EC(通販)業界の事業承継事情まるわかり!承継先の選び方や流れの違いを解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

EC(通販)業界の事業承継について調べている方は少なくありません。現在、EC(通販)会社の経営者は、リタイアの時期を迎えている人が多いです。今回は承継先の選び方や、承継先による違いを解説します。後継者に適した人物へ事業承継し会社をより成長させましょう。

目次

  1. EC(通販)業界から事業承継を考える経営者が出てくる時代へ
  2. EC(通販)会社のベストな事業承継の時期
  3. EC(通販)業界で事業承継するときの3つの承継先
  4. EC(通販)事業の事業承継の事例
  5. EC(通販)会社が事業承継する承継先を決めるポイント
  6. EC(通販)会社の事業承継で承継先による流れの違い
  7. EC(通販)会社の事業承継で気をつけるべきこと
  8. EC(通販)会社の事業承継は必ず専門家に相談しよう
  9. まとめ
    • ネット通販・EC会社のM&A・事業承継

    1. EC(通販)業界から事業承継を考える経営者が出てくる時代へ

    EC(通販)業界から事業承継を考える経営者はこれからたくさん出てくると予測されます。その理由はEC(通販)業界の歴史を見ることでわかるでしょう。

    日本でEC(通販)業界が活発化したのは、1997年の楽天市場がきっかけです。続いて2000年にAmazonが国内で書籍の販売、2001年にECモール事業を開始しました。

    その後、2000年代前半には多くの企業がEC(通販)事業に参入し、起業する人も増えてきたのです。

    この頃に20代〜30代で起業した人が今や40代〜50代となっています。「そろそろリタイアしたい」と考える経営者も多くなってきているでしょう。

    このように、EC(通販)業界の歴史を見ると、まさに今事業承継をしようとしている経営者が増えているタイミングといえます。令和という新しい時代に突入したことも後押しとなっているといえるでしょう。

    2. EC(通販)会社のベストな事業承継の時期

    EC(通販)会社のベストな事業承継の時期が気になるところですが、ベストな時期は、経営者の年齢が40歳〜49歳のタイミングです。

    中小企業庁の調べによると、「事業承継のタイミングがちょうど良い時期だった」と回答する割合が最も高かった年齢層は、40歳〜49歳でした。

    一方、実際に事業承継を行った年齢を見てみると、50.9歳です。しかし、「もっと早い時期の方が良かった」と答えている人が多くいます。

    これらのことから、事業承継のベストな時期は、経営者の年齢が40歳〜49歳といえるでしょう。さらに、事業承継はベストなタイミングで行われていないこともわかります。

    EC(通販)業界は、スマホの普及によってさらに市場が伸び続けていて、毎年成長している業界です。経済産業省の電子商取引に関する市場調査の結果(2020年7月)によると、2019年における日本国内のBtoC-EC市場規模は19.4兆円でした。

    そのため、「あともう少し頑張ろう」と経営者も思うかもしれません。しかし、少し早いかもしれないと思っていても、後悔しないように事業承継の準備を始めることをおすすめします。

    3. EC(通販)業界で事業承継するときの3つの承継先

    事業承継をするにあたって、一番大切なことは承継先を選ぶことです。承継先とは自分の後継者となる人のことをいいます。

    「まだ事業承継は先だ」と思っていても、いつかはリタイアする日を迎えます。そのときになって初めて承継先を探し出すと手遅れになるかもしれません。

    事前に事業承継先の候補を確認し、下準備を始めていきましょう。EC(通販)業界で事業承継するときには、以下の3つの承継先が候補として挙げられます。

    1. 親族
    2. 従業員
    3. M&A

    それぞれにメリット・デメリットがあるので、特徴を確認しておきましょう。

    ①親族

    1番に考えられるのは、親族への事業承継です。たとえば、息子・娘・配偶者・甥・姪などが挙げられます。

    昔と比べると親族に事業承継するケースは少なくなっていますが、EC(通販)業界はまだまだこれからも伸びる業界です。そのため、引き継ぎたいと名乗り出る親族が出てくる可能性は高いでしょう。

    親族であれば、一般的に社内や社外の関係者から受け入れられやすく、引き継ぎもしやすい相手です。よく知っている間柄だからこそ、経営者としての後継者教育もやりやすいと感じるでしょう。

    実際、引き継ぎ・教育に長期の準備期間を設けることができます。

    親族の中に後継者としてふさわしい人物がいるのであれば、早めに社内に呼び後継者としての自覚を持ってもらいましょう

    一方で、親族内であっても経営者としての資質や意欲がなければ後継者に向いているとはいえません。また、相続人が複数いる場合、1人にだけ会社の資産をすべて渡すと揉めごとの原因になる恐れもあります。

    親族へ事業承継したい場合は、以下の条件を揃えておくことが必要です。

    • 経営者としての資質や意欲のある後継者にふさわしい人物がいる
    • 他の親族と話し合いをして、後継者の選出に納得してもらう

    これらの条件が揃っていなければ、事業承継後会社は傾き、親族内の揉めごとに発展してしまうこともあります。事前に調整をしておきましょう。

    ②従業員

    従業員へ事業承継するのも1つの手段です。経営者と一緒に会社を支えてきた人物であれば、親族や社内社外の関係者からも受け入れられるでしょう。

    特に長期間経営者と一緒に働いてきた従業員へ引き継げば、事業承継後も大きく社風や経営の方向性が変わることもありません。経営の一体性を保ちやすく、業務の引き継ぎが少なく済みます。

    一方で、従業員に事業譲渡をするための資金力がない可能性が高いです。

    このとき、親族であれば無償で株式を譲り渡すことも考えられるでしょう。しかし、従業員であれば無償で渡すのは惜しいと考える経営者も少なくありません。

    会社に対する役員借入金や個人保証をどのように引き継ぐべきかも悩みどころです。このように、身内以外だからこそ解決することが難しい問題も挙がってきます。

    また、慕われていない従業員を後継者に選んでしまうと、他の従業員から反感を買う恐れもあるでしょう。もちろん引き継ぎ期間中に経営者としての器を育てていくことになりますが、人選は大切です。

    従業員へ事業承継したい場合は、以下のポイントを押さえることでスムーズな事業承継ができるでしょう。

    • 事業承継融資などによって後継者の資金力を補う
    • 役員借入金は事前になくしておく
    • 個人保証の引き継ぎをどのようにするか話し合う
    • 社内外の信頼があり誰もが認める後継者を選ぶ

    従業員に事業承継するのであれば、これらのポイントを押さえることが大切です。後継者を任命するまでに対応策を考えておきましょう。

    また、社外からめぼしい人を見つけて後継者とする方法もあります。外部から呼んでくる場合も、一度取締役などに就任させ、数年仕事を一緒にしながら引き継ぎを行い、実際に事業承継をするとスムーズです。

    しかし、大企業であれば外部から呼んでくることも可能ですが、知名度の低い中小企業だと現実的ではありません。そのため、身内や従業員にふさわしい人がいない場合、M&Aを検討することが一般的です。

    ③M&A

    身内や従業員の中に、後継者にふさわしい人物がいないのであればM&Aを活用して第三者へ事業承継することも検討しましょう。

    M&Aとは、会社や事業を第三者へ売ることです。売却することによって、対価を受け取ることができます。

    M&Aを活用すれば、身内・従業員にとどまらず幅広い選択肢の中から後継者を選ぶことが可能です。

    M&Aと聞くと大企業がやっているものというイメージがあるかもしれません。しかし、近年では廃業をしたくない中小企業の経営者が後継者に悩んだ末、M&Aを実施するケースが増えているのです。

    EC(通販)業界において、売り手企業の需要は高いです。

    なぜなら、業界内では人手不足の問題があり同業企業を買収したいという需要があるからで、さらに業界外からも「通販サービスを始めたい」といった需要もあるからです。

    このような理由から、EC(通販)会社であれば「買い手企業がみつからない」という状況にはなりづらいでしょう。

    以上が、EC(通販)業界で事業承継するときの3つの承継先でした。

    まずは、親族、従業員の中からふさわしい人物がいないか考えてみましょう。もし、いなければM&Aを検討するのも手です。

    次の章でそれぞれの事業承継先の事例を確認し、さらにEC(通販)会社の事業承継のイメージを膨らませていきましょう。

    • ネット通販・EC会社のM&A・事業承継

    4. EC(通販)事業の事業承継の事例

    EC(通販)事業の事業承継の事例を、承継先ごとに確認していきましょう。

    1. M&Aによる事業承継
    2. 従業員へ引き継がせる事業承継
    3. 子どもへ引き継がせる事業承継

    それぞれの事例を参考にし、承継先によって気をつけるべきことを確認しましょう。

    ①M&Aによる事業承継

    ロコンド

    ロコンド

    出典:https://www.locondo.jp/

    2020年5月に、ロコンドは、Fashionwalkerを全株式取得により子会社化しています。

    ワールド傘下のFashionwalkerは、ECモール事業と他社通販サイトのEC受託事業を行っている会社です。ワールドは、EC受託事業だけはグループ会社に移しています。

    ロコンドは自社通販サイトとの相乗効果を図り、アパレル領域のEC事業強化を見込んで子会社化を行っています。

    そしてワールドは競争激化のECモール事業を切り離して、EC事業と外部へ向けたEC受託事業を拡大し、収益を上げることに集中していきます。

    ②従業員へ引き継がせる事業承継

    ジュピターショップチャンネル

    ジュピターショップチャンネル

    出典:https://www.shopchannel.co.jp/

    2017年4月、国内テレビ通販業界大手のジュピターショップチャンネルは従業員である田中惠次さんへ事業承継しました。

    田中惠次さんは、有名な実業家です。2010年よりジュピターショップチャンネルの取締役に就任、2017年から取締役社長となっています。

    ジュピターショップチャンネルが元々田中恵次さんを後継者として迎え入れていたのかは定かではありません。しかし、取締役として10年間就任したことで会社の経営課題や改善すべきことが見えてきたのでしょう。

    田中惠次さんの就任以降も業績は堅調です。入念な引き継ぎ期間があったからこそといえるでしょう。しかし、その後、2019年に取締役社長は田中惠次さんから新森健之さんに変わっており、社長交代によりさらに企業を成長させようとしています。

    ③子どもへ引き継がせる事業承継

    ジャパネットたかた

    ジャパネットたかた

    出典:https://www.japanet.co.jp/shopping/

    2015年1月、ジャパネットたかたは高田明さんから長男の旭人さんに事業承継しました。

    それまではテレビ通販で馴染みのあった高田明さんでしたが、事業承継後はあっさりと経営から身をひいたのです。これは、息子の旭人さんが新しい会社のリーダーであることをはっきりと社内外に示すためでした。

    一見世襲のように見える事業承継ですが、長い年月をかけて事業の引き継ぎを行っています。というのも、明さんと旭人さんは10年もの間、経営について意見を交わしてきました。

    何度もぶつかり合い、決してスムーズな事業承継ではなかったようです。それでも意見交換を重ね、「息子を信頼できる」と思えたからこそ自らは経営から身を引き、旭人さんを社長としたのでしょう。

    ジャパネットたかた=高田明さんというほど、カリスマ性のある経営者から事業を引き継ぐことは大変だったことが予想されます。

    しかし、高田明さんがいなくても利益を出し続けるため、たくさんの準備をし、事業承継をするに至ったのでしょう。事業承継後は2年連続で過去最高の売り上げを記録しています。

    このように、身内で気の知れた相手への事業承継でも準備期間は十分に必要です。少なくとも5年〜10年は一緒に仕事をし、経営について教育していく必要があるでしょう。

    以上が、EC(通販)の事業承継の事例でした。それぞれ承継先ごとに事例を紹介しましたが、どの承継先も準備が大切です。

    もし、事業承継先に悩んでいるのであれば、次の章で紹介する承継相手の決め方を参考にしてください。

    5. EC(通販)会社が事業承継する承継先を決めるポイント

    事業承継において、一番大切なことは後継者選びです。承継先を決めるときは、以下の3つのチェックポイントを確認しましょう。

    1. 条件に合う後継者候補がいるか
    2. リタイア時に資金を手に入れたいか
    3. 負債や個人保証から解放されたいか

    ①条件に合う後継者候補がいるか

    経営者にふさわしい後継者候補が身の回りにいるのであれば、決めてしまって問題ないでしょう。

    ただし、後継者が以下のような条件にあてはまるかは、必ずチェックしておくべきです。

    • 経営者としての素質がある
    • 経営に対する意欲がある

    経営者としての素質がある

    まずは、経営者としての素質があるか見抜きましょう。EC(通販)会社に必要な知識やスキルは教育期間や引き継ぎ期間で何とかなります。

    それよりも以下のような素質が根本にあるのかをチェックしましょう

    • 誠実さがある
    • 責任感がある
    • 気配りができる
    • 周りを納得させられる
    • 支持や共感を得られる

    経営に対する意欲がある

    さらに経営に対する意欲がなければ、事業は継続していきません。経営に対する意欲は以下のようなことをチェックしましょう。

    • 事業・経営に対して熱意がある
    • 業界動向を知ろうとする
    • 我慢強さや粘り強さがある
    • 向上心がある
    • ポジティブに考えられる

    このような様子が見られたら、意欲があると判断して良いでしょう。

    もし、後継者にふさわしい人物がいなければ無理に身内や従業員の中から後継者を選ぶ必要はありません。無理にお願いをしても会社経営が悪化し、従業員や取引先へ迷惑をかけることになるでしょう。

    任せられる人がいない場合は、M&Aを活用することを視野に入れましょう。M&Aならすでに経営者として成功している人に、会社を託すことができます。

    経営者としての経験のない親族や従業員よりも、事業承継後に経営の問題が出る心配は少ないです。

    ②リタイア時に資金を手に入れたいか

    続いてのチェックポイントは、自身のリタイア時に資金を手に入れたいかという点です。

    もし、まとまった資金を手にしたいのであれば、M&Aを活用した事業承継をおすすめします。なぜなら、M&Aなら会社を売却する代わりに対価を受け取ることができるからです。

    EC(通販)会社をM&Aするときの相場は、営業利益の2〜3年分+会社の時価となっています。もし、年間2,000万円の営業利益があるのであれば、4,000万円〜6,000万円+会社の時価と予測できるでしょう。

    一方、身内や従業員へ事業承継する場合、資金不足によって無償で承継させたり、株価を下げて承継させたりすることが多いです。

    自分が創設・事業承継したときの株価よりも低くなってしまえば、株取得のために費用を支払ってもらってもマイナスになってしまいます。

    金銭的に余裕があれば、自分が負担してでも身内や従業員に引き継ぎをする方がスムーズで良いかもしれません。しかし、ある程度まとまった資金を手にしたいのであれば、M&Aによる事業承継も検討しましょう。

    ③負債や個人保証から解放されたいか

    事業承継によって負債や個人保証から解放されたいか、という点も改めて確認してください。もちろん、解放されたいという人が多いでしょう。

    しかし、親族や従業員へ事業承継する場合、負債や個人保証から逃れられない可能性があります。基本的には承継できますが、本人や親族にとって大きな負担・不安要因となってしまいます。

    特にトラブルになりやすいのは、経営者が会社に対して貸し付けている役員借入金です。役員借入金は、会社の経営が不安定なときに投入する経営者のポケットマネーのことをいいます。

    役員借入金があると、事業承継時に会社から経営者に対して返金を行わなければなりません。このように、負債や個人保証を承継するとなると、親族や従業員の個人では抱えきれないこともあります。

    一方、M&Aでは負債や個人保証を引き継いでもらうことが可能です。「株式譲渡」という会社を丸ごと譲渡する手法で事業承継を実行すれば、負債や個人保証は確実に引き継がれます

    負債や個人保証が多く、引き継いでもらえない可能性がある場合は、M&Aを活用することで解放されるのでおすすめです。

    以上が、EC(通販)会社が事業承継する承継先の決め方でした。3つのチェックポイントを確認し、自社に最適な承継先を検討しましょう。

    しかし、承継先の違いによって、どのように事業承継の流れが変わるのかわからない方のために、次の章で、その違いを確認していきましょう。

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    6. EC(通販)会社の事業承継で承継先による流れの違い

    EC(通販)会社が事業承継するとき、承継先によって流れは少し変わります。大筋の流れは同じなので、どのような違いがあるのか事前に確認しておきましょう。

    基本的には、承継先が親族・従業者の場合とM&Aによる事業承継の場合に分けられます。違いは以下の6つです。

    1. 後継者の選び方
    2. 事業承継計画書作成orノンネームシート作成
    3. 条件交渉の有無
    4. 教育期間or統合作業期間
    5. 譲渡対価の考え方
    6. 発生する税金の種類

    どのような違いがあるのか、事前に確認しておきましょう。

    ①後継者の選び方

    まず、後継者の選び方の違いです。

    承継先が親族・従業者なら、自分の身の回りから探すことになります。もちろん、アプローチも自ら行わなければなりません。

    事業承継を実行したいタイミングから逆算して5年〜10年程前には声をかけておきましょう。良い返事を聞けなかった場合は、なぜ後継者となって欲しいのかを伝え、口説いていきます。

    一方、M&Aによる事業承継であれば、買い手企業を探すことになります。自社で見つけられれば良いですが、M&A仲介会社に依頼することが一般的です。

    M&A仲介会社は、会社売却や事業売却のサポートを行い、その一環として承継先である買い手企業を選定します。

    通常、3社程度の候補企業を出してくれるので、その中から気になる企業にアプローチをしましょう。アプローチもM&A仲介会社が行ってくれます。

    1社目が無理だったとしても、買い手企業が見つかるまで粘り強く買い手企業を探してくれるので安心して任せておきましょう。

    M&Aによる事業承継をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には事業承継に精通したM&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートいたします。

    無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

    【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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    ②事業承継計画書作成orノンネームシート作成

    続いての違いは、作成する書類の違いです。

    親族や従業員の中から後継者を選定したら、事業承継計画書を策定していきます。事業承継計画書には以下のような内容を記載していきましょう。

    • 事業承継をする本人の特定
    • 事業承継の実行予定日
    • 事業承継までの引き継ぎ・教育スケジュール
    • 現在の会社の現状や課題
    • 事業承継後の売り上げなどの目標
    • 目標を達成するための施策

    これらのことをまとめ、事業承継を実行するための手引きを作成していきます。

    事業承継計画書は、事業承継する現経営者と後継者の両者で作っていくことをおすすめします。なぜなら、事業承継は二人の思いが同じでなければ成功しないからです。

    事業承継のプランを考え、現実的な事業計画を立てていきましょう。

    一方、M&Aを活用した事業承継を行うなら、ノンネームシートを作成する必要があります。ノンネームシートとは、名前を伏せた企業概要書のことです。

    会社情報や現在の会社の売り上げ状況、会社の資産・負債などを記入していきます。具体的には以下のような内容を記載しましょう。

    • 自己資本
    • 純資産・純負債の金額
    • 事業内容
    • ビジネスモデル
    • 業界の動向や将来性
    • キャッシュフロー
    • 経営者や取締役員の資質(経歴や実績)
    • 今後の設備投資計画
    • 所有する特許や独占権、許認可の内容

    これらの内容を名前は伏せて記載していきます。ノンネームシートを見て買い手企業は買収をするかしないかの方向性を決定するのです。

    買い手企業が買収に前向きであれば、実際に経営者同士が顔を合わせもっと深い話し合いをしていくことになります。

    M&Aを活用する事業承継では、事業承継計画書の代わりに自社をアピールするためのノンネームシートを作成するのです。

    記載する内容は似ている部分もありますが、まだ承継先が決まっていない状態なので具体的な引き継ぎプランなどは作成できません

    このように、作成する書類に違いがあることを理解しておきましょう。

    ③条件交渉の有無

    続いては、条件交渉の有無です。

    承継先が親族や従業員のとき、譲渡するための条件交渉の必要はありません

    もちろん、事業承継を実行するタイミングや資金の軽減をどのように行うかといった話をする必要はあります。しかし、親族や従業員であれば日頃からコミュニケーションが取りやすい環境にいるため、お互いの意見が大きく食い違うことは比較的少ないでしょう。

    一方、M&Aによる事業承継では、条件交渉は必須となります。なぜなら、買い手企業とは利益相反の関係だからです。売り手企業はできるだけ高い価格で譲渡したいと考え、買い手企業はできるだけ低い価格で買収したいと考えます。

    そのため、M&Aでは交渉を入念に行わなければいけません。交渉をする際には不利な条件で契約してしまわないように、M&A仲介会社などの専門家に同席してもらうことも必要です。

    このように、交渉の有無に違いがあります。

    ④教育期間or統合作業期間

    続いての違いは引き継ぎ期間です。

    親族や従業員が承継先の場合、引き継ぎ期間は教育期間と呼ばれます。親族や従業員が経営者となるのは初めてであることが多いため、長期間となりやすいです。

    最低でも5年〜10年は見ておくと良いでしょう。教育期間は事業承継する前に設けておいて、後継者が一人前になったタイミングでするようにしてください。

    一方、M&Aによる事業承継では、引き継ぎ期間を統合作業期間と呼びます。新しい経営者への引き継ぎはもちろん、社内システムや社風の統合も行っていく期間です。

    M&Aを実施すると、事業承継後は買い手企業の社内システムや人事評価システムなどに変わっていくことがあります。これらの変化に従業員が慣れていかなければ、今までどおりに事業を運営できません。

    そのため、統合期間が設けられるのです。統合期間は2年程度となっており、この期間は経営者も買い手企業の役員や従業員として勤めるよう指示されることがあります。

    このように、引き継ぎ期間に違いがあるので覚えておきましょう。

    ⑤譲渡対価の考え方

    続いての違いは、譲渡対価の考え方です。

    親族や従業員へ事業承継をする場合、譲渡対価は譲った株の額となります。

    しかし、親族や従業員は個人であるため資金力に限界があり、贈与という形で事業承継することも少なくないです。この場合、譲渡対価の支払いはありません。

    もちろん、50%を支払ってもらい、残りの50%を譲渡することも可能です。

    一方、M&Aを活用した事業承継なら、譲渡対価は単純に譲渡する株の額とはなりません。将来性を見越した付加価値も企業価値に換算され、譲渡対価が算出されるのです。

    そのため、多額の譲渡対価を受け取ることのできる可能性は高いでしょう。このように、譲渡対価の考え方にも違いがあります。

    ⑥発生する税金の種類

    最後の違いは、発生する税金の種類です。

    親戚や従業員へ承継した場合、贈与税や相続税が発生する可能性があります。納税は、事業を譲受した後継者がしなければなりません。

    贈与した額が大きければその分支払う税金の額も大きくなります。しかし、事業承継税制における納税猶予および免除制度をうまく利用してできるだけ節税を行いましょう。

    一方、M&Aを活用して事業承継した場合は、所得税・住民税が発生します。納税は、現在の経営者がしなければなりません。

    所得税・住民税は、M&Aをしたことで受け取った譲渡価格から経費や会社の時価を差し引いた譲渡所得に課税されます。

    所得税・住民税も、節税できる場合がありますので対策を行いましょう。

    このように、どの承継先であっても、事業承継をするときには税金が発生します。計画的に承継させていくことで節税につながることもあるので、早めに税理士やM&A仲介会社に相談しておくと安心です。

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    7. EC(通販)会社の事業承継で気をつけるべきこと

    ここまでは事業承継先について確認してきました。ここからはどの承継先にもかかわらず、EC(通販)会社ならではの注意点を確認しておきましょう。

    EC(通販)会社を事業承継するときには、以下の2つの注意点に気をつけなければなりません。

    1. 特定商取引に関する法律に従うこと
    2. 商取引で必要な許可の要件を満たすこと

    順番に確認しましょう。

    ①特定商取引に関する法律に従うこと

    EC(通販)事業を営むとき、特定商取引に関する法律に従わなければなりません。特定商取引とは、ECサイトに以下の内容を消費者に提示しなければならない法律です。

    • 販売者情報(店舗名・販売業者名・代表者名・責任者名・住所・電話番号・メールアドレス)
    • 商品の価格
    • 送料
    • 対価の支払時期や方法
    • 引き渡しや提供の時期
    • 売買契約の撤回や解除に関する情報

    事業承継によって確実に販売者情報が変わります。事業承継をした後は必ずECサイト内の特定商取引に基づく表示の変更を行いましょう。

    ②商取引で必要な許可の要件を満たすこと

    事業承継しても、EC(通販)事業を運営していくうえで必要な商取引許可の要件を満たすように気をつけましょう。

    たとえば、以下のような商品をECサイトで取り扱う場合には商取引許可が必要です。

    • 食品
    • 酒類
    • 輸入品
    • 医療器具や薬品
    • 中古品

    それぞれの商取引許可には細かい要件があります。資格を持っていなければならなかったり、管理の人数などが定められたりしているのです。

    現経営者が有資格者であるなど、事業承継で会社からいなくなると要件を満たさなくなることはないか確認しておきましょう。

    ちなみに、M&Aを実施するときに事業譲渡という手法を活用すると商取引許可を買い手企業に引き継げないので注意が必要です。

    もちろん、すでに同じ商取引許可を持っていれば問題ありません。引き継いでもらいたい場合は、株式譲渡という手法を選ぶようにしましょう。

    以上が、EC(通販)会社を事業承継するときの注意点でした。事前に確認し、法に触れないよう注意しましょう。

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    8. EC(通販)会社の事業承継は必ず専門家に相談しよう

    EC(通販)会社の事業承継は、必ず専門家に相談しましょう。なぜなら、事業承継において気をつけなければならないことが多いからです。

    EC(通販)事業を実行するには法律や許可の要件を満たす必要があります。また、必ず税金が発生するので節税対策・確定申告もしなければなりません。

    EC(通販)会社の事業承継をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。EC(通販)業界に精通したM&Aアドバイザーが担当につき、親身になってフルサポートいたします。

    また、M&Aの料金体系は完全成功報酬制(譲渡企業様のみ)です。着手金は譲渡企業様・譲受企業様ともに無料となっておりますので、安心してご相談いただけます。

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    9. まとめ

    現在、EC(通販)会社の経営者は、リタイアの時期を迎えています。事業承継をするためには後継者選びが重要です。

    早くから後継者を選出しておき、自分のリタイアに備えましょう。もし、身の回りに後継者がいないのであれば、M&Aを活用することも検討すべきでしょう。

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