業が現れた場合、買収価格が跳ね上がることがあります。このとき、勢いで買収先を決めてしまうと、後悔することになりかねません。
事業を軌道に乗せるには時間がかかる場合があります。事業がうまくいっていても、投資対効果が得られず、結果的に失敗に終わってしまうこともあるでしょう。
②損害が生じている
企業価値評価が甘く、買収企業が巨額の損失を計上する場合があります。買収や事業譲渡では、この債務を引き継がなければなりません。このように調査が不十分であると、大きな損害が生じてしまうケースもあります。
③破産に追い込まれる
企業を買収する際には、専門家によるデューデリジェンスは必要不可欠です。相手企業の財務やコンプライアンスなどの調査を怠ってしまうと、買収した後に不正が見つかったり、不良資産の存在に気づけなかったりするでしょう。
最悪なケースとしては、巨額の債務を負い、破産にまで追い込まれることもあります。
④のれんの減損損失が生じる
「のれん代」とは、M&Aにおける買収価格と買収企業の純資産額との差額を計上するものです。企業買収後、貸借対照表に、この「のれん代」を含めた買収価格を記載します。
国際財務報告基準(IFRS)では、のれんの価値が著しく低下した際、一括して減損処理を行うこととされています。想定より事業がうまくいかず、買収企業の企業価値が減少したと監査法人から指摘を受けた場合、多額の減損を計上しなければなりません。
買収価格が適正でなかったケースでは、このようにのれんの減損損失が生じることもあるでしょう。
3. M&Aでよくある失敗パターン
M&Aでよくある失敗パターンをまとめました。ここでは以下の23の失敗パターンを、一つずつ解説します。
- M&Aアドバイザー選びを間違った
- M&Aの検討中に外部へ漏れてしまった
- 情報開示が不十分で不当な評価を受けた
- M&Aを考えずに廃業を検討する
- M&Aがゴールと認識してしまう
- M&Aが進む中で大幅な業績悪化
- 債務をきちんと把握していなかった
- M&A進行中の対応が不誠実だった
- 条件がいろいろと変わってしまう
- 売り手側の準備不足
- ターゲット企業を間違っている
- 持ち込まれた話に乗ってしまう
- コンプライアンス違反を犯してしまう
- すすめられるままに専門分野外のM&Aを行う
- デューデリジェンス不足
- チェンジ・オブ・コントロール条項に違反してしまう
- 価額設定を間違っている
- シナジー効果を期待し過ぎた
- 契約書が曖昧だった
- 株主の同意を得られなかった
- 統合プロセスがうまくいかなかった
- 買収先の従業員や取引先から反発を受けた
- 買収後も旧経営陣が運営し続けている
①M&Aアドバイザー選びを間違った
M&Aアドバイザー選びを間違うことで、M&Aや経営統合プロセス(PMI=Post Merger lntegration)の失敗につながるパターンがあります。昨今、M&A仲介機関も急増しており、各社によってM&Aアドバイザーの特性もさまざまです。
相談から統合プロセスまで面倒を見てくれるのは、M&A仲介会社のアドバイザーでしょう。金融機関は、M&Aによって発生する費用の融資を行うことが1番の目的だからです。
弁護士などの士業は専門分野内のことなら任せられますが、それ以外のことは他の士業と連携をしなければなりません。M&Aアドバイザーを選ぶときは、M&Aの経験・実績や業界に精通しているかなどもチェックしましょう。
②M&Aの検討中に外部へ漏れてしまった
M&Aの検討中に、そのことが外部に漏れてしまい失敗に終わるパターンがあります。「M&Aを検討している」こと自体が、外部からマイナスなイメージをもたれるケースが多いからです。
たとえば、取引先は「買収されるのは経営が傾いているからだろう。このまま取引を続けて大丈夫だろうか?」と不安に感じます。社員も「このまま働き続けていると倒産するかもしれない」と離職してしまうかもしれません。
M&Aを行うことはキーパーソンのみで検討し、一部の人以外には情報が漏えいしないよう細心の注意を払いましょう。相手企業や相談先のM&Aアドバイザーからも情報が漏れないよう秘密保持契約を結ぶと安心です。
③情報開示が不十分で不当な評価を受けた
不当な評価を受けてM&Aが成立しないパターンがあります。買い手は売り手の情報を基に会社の評価を行うため、情報は包み隠さず全て公開しましょう。
評価が下がることを恐れて不都合な部分を隠したくなるかもしれません。しかし、良いところも悪いところも隠さずに提示することで、正しく適正な評価が得られます。
簿外債務や給料未払いなどがあるのに「ない」と虚偽の回答をしても、デューデリジェンス(売却企業の精密監査)やM&A成立後に明らかになるはずです。虚偽の情報を提示すると、M&Aが破談になったり、損害賠償請求を受けたりなどトラブルに発展します。
このようなトラブルを避けるためにも、虚偽・隠蔽はせず、包み隠さず会社の情報を公開しましょう。
④M&Aを考えずに廃業を検討する
M&Aを考えずに廃業を検討する会社があります。2019年3月の「事業構想」によると、日本における中小企業・小規模事業経営者の120万人が後継者未定です。親族や従業員に後継者がいなくても、M&Aをすれば事業継続が可能です。
以前は、M&Aというと大企業同士が行うものでした。しかし現在は、事業承継問題を解決するためにM&Aを実施する中小企業が増加中です。廃業すると、従業員や取引先に迷惑をかけてしまいます。廃業を前提とするのではなく、事業継続するための選択をするべきです。
M&Aの選択肢があることを知って、具体的に検討することをおすすめします。
⑤M&Aがゴールと認識してしまう
M&Aの買い手側が「M&Aの成立がゴール」と認識すると、失敗に終わるでしょう。なぜなら、M&Aは一つの過程に過ぎないからです。M&Aの目的は企業によってさまざまですが、目的があります。
「エリアを拡大したい」「製品ラインアップを増やしたい」「販売チャネルを増やしたい」などのシナジー効果を発揮させ業績向上を狙います。ただし、シナジー効果を発揮するためには、経営統合作業をしなければなりません。
経営統合作業は、売り手企業と買い手企業が一つの組織となって営利活動をするために不可欠な作業です。M&A成立自体をゴールと捉えず、M&Aの目的を達成させるために注力しましょう。
M&A成立後のPMI
PMIは、M&Aが成立した後のシナジー効果を最大限にする経営統合プロセスで、M&A後に必要な過程です。伝達方法や報酬制度、人員配置、情報伝達の仕組み、ITシステムなどの統合をPMIで行います。
⑥M&Aが進む中で大幅な業績悪化
M&Aを検討している中、大幅な業績悪化に陥り失敗してしまうパターンがあります。急激な環境の変化や経済危機などが起こった場合は、経営者の責任ではありません。しかし、経営者がM&Aに労力と時間を割いたために、本業の業績が悪化することもあります。
本業である経営をおろそかにすると、重要な課題に気づかず業績悪化につながるでしょう。最悪の場合、会社に稼ぐ能力がないと判断され、当初より売却価額が下がることもあります。このような事態に陥らないためにも、M&Aアドバイザーなど専門家のサポートが欠かせません。
M&Aに関することはM&Aアドバイザーに一任し、本業に割く労力や時間を十分に残しましょう。
⑦債務をきちんと把握していなかった
M&Aを実行するにあたり自社の持つ債務をきちんと認識していなかった場合、M&Aは失敗に終わるでしょう。交渉段階やM&Aの条件が決まった後で簿外債務が発覚すると、会社の信用が下がってしまいます。
自社の債務を認識できていないことは、自社の内部をしっかり理解できていないことです。もしかすると、まだ簿外債務が見つかるかもしれません。こうなると、相手企業は「この経営者は信用できない」と思っても仕方ありません。
M&Aを失敗させないためにも、M&Aの検討を具体的に進める前に、自社の内部事情をよく認識すべきです。自社の債務を認識し、正確な情報を相手企業に伝えましょう。
⑧M&A進行中の対応が不誠実だった
M&Aを進める中で、対応が不誠実だと失敗してしまいます。M&Aでは、経営者同士の信頼関係は大事だからです。M&Aの実施は、売り手にとっても買い手にとっても社運をかけた一大事ですから、相手選びには慎重になります。
そのような中、交渉や情報のやり取りで不誠実な対応を取られると「取引したくない」と思われても仕方ありません。たとえば、条件を安易に変えたり、情報を後出ししたりすると不誠実だと思われるでしょう。自社の意見を一方的に押し付けるのも印象が悪いです。
互いの意見を尊重し、両社にとって最善な結果が出るよう努力をしましょう。
⑨条件がいろいろと変わってしまう
相手に要求する条件をすぐに変えてしまった結果、失敗するパターンもあります。買い手側と売り手側の希望する条件が異なるのは当然です。お互いが自社の利益を守るために主張します。
しかし、一度出した条件を「やっぱりこうしてほしい」と変更すると、不信感を抱かせてしまうでしょう。合理的で納得のいく理由がない限り、一度提示した条件の変更はやめるべきです。
M&Aは、お互いが経営における課題を解決するために行う手段といえます。どちらか一方のみが損をしたり得をしたりするのであれば、M&Aは成立しません。お互いが納得いく条件を見つけ、どちらも「やってよかった」と思えるM&Aを目指しましょう。
⑩売り手側の準備不足
売り手側の準備不足によってM&Aが失敗するパターンがあります。たとえば、株式譲渡したいにもかかわらず、株主の整備ができていなかったり、50%以上の株を買い手に譲渡したいのに、株主が多過ぎて拒否する株主がいたりなどです。
このような状態では、株式譲渡を実現できません。株式譲渡ができても、経営権が買い手に移ってから株式の実態がわからなくなってしまいます。交渉がある程度、進んだ段階で株式の整備不足が発覚するのは、会社の信用が問われる事態です。
M&Aの検討を始めた段階で、株式の整備を行い、株式譲渡をする準備をしましょう。
⑪ターゲット企業を間違っている
ターゲット企業を間違ってM&Aを成立したことで失敗するパターンがあります。M&A本来の目的を忘れ、目先の利益に目がくらむときに起きがちです。
たとえば、「従業員や取引先へ迷惑をかけずに事業を継続させたい」という目的でM&Aを検討したにもかかわらず、「譲渡価額が高い相手先を選んでしまう」といったケースが挙げられます。
経営者の考え方や経営理念をしっかり確認し、自社を守ってくれるかを判断したうえで相手企業を決めるべきでしょう。候補先のイメージや条件は、M&Aを検討した段階である程度、絞りこむべきです。
M&Aの本来の目的が達成できる相手企業を選ぶことを第一優先にしなければなりません。
⑫持ち込まれた話に乗ってしまう
持ち込まれた話に乗ってしまったばかりにM&Aが失敗することもあります。本来、M&Aは自社の経営理念や事業計画に乗っ取って実行を決めるものです。
しかし、金融機関などからM&Aの話を持ち込まれ、「なんとなく会社にとってよさそうだ」というだけで実行すると失敗してしまうでしょう。持ち込まれた話でも、この会社とM&Aをすればどのようなシナジー効果が見込めるのか、しっかりと見極めなければなりません。
検討が不十分なまま同業者の候補先とM&Aを行うと、コストがかかるだけになるでしょう。他の企業とM&Aをした場合の効果を比較し、検討して行うことも大切です。
⑬コンプライアンス違反を犯してしまう
コンプライアンス違反を犯すと、M&Aの失敗につながります。コンプライアンスとは、日本語では「法令順守」という意味です。つまり、法律や規則を守って経営を行うことであり、現在の企業活動ではコンプライアンスをおろそかにしてはいけません。
なぜなら、コンプライアンス違反を犯すと、訴訟や行政処分などの対象となるからです。M&Aの話がまとまっていても、コンプライアンス違反をすると破談になってしまいます。コンプライアンス違反によって倒産する企業も多く、経営リスクになりかねません。
パワハラやサービス残業もコンプライアンス違反に該当する可能性があるため、十分に気をつけましょう。
⑭すすめられるままに専門分野外のM&Aを行う
すすめられるがままに専門分野外のM&Aを行うことで、失敗に終わるパターンもあります。もちろん、専門分野外のM&Aが悪いわけではありません。しかし、全くノウハウのない事業を運営するのは難しいです。
M&Aを実行する前に十分検討しなければ、成功させることは困難でしょう。もとの主力事業にまで影響をおよぼす可能性もあります。専門分野外の事業をM&Aするときは、シナジー効果や経営の方向性を検討して準備することが重要です。
「すすめられるがままに専門分野外のM&Aを行ってしまい、投資費用だけかかってしまった」とならないように十分検討しましょう。
⑮デューデリジェンス不足
デューデリジェンス不足が原因でM&Aが失敗することもあります。デューデリジェンスとは、M&A成約前に買い手が詳細に売り手の企業調査を行うことです。これは、売り手企業の実態を明らかにすることが目的で行われます。
しかし、十分に調査しきれないままM&Aを成立させてしまう企業も少なくなりません。あらゆる側面から調査しなければならないため、複数の専門家を雇う必要があるからです。
膨大な費用がかかるからと最小限のデューデリジェンスに抑えると、見つけなければならないリスクや課題を見逃しかねません。その結果、M&A成立後に問題が発覚し、見すえていた成果が得られなくなるでしょう。
⑯チェンジ・オブ・コントロール条項に違反してしまう
チェンジ・オブ・コントロール条項に違反することで、M&Aが失敗に終わることがあります。チェンジ・オブ・コントロール条項とは、商取引契約書などにおいて、契約当事者に支配権の変更があったときの扱いを定めた条項のことです。
具体的には、取引先と交わしている契約に解除する理由ができたとき、契約相手に対して通知・承諾を得なければならないと定めています。M&Aをして会社や事業の経営権を手に入れたものの、主要取引先や仕入れ先との契約が切れると経営に大きな影響を及ぼします。
チェンジ・オブ・コントロール条項に違反すると失敗してしまうため、注意しましょう。
⑰価額設定を間違っている
M&Aの売却(買収)価額が適正でなければ、M&Aが失敗に終わってしまいます。売り手側は自社を過大評価しがちです。相場よりも高い価額で売却したいため、買い手がなかなか見つかりません。
買い手が見つかっても譲渡価額を1円でも高くしようと交渉すると、破談する恐れもあります。一方、買い手はできるだけ低い価額で買収したいと考えます。しかし、実際は低い価額で買収できる会社には注意しなければなりません。
なぜなら、市場価値がないものを買うのと同義だからです。十分に企業評価をせずに言い値で買収すると、シナジー効果以上に経費がかかることもあります。売り手・買い手とも妥当性のある適切な価額設定で交渉するよう心がけましょう。
⑱シナジー効果を期待し過ぎた
シナジー効果を期待し過ぎた結果、M&Aが失敗に終わるパターンもあります。たとえば、関東エリアで活動しているA社が、関西エリアで活動している同業のB社を買収したケースです。A社は規模の小さいB社でも、1〜2年程度でA社と同じ規模の売上を達成できると考えていました。
しかし、関西の市場調査を十分に行わないままシナジー効果を予測したため、何年たってもB社は今以上の規模になりませんでした。M&A成立段階では、未来のことは誰も予測できません。
市場調査や会社の力をできるだけ分析することで、ある程度のシナジー効果の予測は可能です。それを怠ると、シナジー効果以上の投資になります。
⑲契約書が曖昧だった
契約書が曖昧だったことで、M&Aが失敗するパターンもあります。売り手・買い手ともに、契約書は入念に作成しなければなりません。
特に事業譲渡の場合は、何を譲渡するのかが第三者でもわかるように記載しなければ、「A不動産は譲渡対象だ」「譲渡対象ではない」などと後々トラブルに発展します。ほかにも、条件は第三者が読んでもわかるように記載すべきです。
万が一、裁判に発展した場合、判決は契約書に基づいて判断されます。自社を守るためにも、曖昧な契約書を取り交わさないように注意しましょう。内容によっては契約書自体が無効になることもあります。
M&Aアドバイザーや弁護士などの専門家にリーガルチェックを受け、問題のない状態で契約書を取り交わしましょう。
⑳株主の同意を得られなかった
株主の同意を得られず、M&Aが失敗に終わることも珍しくありません。経営者が会社の株を100%持っているなら心配ありませんが、M&Aを成立させるためには株主の同意が必要です。特に非上場企業は、株主全員の承諾をあらかじめ得ておくべきといえます。
もし、株主全員の同意が得られなければ、M&Aを実行することは非常に困難です。もちろん、100%の株を譲渡しなくても、経営権を買い手に移動はできます。しかし、M&Aに反対した株主は、今後、買い手経営者にとって邪魔な存在となるでしょう。
なぜなら、買い手経営者の意向に沿わない意見を言う可能性が高いからです。円満なM&Aを実行するためにも、株主全員の承諾を事前に得ましょう。
㉑統合プロセスがうまくいかなかった
統合プロセスがうまくいかなかった場合、そのM&Aは失敗といえます。統合プロセスとは、買収後に売り手企業の従業員に働きやすい環境を提供して2社を融合させることです。具体的には、社内のシステムや人事を統合させるだけでなく、社風や企業文化も統合させます。
統合プロセスを早々に終わらせなければ、なかなかM&Aで期待したシナジー効果を発揮できません。したがって、統合プロセスに向けて、M&A成立前からしっかり計画を立てて実施することが大切です。
M&Aの成立はもちろん大事ですが、その後の統合プロセスをないがしろにすると、ただ2つの企業が合体しただけになります。シナジー効果を得るためにも、計画的に統合プロセスを実行しましょう。
㉒買収先の従業員や取引先から反発を受けた
買収先の従業員や取引先から反発を受けることで、M&Aが失敗するパターンもあります。競合会社に買収されるとなると、心理的に不安になる従業員がいてもおかしくありません。今の会社・ブランドだからこそ働いている従業員も多いでしょう。
取引先から「特定の買い手企業との取引になるなら契約を打ち切りたい」と言われる可能性もあります。このように、M&A実施後、従業員が離職してしまったり、取引先との契約がなくなったりする恐れがあります。
この場合、事業がうまくいかず、シナジー効果も発揮できない結果になるでしょう。
㉓買収後も旧経営陣が運営し続けている
買収後も旧経営陣が運営を続けることで、M&Aが失敗することもあります。実際に、引き継ぎのため旧経営陣が買収された事業や会社を運営するケースは多いです。このとき、役員報酬などの対価を支払います。
全て納得のうえで業務に当たっているのであれば問題ありません。しかし、本音では「早く引退したい」「インセンティブが少ない」と感じている可能性もあります。すでに経営へのモチベーションが低ければ、会社や事業の運営もうまくいかなくなります。
なすがままに経営を行う状況に陥らないよう、十分なインセンティブを条件に引き継ぎを依頼しましょう。拘束時間をできるだけ短くし、モチベーションを維持させることが大切です。
M&Aで失敗しないためには専門家に依頼
M&Aで失敗しないためには、M&Aの専門家に依頼することが大切です。M&Aで失敗しているほとんどのパターンが、自社内で完結しようとすることにあります。
もちろん、M&A仲介会社選びに失敗すればM&Aも失敗してしまいますが、M&Aの専門家に相談しないこともM&Aが失敗する原因となり得るでしょう。
M&A総合研究所では、M&Aに精通したM&Aアドバイザーが親身になって案件をフルサポートします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。会社売却(株式譲渡)・事業譲渡などのM&Aに関して、随時、無料相談を受け付けていますのでお気軽にお問い合わせください。
4. M&Aの失敗から学ぶ成功率を上げる10の対策
ここでは、前章の失敗パターンを踏まえて、M&Aを成功させるためのポイントを10項目にわたって見ていきます。
- 専門分野で行う
- 戦略的に行う
- デューデリジェンスを徹底する
- 買収金額に注意する
- 交渉も丁寧にする
- 買収先従業員との関係性を築く
- 買収先の企業理念も大切にする
- 統合プロセスを計画的に行う
- 情報開示をきちんと行う
- M&Aアドバイザーに依頼する
①専門分野で行う
M&Aで失敗しないためには、専門分野内のM&Aを実施しましょう。なぜなら、専門分野外の事業や会社を経営することはとても難しいからです。
専門分野外の分野に進出するのであれば、事前にマーケティング調査をして、事業を伸ばしていくための戦略を立てる必要があります。M&A実施後の計画を綿密に練れたら、十分にシナジー効果が発揮される可能性があるでしょう。
②戦略的に行う
M&Aは戦略的に行わなければ失敗します。M&Aは、あくまでも何かを達成させるための経営手段だからです。M&Aを検討する時点で目的をしっかりと定める必要があります。たとえば、エリア拡大、技術力や特許の獲得、新規事業進出などです。
M&Aの目的をはっきりさせれば、相手企業選びや条件の優先順位を間違えることはないでしょう。
③デューデリジェンスを徹底する
デューデリジェンスを徹底することで、M&Aは成功に近づきます。M&Aで発生するリスクや課題の洗い出しができるからです。事前にリスクや課題がわかれば、買い手は十分な対策を考えられますし、適正価額で交渉できます。
費用や労力などのコストはかかりますが、デューデリジェンスを怠らないよう注意しましょう。
④買収金額に注意する
M&Aを成功させるために、買収金額には注意しましょう。M&Aでは、買収価額はとても重要です。適正な価額で買収しなければ、シナジー効果を発揮できず投資に見合った結果が出なかったり、売り手との交渉で破談したりする要因となります。
M&Aには妥当だと考えられる価額がありますから、専門家に頼り適正価額で買収しましょう。多くのM&A仲介会社が企業価値算定を無料で行っているので、活用するのも一つの手段です。
⑤交渉も丁寧にする
M&Aにおける交渉は丁寧に誠実な態度で行いましょう。誠実な経営者でなければ手を組みたくない、と見限られてしまいます。特に、中小企業の経営者は自社を愛する人が多いです。従業員や取引先などに迷惑をかけるかもしれないと判断されるとM&Aは成立しないでしょう。
M&A成立後も、売り手企業の従業員や取引先の協力がなければ、シナジー効果を生み出すことは難しいです。多くの人から信頼を得るためにも、丁寧で誠実な態度で接しましょう。
⑥買収先従業員との関係性を築く
買収先従業員との関係性は、しっかり築いてください。M&Aが成立した時点では、経営者との信頼関係は築けているといえます。しかし、従業員がM&Aに不安を抱き反対しているケースも少なくありません。
実際に事業を動かすのは従業員なので、従業員のモチベーションを高めることにも気を配るべきです。「この経営者についていきたい」と思われるように、関係性をしっかり築きましょう。
⑦買収先の企業理念も大切にする
買収先の企業理念や社風も大切にしてください。買い手の企業理念や社風を浸透させることは、シナジー効果を発揮するうえで大切です。しかし、押し付けてしまうと買収先従業員から反発が出るでしょう。
全く別の組織である2つの会社が、同じ組織として活動するには時間がかかるものです。浸透させる計画を練って実行しましょう。M&A成立前の時点で、買収先経営者から企業理念や社風を聞き、同じ組織としてやっていけるか判断することも大切です。
⑧統合プロセスを計画的に行う
統合プロセスを計画的に行うことは、M&A成功への近道といっても過言ではありません。計画なしに無理やり2社を統合させようとしても、買収先従業員を混乱させるだけです。モチベーションが下がり、「こんな経営者のもとでは働けない」と離職の原因を作るかもしれません。
統合プロセスは、2社の経営者やキーパーソンを交えて100日計画を立てることをおすすめします。研修やグループワークを行うなど、最善の方法を探りましょう。
⑨情報開示をきちんと行う
売り手・買い手両社とも、M&A成立前に情報開示をしっかり行いましょう。特に、売り手企業は、自社を高く売りたい一心で相手によく見せようとしがちです。しかし、正しい情報を伝えなければ後々トラブルを引き起こしかねません。
都合の悪い情報を隠したり、誤った情報を伝えたりすると、後で発覚した場合に裁判になる可能性もあります。買い手は十分なデューデリジェンスを行い、売り手は誠実に情報開示をしましょう。
⑩M&Aアドバイザーに依頼する
M&Aを成功させたいのであれば、M&Aアドバイザーに業務の依頼をしましょう。M&Aアドバイザーとは、M&Aを総合的にサポート・コンサルティングする存在です。
M&Aの知識はもちろん、業界知識もあるので、最適な相手先を紹介したり交渉のアドバイスを行ったりできます。ただし、M&Aアドバイザーによって成功・失敗は左右されるため、実績の多いM&Aアドバイザーを選びましょう。
複数のM&Aアドバイザーに相談し、1番誠実な対応をする人を選ぶことで成功へと近づけます。
M&A総合研究所には、M&Aに豊富な経験を持つアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。会社売却(株式譲渡)・事業譲渡などのM&Aに関して、随時、無料相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
5. M&Aの失敗例
有名な上場企業でも、過去にM&Aを失敗したことが明らかになっています。以下の具体事例の内容をご覧ください。
- ディー・エヌ・エー(DeNA)によるiemoとペロリへのM&A失敗例
- マイクロソフトによるノキアへのM&A失敗例
- LIXIL(リクシル)によるグローエへのM&A失敗例
- 丸紅によるガビロンへのM&A失敗例
- キリンホールディングスによるスキンカリオールへのM&A失敗例
- パナソニックによる三洋電機へのM&A失敗例
- 第一三共によるランバクシーへのM&A失敗例
- HOYAによるペンタックスへのM&A失敗例
- 東芝によるウエスチングハウスへのM&A失敗例
- 新生銀行によるアプラスへのM&A失敗例
- 日立によるIBMへのM&A失敗例
- ウォールマートによる西友へのM&A失敗例
- 古河電工によるルーセント・テクノロジーへのM&A失敗例
- NTTドコモによるAT&TワイヤレスなどへのM&A失敗例
- NTTコミュニケーションズによるVerioへのM&A失敗例
①ディー・エヌ・エー(DeNA)によるiemoとペロリへのM&A失敗例
2014年10月、ディー・エヌ・エーはiemoとペロリを総額50億円で子会社化しました(個別の買収額は未発表)。iemoとペロリはキュレーションサイトを運営している会社です。この買収により、ディー・エヌ・エーは10のキュレーションサイトを入手しました。
ディー・エヌ・エーは、これを機にキュレーションサイト運営事業に着手したわけです。しかし、入手した各サイトにおいて、外部記事やサイト内容のコピペによる無断使用や、簡単なリライト記事を中心とした安易なサイト構成など、ずさんな運営が明るみに出ます。
その結果、大炎上騒動に発展し、ディー・エヌ・エー代表者が謝罪を行い、10サイト全て閉鎖する事態となりました。
②マイクロソフトによるノキアへのM&A失敗例
2014年4月、アメリカのマイクロソフトは、フィンランドのノキアのデバイス(携帯電話)事業を約72億ドル(当時の為替レートで約7,488億円)で買収しました。マイクロソフトとしては、AppleやGoogleに追いつくべく、自社のスマートフォン事業の拡大が狙いです。
しかし、Windows MobileやWindows Phoneが、想定したような売れ行きを示すことはありませんでした。翌2015年には、元ノキアの従業員を大量解雇し、約76億ドル(当時の為替レートで約9,120億円)の減損損失を計上するに至っています。
③LIXIL(リクシル)によるグローエへのM&A失敗例
2014年1月、日本の住宅設備機器メーカーであるLIXILは、ドイツの水栓器具メーカー最大手のグローエを約4,000億円で買収しました。グローエには中国にジョウユウという子会社があり、LIXILはジョウユウも孫会社化したことになります。
ところが、翌2015年4月に、そのジョウユウで不正会計問題が発覚しました。その結果、債務超過となったジョウユウは破産処理することになります。この一連の問題により、LIXIL本体としても608億円の減損損失を計上する事態となりました。
このM&Aの失敗は、LIXILに海外子会社のマネジメント管理体制・施策が整っていなかったことが原因とされています。
④丸紅によるガビロンへのM&A失敗例
2013年7月、丸紅は、アメリカの穀物会社大手であるガビロンを約2,880億円で買収しました。丸紅としては、アメリカでの穀物集荷事業を拡大し、中国をはじめとしたアジアでの販売で業績を伸ばそうという狙いです。
ところが、1社寡占となるような事態をよしとしない中国政府が、丸紅の中国国内での事業に制限を設けました。これにより、丸紅の目論見は外れて計画は未達となり、のれんの減損損失約500億円を計上する事態になりました。
海外では、中国に限らず国家体制の違いにより、自由主義経済圏とは全く異なるビジネス環境が存在します。この事例は、そのようなカントリーリスクの考慮が不十分だったM&Aといえます。
⑤キリンホールディングスによるスキンカリオールへのM&A失敗例
2011年11月、キリンホールディングスは、ブラジルで市場シェア2位の大手ビール会社であるスキンカリオールを約3,000億円で買収しました。キリンホールディングスとしては、縮小する国内市場でのシェア争い以外にも、国外市場での業績拡大を狙ったのです。
ところが、買収当時は好景気だったブラジルの経済状態が急激に悪化しました。ライバル企業との販売競争にも負け、2015年には約1,100億円の減損損失を計上し、トータルでも473億円の赤字決算になってしまいました。
海外の景気動向予測が難しいのは確かですが、ライバル企業の動向など、もっと事前に調査できたことはあったはずです。なお、ブルジルキリン(スキンカリオールから社名変更)は、2017年7月、約770億円でハイネケングループ(オランダ)に売却されました。
⑥パナソニックによる三洋電機へのM&A失敗例
2009年12月、パナソニックは、三洋電機の株式(議決権)過半数を取得し、連結子会社化しました。2011年4月に、TOB(Take Over Bid=株式公開買い付け)と株式交換を実施して、完全子会社化しています。一連の総費用は約9,000億円でした。
パナソニックとしては、三洋電機のグループ化によって国内最大手の電機メーカーとなり、今後、優位に業績を上げていこうという思惑でした。巨大組織の経営統合がうまく進展しなかったのか、思ったようなシナジー効果は発現しなかったのです。
2012年3月期の決算では、約2,500億円ののれん減損損失を計上するに至っています。業績不振は為替相場が円高になったことなどが要因ともされていますが、シナジー効果創出のためのPMIの難しさを表す事例とも言えるでしょう。
⑦第一三共によるランバクシーへのM&A失敗例
2008年8月、日本の製薬会社である第一三共は、インドの後発医薬品メーカーのランバクシーを約4,900億円で買収しました。第一三共としては、このM&Aを機に後発医薬品事業に乗り出す狙いです。
ところが、問題は買収過程であるTOB実施中に発覚します。ランバクシーのずさんな製造管理体制がFDA(Food and Drug Administration=アメリカ食品医薬品局)より指摘を受け、30種以上の医薬品がアメリカでは禁輸措置となってしまいました。
この結果、ランバクシーの株価は暴落し、第一三共は2009年3月期決算で3,595億円の評価損(特別損失)計上となり、トータルでも2,154億円の赤字に陥ってしまったのです。その後、2014年4月には、第一三共はランバクシーの全株式をインドの医薬品会社に売却しています。
事実上、第一三共は後発医薬品事業から撤退することになりました。この事例の失敗原因は、デューデリジェンスの不足と言われています。
⑧HOYAによるペンタックスへのM&A失敗例
2007年8月、光学レンズメーカー最大手のHOYAは、カメラ・医療機器メーカーのペンタックスを約945億円のTOBにより子会社化しました。翌2008年の3月には、HOYAを存続会社とする吸収合併が実施されています。
実は、この一連の経緯には騒動がありました。当初は合併で合意したものの、ペンタックス側役員に反対者が多数現れ、合意は白紙になります。そこで、HOYAはTOBの実施を発表しました。一方、ペンタックス取締役会は反発して、単独の事業計画を大株主に提示したのです。
しかし、ペンタックス大株主が取締役会の事業計画に賛同しなかったため、ペンタックス側は最終的にTOBを受け入れました。このようなゴタゴタ騒ぎの末の合併だったせいか、業績は伸びず、2009年3月期の決算では、304億円の減損損失計上となります。
2011年10月には、デジタルカメラ事業をリコーに売却しました。企業統合の難しさを示す事例です。
⑨東芝によるウエスチングハウスへのM&A失敗例
2006年10月、東芝は、アメリカの原子力発電所建設・運営大手のウエスチングハウスを約6,600億円で買収しました。しかし、その後、東芝にとって、予期せぬ2つの出来事が起きます。一つは、2011年の東日本大震災での福島原子力発電所の被災です。
これにより、世界的に原子力発電所の安全問題が問われるようになり、原子力発電所の建設は凍結、または中止となる国が相次ぎました。もう一つは、ウエスチングハウスにおける不正会計の発覚です。
この2つの問題の直撃により、東芝は約2,600億円ののれんの減損損失を計上し、最終的に7,000億円規模の損失に見舞われています。
⑩新生銀行によるアプラスへのM&A失敗例
2004年9月、新生銀行は、クレジットカード・信販会社であるアプラスの第三者割当増資を引き受けました。この際、アプラスの株式67%分に対し約350億円を出資するとともに、アプラスのメインバンクであったUFJ銀行から優先株式を300億円で取得しています。
新生銀行としては、アプラスの経営改善に乗り出したわけですが、その後も優先株式の取得・出資を続けたにもかかわらず、アプラスの顧客・元顧客からの過払い金訴訟が続く中、業績は悪化してしまいました。
この結果、新生銀行では、最終的に約1,100億円もの減損損失を計上とする事態となってしまったのです。
⑪日立によるIBMへのM&A失敗例
2002年12月、日立は、アメリカのIBMからハードディスク事業を20億5,000万ドル(当時の為替レートで約2,460億円)で買収しました。日立としては、ハードディスク事業の世界市場に打って出たわけです。
しかし、ちょうどこの買収時期のあたりから、ハードディスクの低価格化が始まり、価格破壊へと至りました。その結果、日立の同事業は毎年100億円単位の赤字を計上する状態に陥ってしまったのです。
結局、日立は、2011年に同事業をアメリカのウェスタン・デジタルに約48億ドル(当時の為替レートで約3,840億円)で売却しています。
⑫ウォールマートによる西友へのM&A失敗例
2002年5月、アメリカの小売り大手であるウォルマートは、経営不調に陥っていた西友の支援のため、資本業務提携を締結しました。当初は第三者割当増資で株式約6%を取得しただけでしたが、業績が改善しないため、徐々に資本比率を上げていきます。
最終的には、2008年4月に完全子会社化しました。それまでに要した費用は約2,500億円ほどですが、2002年の段階で完全子会社化しておけば、費用はもっと少額で済んだというのがおおかたの見方です。M&Aの目的と戦略が当初は明確に定まっていなかったのではないかと考えられます。
2021年3月、ウォルマートは、西友の株式65%をアメリカの投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツに、20%を楽天DXソリューション(楽天グループ子会社)に売却しました。
⑬古河電工によるルーセント・テクノロジーへのM&A失敗例
2001年11月、古河電工は、アメリカの光ファイバー事業者であるルーセント・テクノロジーを約2,800億円で買収しました。M&A直後の古河電工は光ファイバー市場で世界2位に躍進し、M&Aは成功しています。
ところが、その後、ITバブル崩壊という事態が訪れ、同事業の売上高は約5分の1も縮小してしまいました。その結果、古河電工は、2004年3月期決算には、約1,000億円の評価損を計上しています。
⑭NTTドコモによるAT&TワイヤレスなどへのM&A失敗例
NTTドコモは、海外進出を狙って2000年から2001年にかけて複数のクロスボーダーM&A(海外企業とのM&A)を実施しています。2000年7月に、オランダのKPNモバイルとイギリスのハチソン3GUKに、それぞれ約4,000億円と約1,900億円を出資しました。
2001年1月のアメリカの携帯電話会社AT&Tワイヤレスには、約1兆1,000億円出資しています。しかし、日本で成功した「iモード」も、世界では通用しませんでした。その結果、2004年から2005年にかけて海外事業から撤退しています。
合計損失額は1兆5,000億円に達しました。
⑮NTTコミュニケーションズによるVerioへのM&A失敗例
2000年5月、NTTコミュニケーションズは、アメリカのインターネット・ソリューション・プロバイダーであるVerio(ヴェリオ)にTOBを実施し、約6,000億円で買収しました。買収後、NTTコミュニケーションズの米国子会社と合併させています。
NTTコミュニケーションズとしては念願の海外進出でしたが、買収・合併後の業績は上向かず、2001年9月期決算では、約5,000億円の減損損失計上でした。
6. M&Aで失敗をしないアドバイザー・仲介会社の選び方
アドバイザー・仲介会社を選ぶ際に、客観的にこれといった決め手はありません。だからこそ、アドバイザー選びで失敗しないためには、複数のアドバイザーに相談して比較するのが得策です。よい仲介会社の特徴はいくつかあるため、参考まで以下に記します。
- 実績が豊富である
- 担当者が話しやすい
- 対応が早い
- 料金体系が明確で安い
- 専門性が高い(業種、会社規模など)
これらのポイントをしっかりチェックし、M&Aを成功させるために優秀なM&Aアドバイザーに依頼しましょう。
7. M&Aのよくある失敗パターンまとめ
M&Aの23の失敗パターンを紹介しました。これらの失敗をしないためにも、M&Aを行う際は以下の10個のポイントを押さえましょう。
- 専門分野で行う
- 戦略的に行う
- デューデリジェンスを徹底する
- 買収金額に注意する
- 交渉も丁寧にする
- 買収先従業員との関係性を築く
- 買収先の企業理念も大切にする
- 統合プロセスを計画的に行う
- 情報開示をきちんと行う
- M&Aアドバイザーに依頼する
M&Aを検討し始めたら、早い段階でM&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。そうすることで、スケジュールやM&A戦略を一緒に作ることが可能です。
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