2020年10月01日更新
M&Aの買い手が持つべき心構えと狙い!失敗しないために詳しく解説

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
M&Aによる買収は、費用の問題などリスクがあるものの、成功すれば事業を大きく発展させることができます。本記事では、M&Aの買い手が持つべき心構えと狙い、買い手としてM&Aを行うメリットとデメリット、失敗しないポイントを解説していきます。
目次
1. M&Aの買い手が持つべき心構えとは
M&Aで会社を買収して事業を拡大することは、経営戦略の一つとして非常に有効な手段です。
しかし、買い手としては買収費用の負担など大きなリスクを背負うため、しっかりとした心構えを持って臨む必要があります。
この章では、M&Aの買い手が持つべき7つの心構えについて、くわしく解説していきます。
【M&Aの買い手が持つべき心構えとは】
- 買収先企業の選定
- 買収先企業の検討
- 機密情報を漏らさない
- M&A戦略の策定
- 買収先の従業員・取引先・役員のことを考える
- M&Aのタイミングを逃さない
- DDや統合プロセスの実施を忘れない
1.買収先企業の選定
買い手としてM&Aを実行するプロセスで重要なものの一つが、買収先候補の選定です。
問題のある企業を買収しないように注意するのはもちろんですが、たとえ優秀な企業を買収しても、自社の買収目的に合致しない企業であれば、結果的にM&Aが失敗に終わってしまいます。
買収対象の企業
買い手が買収すべき企業というのは、買い手の事業内容や事業規模、そしてM&Aの目的によって異なってきます。
もちろん、一般論として赤字企業は避けるべきなどの基準はありますが、高いシナジー効果が見込めるなら赤字企業の買収で業績を伸ばせることもあり、このあたりは判断の難しいところでしょう。
既存事業のシェア拡大が目的なのか、それとも新規事業への参入を目指しているのか、M&Aの目的をはっきりさせることで、買収すべき対象企業が絞られることになります。
買収非対象の企業
倒産寸前の債務超過であるとか、重大な偶発債務や簿外債務があるなど、経営状態に根本的な問題がある企業はもちろん買収非対象となりますが、難しいのは問題がない買収候補からどのように一社に絞っていくかです。
条件を絞りすぎるとほとんどの企業が買収非対象となり、いつまでたっても買収先が決まらないという事態になり、条件が緩すぎると満足いかない企業を買収してしまう恐れもあります。
自社がM&Aを行う理由をもとに、買収するべきでない企業の適切な基準を設けておくことが重要になります。
2.買収先企業の検討
買収先企業の検討は、M&A仲介会社が選んだ買収先候補のなかから行っていくことになります。
M&A仲介会社はまず買い手企業と面談して買収企業の条件を聞き出し、それに合う買収先候補を有しているネットワークから洗い出します。
大まかな候補の洗い出し作業はM&A仲介会社が行うことになるので、買い手は仲介会社にしっかりと希望条件を伝えておくことが重要です。
3.機密情報を漏らさない
M&Aというと、どうしても身売りというマイナスイメージがあり、不安に思った従業員や取引先、顧客が離れていく可能性があります。
そのため、M&Aで会社を売却する売り手にとって、自社がM&Aを検討しているという情報は外部に漏らしたくないものです。
買い手としてM&Aを行う際は、売り手側の情報を漏らさないようにすることが重要になります。売り手との交渉の際は秘密保持契約を締結し、情報漏えい対策を万全にしておきましょう。
4.M&A戦略の策定
買収したい企業が決まったら、その企業の買収に適したM&A戦略の策定を行います。
M&Aの手法はいろいろありますが、中堅から中小企業の買収の場合は、株式譲渡か事業譲渡が利用されるのが一般的です。
株式譲渡は買収したい企業の株式を取得して経営権を得る手法で、事業譲渡は買収したい企業の事業資産を買い取る手法です。
株式譲渡は手続きが簡単なのがメリットであり、事業譲渡は買収したい企業の一部分だけを獲得できるのが特徴です。
5.買収先の従業員・取引先・役員のことを考える
M&Aで自分の会社が買収されるというのは、働いている従業員や役員、取引先にとって非常に大きなインパクトを与えます。
もし、M&Aに不安を感じた従業員が退職したり取引先が撤退してしまうと、買収で得られるはずだった貴重な経営資源を失うことにもなりかねません。
買い手としてM&Aを行う際は、従業員や役員、取引先に不安を与えないように配慮することが重要です。
6.M&Aのタイミングを逃さない
企業の業績やその業界の動向は日々変化するので、それにともなって買収価格が変わる可能性があり、その企業を買収するメリットが変化する可能性もあります。
そのため、買い手としてM&Aを行うには、M&Aのタイミングを逃さないという意識が重要になってきます。
7.DDや統合プロセスの実施を忘れない
M&Aは、今まで面識のなかった企業を買収し、子会社として共に事業を手がけていくことになるので、契約した後に予想外のリスクが発覚しないよう、買収する企業をDD(デューデリジェンス)でしっかり調査しておくことが重要です。
また、買収した後の経営をスムーズに進めるための、統合プロセスも非常に重要になります。
2. M&Aの買い手が持つべき狙い
M&Aの買い手が持つべき狙いは、買収する事業が新規事業・関連事業・既存事業のどれかによって変わってきます。
新規事業を買収する買い手の狙いはリスク分散、関連事業を買収する買い手の狙いはシナジー効果の獲得、既存事業を買収する買い手の狙いはシェア拡大です。
まず、自分が買い手としてどのような効果をM&Aに求めているのか明確にして、新規事業・関連事業・既存事業のうちどれを買収すべきかを考えましょう。
【M&Aの買い手が持つべき狙い】
買収する事業 | 買い手の狙い |
新規事業 | リスク分散 |
関連事業 | シナジー効果 |
既存事業 | シェア拡大 |
M&Aにより新規事業を買う場合の狙い
M&Aで新規事業を買収する買い手の主な狙いは、いろいろな事業を手がけることで、もし一つの事業がうまくいかなくなっても、会社全体としてはそれほどダメージにならないようにリスクを分散することです。
もし、ある会社が一つの事業しか手がけていないとすると、その事業がうまくいかなくなると倒産や廃業に直結します。
複数の事業を手がければリスクが分散しますが、もし似たような事業ばかりなら、その業界が不景気になった時に全ての事業が同時に失敗するリスクもあります。
そこで、全く違う事業に手を伸ばしてリスクを分散しようとするわけですが、今まで手がけていなかった事業を一から立ち上げるのは大変です。
既存の会社をM&Aで買収することによって、効率的にリスク分散ができるようになります。
M&Aにより関連事業を買う場合
M&Aで買い手が関連事業を買う場合の主な狙いは、シナジー効果の獲得です。シナジー効果とはいわゆる相乗効果のことで、企業同士が協力して事業を行うことで、単体では成し得ない事業展開を目指すことです。
例えば、製品を開発・製造しているメーカーが買い手で、販売業者が売り手のM&Aなら、買い手は販路を手早く獲得することができます。
M&Aにより既存事業を買う場合
自社がすでに手がけている既存事業の会社を買収し、シェアの拡大を目指すというのも、M&Aの買い手の狙いの一つです。
自社で一から新しい店舗を出そうとすると、設備投資や人件費などさまざまな費用がかかります。
一方で、M&Aで既存の店舗を買収すれば、設備投資や人件費を抑えつつ、手早くシェア拡大することができます。
買収した店舗がリピーターの顧客や取引先を有している場合、ネットワークも獲得できるのがメリットです。
3. M&Aを実行する買い手のメリット・デメリット
買い手としてM&Aを実行することはメリットも多い反面、デメリットも存在しています。メリット・デメリットを把握したうえで慎重に判断していくことが、買い手としてM&Aを成功させるポイントです。
この章では、M&Aを実行する買い手のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット
まずこの節では、M&Aを実行する買い手のメリットについて解説します。M&Aを実行する買い手の主なメリットには以下の3つがあります。
【M&Aを実行する買い手のメリット】
- 事業への参入・事業の多角化・拡大・強化
- 人材・資産・ノウハウなどの獲得
- 取引先・顧客・シェアの獲得
1.事業への参入・事業の多角化・拡大・強化
新規事業への参入およびそれによる事業の多角化、事業規模の拡大や強化を目的に、買い手としてM&Aを行うのは非常にメリットが大きいものです。
なぜなら、もし自社で一から新規事業に参入したり、経営の多角化やシェア拡大を目指そうとすると、設備投資や人材の確保など、多大なコストと手間がかかるからです。
すでに設備や人材が揃っている会社をM&Aで買収することで、コストと時間をかけずに事業を発展させることができます。
2.人材・資産・ノウハウなどの獲得
優秀な人材や経営のノウハウといったいわゆる無形資産は、設備や不動産といった有形資産よりも獲得するのが困難なことがあります。
設備や不動産は資金さえあれば購入することができますが、人材やノウハウは長年かけて育て、こつこつと築き上げることでしか手に入れることはできません。
しかし、すでに人材やノウハウがある企業をM&Aで買収すれば、経営資源を手早く獲得することができます。
3.取引先・顧客・シェアの獲得
安定した取引先やリピーター顧客の獲得は、一朝一夕にできるものではありません。長年事業を続けて信頼を得てようやく獲得できるものです。
自社で一から事業を始めて、取引先や顧客を獲得するのは非常に時間がかかりますが、すでに取引先や顧客を持っている企業をM&Aで買収できれば、手早く経営資源を獲得することができます。
また、既存の事業をM&Aで買収することで、自社で一から立ち上げるのに比べて、スピード感をもってシェアを拡大することが可能となります。
デメリット
続いてこの節では、M&Aを実行する買い手のデメリットを解説します。M&Aを実行する買い手の主なデメリットには以下の3つがあります。
【M&Aを実行する買い手のデメリット】
- 想定したシナジー効果が得られない
- 経営統合プロセスの失敗
- M&Aにかかる費用の負担
1.想定したシナジー効果が得られない
M&Aで事業を買収したからといって、必ずしも想定したシナジー効果が得られるわけではありません。
シナジー効果というのは、自社の事業内容や業務形態が相手企業とかみ合わないと実現できないので、実際にやってみないと分からないという不確実性があります。
たとえ相手企業が優秀な経営資源を持っていても、自社との相乗効果を生み出さない可能性もあります。その一方で、赤字の企業を買収してうまくシナジー効果を獲得するケースもあります。
M&Aでうまくシナジー効果を獲得するには、買収する企業を見極める優れた眼力が求められるといえるでしょう。
2.経営統合プロセスの失敗
M&Aは、買収して最終契約を締結すればそれで終わりではなく、その後うまく業務を行っていけるかが重要になります。
業務内容も企業風土も違う2つの会社が協力して事業を行うわけですから、予期しないさまざまなトラブルが起こることは容易に想像がつきます。
このようなトラブルを最小限に抑えるために、業務システムや企業風土などをすり合わせていく作業を、経営統合プロセスといいます。
いくら優秀な企業をM&Aで買収できたとしても、経営統合プロセスがうまくいかないとM&Aは失敗に終わってしまいます。
3.M&Aにかかる費用の負担
M&Aは企業を買収する行為なので、買い手側は多大な費用が必要になります。会社を買収するのにかかる金額は、個人事業の小規模な店舗なら数百万円程度、中小企業で数千万円程度、中堅規模の会社なら数億円はかかります。
それ以外にも、M&AではM&A仲介会社への手数料や、買収する企業を調査するデューデリジェンス費用など、さまざまな費用がかかります。
M&Aの買い手としては、多大な費用を負担しても買収するメリットがあるかどうか、慎重に検討することが重要です。
4. M&Aを実行する買い手が失敗しないポイント
M&Aの成功率は一説によると20~30%ともいわれています。成功する事例よりも、失敗する事例のほうが多いという現状を踏まえたうえで、慎重に準備してM&Aを行うことが大切です。
M&Aを実行する買い手側として、注意しておきたいのは以下の3点です。これらのポイントを理解して、失敗する可能性を最小限に抑えるようにしましょう。
【M&Aを実行する買い手が失敗しないポイント】
- デューデリジェンスの徹底
- 統合プロセス(PMI)の実施
- M&Aの専門家に相談する
1.デューデリジェンスの徹底
デューデリジェンスとは、買い手側の企業が売り手側に対して、会社の詳細について調査を行うことです。
通常、デューデリジェンスは、買い手と売り手が基本的な合意を得て基本合意書を締結した後に行います。
基本合意を締結した時点では、買い手は売り手側企業の詳細について分かっていないので、最終契約を締結する前に、デューデリジェンスを実行しておく必要があります。
デューデリジェンスは、費用と手間がかかるのでおろそかにしてしまいがちですが、買い手にとってはM&Aを成功させるための重要なプロセスなので、費用と手間を惜しまずに徹底して行うことが大切です。
2.統合プロセス(PMI)の実施
M&Aでは今まで面識のなかった買い手と売り手が、親会社・子会社となり共に事業を手がけていくことになります。
それまで業務システムも企業風土も違っていた両社が、スムーズに事業を行うためには、統合プロセス(PMI)を実施することが必須です。
統合プロセスには、まず両社がスムーズに業務を実行できる社内体制の確立、両社の強みを生かした新しい経営方針の立案などがあり、期間は少なくとも半年程度は必要とされています。
この統合プロセス(PMI)をいかに実施していくかが、M&Aの成功を左右するといえるでしょう。
3.M&Aの専門家に相談する
買い手としてM&Aを実行するには、様々な知識や経験を必要とします。買い手企業の経営者が本業のかたわらで進めていくのは、非常に難しいのが実際のところです。
そこで、買い手としてM&Aを行う際は、M&A仲介会社などの専門家に相談することが一般的です。
専門家のサポートを受ければ手続きがスムーズに進み、本業への支障が最小限に抑えられるというメリットもあります。
M&A仲介会社以外の相談先としては、金融機関のM&A相談窓口や、事業引継ぎ支援センターなどの公的機関といった選択肢もあります。
5. M&Aを実行する買い手におすすめの仲介会社
買い手としてM&Aによる買収を検討中の方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。
M&Aの経験豊富な弁護士・アドバイザーの2名体制で、買収企業の選定から交渉、そしてクロージングまでフルサポートいたします。
M&A総合研究所では、独自AIを活用した高度なマッチングにより、全国の豊富な買収候補のなかから、高いシナジー効果が見込める企業を選定することができます。
料金は成約まで一切料金がかからない完全成功報酬制を採用しており、着手金や中間金は無料です。成約しなかったのに料金だけ取られるという心配がなく、コストを抑えてM&Aを行うことができます。
無料相談は随時受け付けていますので、買い手としてM&Aを検討している方は、お気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
M&Aは買い手としてはリスクもある取引ですが、成功すれば自社だけでは成し得なかった事業拡大を実現することができます。
買い手のメリットとデメリットを理解して、慎重にM&Aを行うことが成功のポイントだといえるでしょう。
【M&Aの買い手が持つべき心構えとは】
- 買収先企業の選定
- 買収先企業の検討
- 機密情報を漏らさない
- M&A戦略の策定
- 買収先の従業員・取引先・役員のことを考える
- M&Aのタイミングを逃さない
- DDや統合プロセスの実施を忘れない
【M&Aの買い手が持つべき狙い】
買収する事業 | 買い手の狙い |
新規事業 | リスク分散 |
関連事業 | シナジー効果 |
既存事業 | シェア拡大 |
【M&Aを実行する買い手のメリット】
- 事業への参入・事業の多角化・拡大・強化
- 人材・資産・ノウハウなどの獲得
- 取引先・顧客・シェアの獲得
【M&Aを実行する買い手のデメリット】
- 想定したシナジー効果が得られない
- 経営統合プロセスの失敗
- M&Aにかかる費用の負担
【M&Aを実行する買い手が失敗しないポイント】
- デューデリジェンスの徹底
- 統合プロセス(PMI)の実施
- M&Aの専門家に相談する
買い手としてM&Aをお考えの方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。
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無料相談を年中無休で受け付けていますので、買い手としてM&Aを検討中の方は、電話かメールで気軽にお問い合わせ下さい。
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