ビジネスで求められるM&Aの基礎知識!代表的手法、メリットを解説【事例あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aの実施件数は近年増加しており、今後も増加していくと予測されています。、ビジネスを行ううえでも、M&Aの基礎知識は非常に役立ちます。この記事では、ビジネスに求められるM&Aの基礎知識や、代表的手法とメリットを解説します。

目次

  1. ビジネスで求められるM&Aの基礎知識
  2. ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法
  3. ビジネスシーンでよく見るM&Aの各手法のメリット
  4. ビジネスで求められる有名M&A事例の知識
  5. まとめ
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1. ビジネスで求められるM&Aの基礎知識

ニュースや新聞などでM&Aに関する報道を見聞きする機会もあり、ビジネスにおいてもM&Aの基礎知識を持っておくことは非常に役立ちます。

しかし実際にM&Aを経験したことがあるという人は少ないため、M&Aの意味や手法がよくわからないという方もいるかもしれません。

この記事ではビジネスで求められるM&Aの基礎知識や代表的手法の特徴・メリットを解説しますが、まずはM&Aの意味と現状・動向についてみていきましょう。

M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」というビジネス用語の略語となっており、合併・買収」という意味になります。

以前までは、M&Aというと「敵対的買収」などがイメージされ、ビジネスにおいて良い印象がありませんでした。

買収には、相手の会社が合意したうえで行う友好的買収と相手の企業の合意なく行う敵対的買収とがありますが、現在行われている買収の多くは友好的買収にあたります。

最近ではM&Aの印象も大きく変わってきており、ビジネスにおけるM&Aは大企業だけではなく、中小企業も活用するなど幅広く活用されるようになっています。

2. ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法

M&Aの手法にはさまざまな種類があり、M&Aを行う目的に合わせて選択されます。ここでは、ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法として以下の7つを紹介します。

【ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法】

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 株式交換
  • 株式移転
  • 会社分割
  • 合併
  • 提携

株式譲渡とは

ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法の1つ目は、株式譲渡です。株式譲渡とは、自社が発行している株式を第三者へ譲渡して経営権を移行する手法です。

会社買収を行う際に多く用いられる手法であり、比較的簡単な手続きで経営権の移行ができるメリットがあります。

株式譲渡では、株式を過半数すると経営権を掌握することができ、100%取得すれば完全子会社化することができます。

事業譲渡とは

ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法の2つ目は、事業譲渡です。事業譲渡とは、自社の持つ事業の一部または全てを第三者へ譲渡する手法です。

事業譲渡の取引対象となる「事業」には、資産・人材・ノウハウやブランドなど、有形無形を問わずすべてのものが含まれます

その事業のなかから譲渡するものを売り手・買い手が協議のうえで決定します。また、事業譲渡は事業のみを譲渡するため、会社自体は存続するのも特徴です。

株式交換とは

ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法3つ目は、株式交換です。株式交換とは、対象会社の発行株式をすべて買い取り、自社の完全子会社とする方法です。

株式交換後は、2つの会社の間に完全親子会社関係が生まれます。株式交換は組織再編を目的として行われることが多く、経営の統合や効率向上などで有効な手法です。

株式移転とは

ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法の4つ目は、株式移転です。株式移転とは、会社が発行した株式の全てを新設会社へ取得させる手法です。

株式移転を行うことにより、新設された会社が100%の株式を保有することになり、完全親子会社関係が生まれます。

株式交換と株式移転は、ともに完全親子会社関係を築く組織再編行為にあたりますが、株式交換では親会社になるのは既存会社、株式移転の場合は新設会社である点が異なります。

会社分割とは

ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法の5つ目は、会社分割です。会社分割とは、自社が行っている事業を第三者へ引き継ぐ手法です。

対象事業を譲渡する手法には事業譲渡もありますが、両者の違いは包括承継か個別承継かという点、組織再編行為か売買かという点です。

事業譲渡では、個々の事業を売買するため、権利や契約がそのまま引き継がれるわけではなく、それぞれの手続きが必要になります。

その一方で、会社分割は組織再編行為にあたり、包括承継であるため権利や契約もそのまま引き継がれます。

【会社分割の種類】

  1. 新設分割
  2. 吸収分割

1.新設分割

新設分割とは、新しく設立した会社へ事業を引き継ぐことをいいます。新設分割をさらに分けると、分社型新設分割・分割型新設分割・共同新設分割の3つになります。

分社型は、事業を譲渡した対価を売り手会社が受け取るケースであり、持株会社化を行いたい場合などに適しています。

分割型は、事業を譲渡した対価を売り手会社の株主が受け取るケースをいい、グループ企業の組織再編に適しています。

また、共同新設は2社以上が合同で行うものであり、それぞれが事業を新設会社へと譲渡します。

2.吸収分割

吸収分割とは、すでに存在している会社に対して、事業の権利や資産などを承継させる手法のことをいいます。

吸収分割を行うことにより、権利を手に入れた会社は、手に入れた対価ということで自社の株式、もしくは現金を渡す必要があります。

新設分割・吸収分割を行う場合、どちらに関しても会社が持っている事業の一部を切り離して別の会社へ移転させるという部分は2つとも同じではありますが、切り離してしまう事業が既存会社、新設会社のどちらで行うのかで異なります。

合併とは

ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法の6つ目は、合併です。合併とは、2つ以上の法人格を1つの法人格に統合する手法です。

【合併の種類】

  1. 新設合併
  2. 吸収合併

1.新設合併

新設合併とは、会社を新しく設立して、消滅する会社の資産や負債などを新設された会社に移すことをいいます。

このような手続きを行うことにより、以前までの会社に関しては全てなくなり、新設会社のみが法人格として残ります。

2.吸収合併

吸収合併とは、消滅会社は廃業の手続きを行い、存続会社が消滅会社の資産・負債・権利など会社の全てを取り込むことをいいます。

吸収合併は、資本の大きい会社が小さい会社を吸収合併するケースがほとんどですが、逆の事例も時折みられます。

提携とは

ビジネスシーンでよく見るM&Aの代表的手法の7つ目は、提携です。提携とは、2つ以上の会社が事業を行うために互いに協力することをいいます。

【提携の種類】

  1. 資本提携
  2. 業務提携

1.資本提携

資本提携とは、自社以外の会社から資本を受けたり、提携する会社に資本を投入したりすることをいいます。

資本提携は、会社同士が資本を投入する手法であるため、より強固な関係性を持つことができます。

2.業務提携

業務提携とは、お互いの会社がノウハウや資金・技術・人材を出し合い効率的な事業運営を行うことです。資本の移動は伴わないものの、お互いが共同して事業・業務を実施します。

業務提携により、お互い共同で事業を行っていくだけではなく、新しい技術の開発や販売力の強化などが可能になります。

【関連】会社買収の方法・手法まとめ!注意点やリスクに関しても解説!

3. ビジネスシーンでよく見るM&Aの各手法のメリット

ビジネスシーンでよくみられるM&Aの各手法について理解できたところで、次は、各手法にはどのようなメリットがあるのかをみていきましょう。

株式譲渡のメリット

株式譲渡のメリットは、手続きが比較的簡単に行えるため、迅速に実施できることです。

売り手は、株式譲渡により経営者は売却益を得ることができるだけでなく、従業員の雇用を維持することが可能になります。

また、株式譲渡を行う買い手先によっては、自社のみでは難しかった成長を見込むこともできます。

一方の買い手は、株式譲渡によって他社の有する事業やノウハウ、人材などを効率よく獲得することができるので、迅速な経営や事業拡大を図ることが可能です。

事業譲渡のメリット

事業譲渡のメリットは、譲渡対象となるものを選択できることです。一部の事業のみを譲渡することができるので、売り手は自社に必要な事業・従業員・資産などを残すことができます。

株式譲渡と同様に売却益が得られますが、株式譲渡とは異なり事業譲渡では会社に売却益が入ります。

譲渡対象は選択できますが、なにを譲渡するのかは買い手企業と話し合って決定するため、必ずしも自社の希望通りになるわけではありません。

買い手は、不要な事業や負債を引き継がなくて済むというメリットがあります。株式譲渡であれば包括承継なので従業員や契約もそのまま引き継がれますが、事業譲渡の場合は個々に手続きを行う必要があるため手間と時間がかかるのはデメリットといえるでしょう。

株式交換のメリット

株式交換は、対価に新株発行をすればよいため、買い手にとっては買収資金を用意しなくて済むメリットがあります。

また、買収する企業の株主が2/3以上賛成すれば完全子会社することも可能であり、少数株主を強制排除できるというメリットもあります。

株式交換を実施した後も売り手側は別の法人として存続するため、経営統合を急がなくてもよいので、時間をかけて方針を検討することも可能です。

株式移転のメリット

株式移転のメリットとしては、買収する時に株式を交付すれば良いため、買収資金を用意する必要性がありません。

多額の資金を用意する必要がないため、今度の経営に関しても大きな影響を与えることはなく、組織の組み換えを行うことができます。

また、株式移転は会社の組織自体は変わらず、独立しているため、スムーズに統合することが可能になります。

会社分割のメリット

会社分割には新設分割と吸収分割の2つがあり、それぞれのメリットも異なります。

1.新設分割

新設分割のメリットは、資産・契約・組織・従業員など、事業に関連する全てを引き継ぐことができることです。

ここでいう資産は設備や施設だけではなく、資本準備金・資本剰余金なども含まれるので、新設合併を行えば引き継ぐことができます。

また、新会社が支払う対価にを充てることができるため、現金を用意する必要がない点も新設分割のメリットといえるでしょう。

2.吸収分割

吸収分割のメリットは、会社の全てではなく一部のみを分割して承継できることです。

新設分割と同じように、株式で対価を支払うことができるため、資金がなくても行うことができる点もメリットのひとつです。

合併のメリット

合併は、大きく分けて新設合併と吸収合併とに分かれます。ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

1.新設合併

新設合併のメリットは、同業種の企業同士が行えばさらなる事業拡大が可能になることです。

また、関連時士業の企業が新設合併を行えば、業務の効率や従業員の士気向上も見込むことができます。

2.吸収合併

吸収合併のメリットは、統合による効果を早い段階で実現することがが可能である点です。

吸収合併を行う際の対価は株式とすることもできるので、買い手は買収資金を調達せずとも行うことができます。

また、吸収合併を行う買い手は大手企業であることが多いため、売り手はブランド力や信用力を得られるというメリットもあります。

包括承継となるため、負債がある場合もそのまま引き継がれるため、債務処理の心配がなくなるのも売り手にとってはメリットといえるでしょう。

提携のメリット

提携には資本提携と業務提携の2つがあります。以下では、それぞれのメリットを解説します。

1.資本提携

資本提携のメリットとしては、中小企業において新しい経営資源を得られることが挙げられます。

さらに資本提携を行うことによって、お互いの関係性がより強固となるため、会社同士のシナジー効果が得やすくなるなどのメリットもあります。

2.業務提携

業務提携のメリットには、資金調達の必要がないということが挙げられます。さらに業務提携を行うことにより他社が持っているノウハウなどを有効活用することができるため、新規事業なども進めやすくなります。

【関連】M&Aのメリット・デメリットを徹底解説!【大企業/中小企業事例あり】

4. ビジネスで求められる有名M&A事例の知識

この章では、有名なM&A事例を日本国内と海外、それぞれ紹介します。ビジネスで求められる基礎知識として覚えておきましょう。

日本国内のM&A事例

まず日本国内のM&A事例について、以下3つの事例を紹介します。

  1. 村田製作所によるヴァイオス・メディカルの全株式取得
  2. 東芝クライアントソリューションからシャープへの株式譲渡
  3. メルカリとBuyee(バイイー)の業務提携

①村田製作所によるヴァイオス・メディカルの全株式取得

2017年村田製作所は、アメリカの医療機器会社ヴァイオス・メディカルの全株式を取得して完全子会社としました。

村田製作所が行っている電子部品業は市場の影響が受けやすいため、収益が安定している医療機器会社であるヴァイオス・メディカルの買収に踏み切りました。

②東芝クライアントソリューションからシャープへの株式譲渡

2018年6月、東芝は子会社である東芝クライアントソリューションの株式の80.1%をシャープに対して譲渡しました。

東芝は経営再建を進めるうえで不採算事業の切り離しも行っており、そのなかでパソコン事業も売却するという結論にいたっています。

③メルカリとBuyee(バイイー)の業務提携

2019年、フリマアプリ「メルカリ」は、越境ECサポートの代理購入サービスである「Buyee(バイイー)」との業務提携を発表しました。

Buyee(バイイー)は、東証一部に上場しているビーノス株式会社の子会社であるtenso株式会社が行っているサービスです。

この業務提携によって、Buyeeが翻訳・海外発送・問合せ対応などを行うことにより、メルカリの出品者は特別な対応をすることなく100か国以上の海外の顧客に商品を販売することが可能になります。

海外のM&A事例

次に海外のM&A事例として、以下3つの事例を紹介します。

  1. AT&TによるディレクTVの買収
  2. 中石化集団によるスペインRepsol社ブラジル部門の株式取得
  3. ウォルマートと西友(SEIYU)の資本提携

①AT&TによるディレクTVの買収

2014年、米国通信の大手であるAT&Tが、米国衛星放送の最大手であるディレクTVを約485億ドルで買収し、多くの米国や中南米の契約者を獲得しました。

AT&Tは有料放送事業の成長が滞っていましたが、携帯端末やタブレットなどの配信を更に強化する目的がありました。

②中石化集団によるスペインRepsol社ブラジル部門の株式取得

中国の国有企業である中国石油化工集団公司(略称:中石化集団)は、2010年、スペインのRepsol社のブラジル部門の株式を40%取得しました。取得金額は約71.9億ドルと公表されています。

中国企業は資金を豊富に持っている企業がエネルギー関連に多いため、近年では、エネルギー関連企業によるM&Aの頻度が多くなっています。

③ウォルマートと西友(SEIYU)の資本提携

続いての事例はアメリカ小売大手のウォルマートが日本の西友(SEIYU)との資本提携をした事例になります。

2002年にウォルマートは西友との資本提携を行いましたが、西友はその後に関しても業績不振から抜け出すことができず、2005年に子会社化した業績は変わらず伸びなかったため、2007年に完全子会社化となりました。

【関連】M&A成功事例25選!【2018年最新版】

5. まとめ

当記事では、ビジネスで求められるM&Aの基礎知識や代表手法について解説しました。M&Aにはさまざなな手法があり内容も複雑ですが、ビジネスのうえでは知識として持っておくと役立つ場面も多いです。

【ビジネスで求められるM&Aの代表手法】

  1. 株式譲渡
  2. 事業譲渡
  3. 株式交換
  4. 株式移転
  5. 会社分割(新設分割、吸収分割)
  6. 合併(新設合併、吸収合併)
  7. 提携(資本提携、業務提携)

実際にM&Aの実施を検討した場合は、目的によって最適な手法を選択する必要があります。さらに、M&Aを進めるうえでは専門知識も欠かせないため、専門家のサポートを受けて進めることをおすすめします。

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