M&Aの買い手が持つべき心構えと狙い!M&Aのメリット・デメリット、失敗しないためのポイントも解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aによる買収は、費用の問題などリスクがあるものの、成功すれば事業を大きく発展させられます。本記事では、M&Aの買い手が持つべき心構えと狙い、買い手としてM&Aを行うメリットとデメリット、失敗しないポイントを解説します。

目次

  1. M&Aを実行する買い手のメリット・デメリット
  2. M&Aを実行する買い手のメリット・デメリット
  3. M&Aの手法別のメリット・デメリット
  4. M&Aの基本合意契約における買い手側のメリット・デメリット
  5. M&Aの買い手が持つべき心構えとは
  6. M&Aの買い手が持つべき狙い
  7. M&Aの買い手が持つべき視点
  8. M&Aを実行する買い手が失敗しないポイント
  9. M&Aを実行する買い手におすすめの仲介会社
  10. M&Aの買い手が持つべき心構えと狙いまとめ
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1. M&Aを実行する買い手のメリット・デメリット

買い手としてM&Aを実行することはメリットも多い反面、デメリットも存在しています。メリット・デメリットを把握したうえで慎重に判断していくことが、買い手としてM&Aを成功させるポイントです。

この章では、M&Aを実行する買い手のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

メリット

この節では、M&Aを実行する買い手のメリットを解説します。M&Aを実行する買い手の主なメリットには以下の3つがあります。

  • 事業への参入・事業の多角化・拡大・強化
  • 人材・資産・ノウハウなどの獲得
  • 取引先・顧客・シェアの獲得

事業への参入・事業の多角化・拡大・強化

新規事業への参入およびそれに伴う事業の多角化、事業規模の拡大や強化を目的に、買い手としてM&Aを行うのは非常にメリットが大きいです。

なぜなら、自社でゼロから新規事業に参入し経営の多角化やシェア拡大を目指そうとすると、設備投資や人材の確保など、多大なコストと手間がかかるためです。すでに設備や人材がそろっている会社をM&Aで買収することで、コストと時間をかけずに事業を発展できます。

人材・資産・ノウハウなどの獲得

優秀な人材や経営のノウハウといった無形資産は、設備や不動産などの有形資産よりも獲得が困難なことがあります。

設備や不動産は資金さえあれば購入できますが、人材やノウハウは地道に築き上げることでしか手に入れられません。しかし、すでに人材やノウハウがある企業をM&Aで買収すれば、経営資源を手早く獲得できます。

取引先・顧客・シェアの獲得

安定した取引先やリピーター顧客の獲得は、一朝一夕に実現できるものではありません。長年事業を続けて信頼を得てようやく獲得できるのが一般的です。

自社でゼロから事業を始めて、取引先や顧客を獲得するのは非常に時間がかかりますが、すでに取引先や顧客を持っている企業をM&Aで買収できれば、手早く経営資源を獲得できます

既存の事業をM&Aで買収することで、自社で一から立ち上げるのに比べてスピード感をもってシェアを拡大することが可能です

デメリット

続いて、M&Aを実行する買い手のデメリットを解説します。M&Aを実行する買い手の主なデメリットには以下の3つがあります。

  • 想定したシナジー効果が得られない
  • 経営統合プロセスの失敗
  • M&Aにかかる費用の負担

想定したシナジー効果が得られない

M&Aで事業を買収したからといって、必ずしも想定したシナジー効果が得られるわけではありません。シナジー効果は、自社の事業内容や業務形態が相手企業とかみ合わないと実現できないといった不確実性があります

たとえ相手企業が優秀な経営資源を持っていても、自社との相乗効果を生み出さない可能性もあります。その一方で、赤字の企業を買収してうまくシナジー効果を獲得するケースも珍しくありません。

M&Aでシナジー効果を獲得するには、買収する企業を見極める優れた眼力が必要です。

【関連】M&Aのシナジー効果とは?分析に使うフレームワーク、メリットが得られた事例も紹介| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

経営統合プロセスの失敗

M&Aは買収して最終契約を締結すればそれで終わりではなく、その後うまく業務を行っていけるかが重要です。業務内容も企業風土も違う2つの会社が協力して事業を行うわけですから、予期しないさまざまなトラブルが起こることは容易に想像がつきます。

このようなトラブルを最小限に抑えるために、業務システムや企業風土などをすり合わせていく作業を経営統合プロセスといいます。

たとえ優秀な企業をM&Aで買収できたとしても、経営統合プロセスがうまくいかないとM&Aは失敗に終わってしまうでしょう。

M&Aにかかる費用の負担

M&Aは企業を買収する行為なので、買い手側は多大な費用が必要です。会社を買収するのにかかる金額は、個人事業の小規模な店舗なら数百万円程度、中小企業で数千万円程度、中堅規模の会社なら数億円はかかります。

M&AではM&A仲介会社への手数料や、買収する企業を調査するデューデリジェンス費用などもかかります。

M&Aの買い手としては、多大な費用を負担しても買収するメリットがあるかどうか、慎重に検討することが重要です。

【関連】M&Aの手数料はいくら?相場や算出方法、仲介会社の報酬体系を徹底紹介!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. M&Aを実行する買い手のメリット・デメリット

M&Aを実行する買い手のメリット・デメリットを紹介します。

メリット

M&Aは、一般的に企業が成長させる有力な手段として、会社規模にかかわらず、さまざまな業種・業界で実施されています。買い手にとってM&Aを行う最大のメリットは、必要な資源をスピーディーに獲得できる点です。具体的には、以下が挙げられます。

  • M&Aによって事業成長にかかる時間を短縮
  • ローリスクでビジネス規模の拡大
  • 事業の多角化が可能
  • 節税対策
  • ライバルの吸収
  • 弱点をM&Aによって補完できる

デメリット

M&Aの買い手にはさまざまなメリットもありますが、デメリットも存在します。M&Aを検討する際は、デメリットを理解しておくことが大切です。具体的には、以下が挙げられます。

  • 偶発債務・簿外債務など、粉飾が見つかる可能性がある
  • 許認可を引き継げず事業を継続できないおそれ
  • 融合がうまくいかず期待したシナジー効果が生まれないおそれ
  • 投資以上の利益が得られない
  • 買収対象企業の従業員の不満・離職のリスク

【関連】M&Aの売り手側のメリット・デメリット!目的、被買収企業側のリスクや流れも解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

3. M&Aの手法別のメリット・デメリット

M&Aはどの手法を選ぶかで、見込まれる利益や税金、手続きが異なります。M&Aの手法別のメリット・デメリットを紹介します。

株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡買収対象となる売り手の発行済み株式を、買い手が買い取り、会社の経営権を取得するM&Aスキームです。株式譲渡は、会社の拡大や組織再編、事業承継など、さまざまな目的で実施されています。株式譲渡のメリット・デメリットは以下のとおりです。

【メリット】

  • 複雑な手続きを行う必要がない
  • 株式の過半数を取得した場合は、支配権をすべて取得できる
  • 従業員、許認可などをまとめて引き継げる
  • 過半数の株式取得をした場合、反対株主がいても柔軟な対応ができる

【デメリット】
  • 企業文化の違いにより、シナジーを発揮しにくい場合がある
  • 簿外債務があった場合、負債を引き継ぐ可能性がある
  • 買収するための資金が必要
  • 株主が分散している場合は、全株式を取得できない可能性がある

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡は、会社のある事業の全部または一部を取得する手法です。株式譲渡と違い、譲渡対象の事業を選択できるのが大きな特徴です。事業用財産に、製造・販売のノウハウなどが付随していれば事業譲渡を採用します。

【メリット】

  • 買い手は必要な資産を指定できるため、必要な事業のみを取得できる
  • 株式譲渡のように、債務・負債などを引き継ぐ可能性が低い
  • のれん相当額の償却、有形固定資産の減価償却などの節税ができる

【デメリット】
  • 「個別財産の所有権」「契約上の地位」などの移転手続きが必要となるため、実務に手間と時間がかかる
  • 税制適格組織再編制度による税務上の優遇措置がないので、登録免許税や不動産取得税などを負担する必要がある
  • 買い手企業側には事業譲渡で引き継ぐ課税対象資産に対して消費税も発生する

会社分割のメリット・デメリット

会社分割は、株式会社または合同会社で運営されている事業について、その権利義務、関連資産、組織・人材などを切り出し、包括的に他社に引き渡す方法です。大きく新設分割と吸収分割の2種類の方法があります。会社分割で事業を引き継ぐ側が新設会社の場合を新設分割、既存の会社が引き継ぐ場合を吸収分割といいます。

【メリット】

  • 売り手は一部の事業のみで売買可能
  • 買い手は対価として新株を発行すればいいので、資金を準備せずに実施可能
  • 包括承継のため、契約の手続きが簡便
  • 売り手から移籍する従業員から個別に同意を得る必要がない
  • 税金の負担が軽い
  • 倒産リスクを分散させ、新規事業への参入にチャレンジが可能
  • スムーズに経営統合ができるため、恩恵を早期に得られる

【デメリット】
  • 株式価値の下落の可能性、企業イメージの低下のおそれ
  • 株主構成・株式所有率も変わるため、既存株主からの反発の可能性
  • 手続きに多くの時間がかかり、経営統合がスムーズに進まない可能性がある
  • 税務の手続きが煩雑
  • 許認可の再取得が必要な事業もある
  • 株主総会の特別決議を行い3分の2以上の賛成が必要

株式交換・株式移転のメリット・デメリット

株式交換は、売り手のすべての株式を買い手の株式と交換し、完全親会社となる会社の株式と交換する手法です。株式移転は、完全子会社となる会社の株主が保有する株式の全てを、新設する完全親会社となる会社の株式と交換する手法をさします。

株式交換は、基本的にある会社を完全子会社化したい場合に実施され、株式移転は完全親会社として持ち株会社を新設する場合に採用されケースが多いです。

【メリット】

  • 買い手は対価としての新株発行のみでいいため、買収資金の準備が必要ない
  • 売り手株主から3分の2以上の賛同が得られれば、少数株主を排除して対象会社を子会社化できる
  • 売却後も売り手側の企業は存続しているため、経営統合作業を急ぐ必要はない

【デメリット】
  • 買い手が上場企業の場合、株価が下落する可能性がある
  • 対象企業の株主は企業の株主となるため、株主構成に変動がある

新株引き受けのメリット・デメリット

新株引き受けには「第三者割当増資」「新株予約権」の2種類があります。

第三者割当増資は会社が、特定の第三者に対して新株を割り当てて発行する手法です。新株予約権は、あらかじめ決定されている価格で、会社の発行する新株引き受けが可能になる権利です。

第三者割当増資は、基本的に支配権を目的としない業務提携や財務状況が悪化している企業買収などに活用されます。

【メリット】

  • 株式の譲渡制限を行っていない公開会社の場合、取締役会決議で第三者割当増資・新株予約権の発行が可能であり、株主の同意なしにM&Aが実行できる
  • 公開買付け規制の適用を受けない
  • 新株予約権を活用した場合、段階的な資本の払込みができる。したがって、財政状況が悪化するなど、買収を途中で取りやめる選択肢が可能

【デメリット】
  • 買収対象企業の株主が実施後も少数残るため、完全な支配権を獲得できない
  • 新株発行価格が公正かどうか問題になる
  • ある程度の株式割合が必要となるため、まとまった資金が必要

合併のメリット・デメリット

合併は、複数の会社を一つの会社に統合する形を目的としたスキームです。合併によるM&Aは、新設合併と吸収合併の2種類があります。

新設合併は、合併のため会社が一度解散し、合併により新会社が設立され、権利義務を承継する手法です。吸収合併は、合併の対象となる会社のうち、1社が存続して他の会社が消滅し、権利義務を承継する手法です。新設合併は、許認可申請の手続きが複雑なため、実務上は吸収合併が多く活用されています。

【メリット】

  • 会社が一体化されるため、合併により早期にシナジー効果が得られる
  • 合併対価として株式にすると、買い手は資金調達をせずに買収が可能
  • 対等な立場でのM&Aをアピールしやすく、世間的にも良いイメージがつきやすい

【合併のデメリット】
  • 統合作業を行う場合、現場の負荷が大きくなる可能性がある
  • 新株が発行される際、合併比率によっては買い手側株主の持分が希薄化し、株価が下落する可能性がある
  • 合併によって重複する顧客との取引があった場合、契約を縮小される可能性がある

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4. M&Aの基本合意契約における買い手側のメリット・デメリット

基本合意は、M&Aの最終契約に入る前に、売り手・買い手双方が基本的な事項に関して、合意できたかどうかを書面で確認するものです。

基本合意は、一般的にM&Aを成立させるといった意味での法的拘束力を持ちません。しかし、独占交渉権や秘密保持など、取引条件面以外での条項は、法的拘束力を及ぶ範囲を明確にする必要があります。基本合意を締結できれば、M&Aの成功率も高まります。

【メリット】

  • 重要な論点の合意形成が可能となる
  • スケジュールが明確化できる
  • 独占交渉権の付与を設定すると一定期間独占的な交渉権が獲得できる

【デメリット】
  • 基本合意契約によってデューデリジェンスの実施が行われるため、多額の費用や多くの時間がかかる
  • 自社の情報を開示する必要がある

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5. M&Aの買い手が持つべき心構えとは

M&Aで会社を買収して事業を拡大することは、経営戦略の1つとして非常に有効な手段です。しかし、買い手としては買収費用の負担など大きなリスクを背負うため、しっかりとした心構えを持って臨む必要があります。

この章では、M&Aの買い手が持つべき7つの心構えを詳しく解説します。

  1. 買収先企業の選定
  2. 買収先企業の検討
  3. 機密情報を漏らさない
  4. M&A戦略の策定
  5. 買収先の従業員・取引先・役員のことを考える
  6. M&Aのタイミングを逃さない
  7. DDや統合プロセスの実施を忘れない

①買収先企業の選定

買い手としてM&Aを実行するプロセスで重要なものの1つが、買収先候補の選定です。問題のある企業を買収しないように注意するのはもちろんですが、たとえ優秀な企業を買収しても、自社の買収目的に合致しない企業であれば、結果的にM&Aが失敗に終わってしまいます

買収対象の企業

買い手が買収すべき企業は、買い手の事業内容や事業規模、そしてM&Aの目的によって異なってきます。もちろん一般論として赤字企業は避けるべきなどの基準はありますが、高いシナジー効果が見込めるなら赤字企業の買収で業績を伸ばせることもあり、判断が難しいです。

既存事業のシェア拡大が目的なのか、それとも新規事業への参入を目指しているのか、M&Aの目的をはっきりさせることで、買収すべき対象企業が絞られます。

買収非対象の企業

倒産寸前の債務超過であったり、重大な偶発債務や簿外債務があったりするなど、経営状態に根本的な問題がある企業は買収非対象となりますが、難しい点は問題がない買収候補からどのように1社に絞っていくかです

条件を絞りすぎるとほとんどの企業が買収非対象となり、長期間にわたり買収先が決まらない事態に発展する一方、条件が緩すぎると満足いかない企業を買収してしまうおそれもあります。

自社がM&Aを行う理由をもとに、買収するべきでない企業の適切な基準を設けておくことが重要です。

②買収先企業の検討

買収先企業の検討は、M&A仲介会社が選んだ買収先候補の中から実施します。M&A仲介会社はまず買い手企業と面談して買収企業の条件を聞き出し、それに合う買収先候補を有しているネットワークから洗い出します。

大まかな候補の洗い出し作業はM&A仲介会社が行うので、買い手は仲介会社にしっかりと希望条件を伝えておくことが重要です。

③機密情報を漏らさない

M&Aには身売りといったマイナスイメージもあり、不安に思った従業員や取引先、顧客が離れていくおそれがあります。M&Aで会社を売却する売り手にとって、自社がM&Aを検討しているといった情報は外部に漏らしたくありません。

買い手としてM&Aを行う際は、売り手側の情報を漏らさないようにすることが重要です。売り手との交渉の際は秘密保持契約を締結し、情報漏えい対策を万全に講じましょう。

④M&A戦略の策定

買収したい企業が決まったら、その企業の買収に適したM&A戦略の策定を行います。M&Aの手法はさまざまありますが、中堅から中小企業の買収の場合は、株式譲渡か事業譲渡が利用されるのが一般的です。

株式譲渡は買収したい企業の株式を取得して経営権を得る手法で、事業譲渡は買収したい企業の事業資産を買い取る手法です。株式譲渡は手続きが簡単なのがメリットであり、事業譲渡は買収したい企業の一部分だけを獲得できます。

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⑤買収先の従業員・取引先・役員のことを考える

M&Aによって自社が買収されることは、働いている従業員や役員、取引先にとって非常に大きなインパクトを与えます。もしもM&Aに不安を感じた従業員が退職したり、取引先が撤退したりしてしまうと、買収で得られるはずだった貴重な経営資源を失いかねません。

買い手としてM&Aを行う際は、従業員や役員、取引先に不安を与えないように配慮することが重要です。

⑥M&Aのタイミングを逃さない

企業の業績やその業界の動向は日々変化するので、それに伴い買収価格が変わる可能性があり、その企業を買収するメリットが変化する可能性もあります。買い手としてM&Aを行うには、M&Aのタイミングを逃さないといった意識が重要です。

⑦DDや統合プロセスの実施を忘れない

M&Aは、今まで面識のなかった企業を買収し、子会社としてともに事業を手がけていくので、契約した後に予想外のリスクが発覚しないよう買収する企業をDD(デューデリジェンス)でしっかり調査しておくことが重要です。

買収した後の経営をスムーズに進めるための、統合プロセスも非常に重要です。

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6. M&Aの買い手が持つべき狙い

M&Aの買い手が持つべき狙いは、買収する事業が新規事業・関連事業・既存事業のどれかによって異なります。新規事業を買収する買い手の狙いはリスク分散、関連事業を買収する買い手の狙いはシナジー効果の獲得、既存事業を買収する買い手の狙いはシェア拡大です。

まず、自分が買い手としてどのような効果をM&Aに求めているのか明確にし、新規事業・関連事業・既存事業のうちどれを買収すべきかを考えましょう。M&Aの買い手が持つべき狙いは主に以下のとおりです。
 

買収する事業 買い手の狙い
新規事業 リスク分散
関連事業 シナジー効果
既存事業 シェア拡大

M&Aにより新規事業を買う場合の狙い

M&Aで新規事業を買収する買い手の主な狙いは、さまざまな事業を手がけることで、仮に1つの事業がうまくいかなくなっても会社全体としてはそれほどダメージにならないようにリスクを分散することです。

もしもある会社が1つの事業しか手がけていないとすると、その事業がうまくいかなくなると倒産や廃業に直結します。複数の事業を手がければリスクが分散しますが、似たような事業ばかりであれば、その業界が不景気になった時にすべての事業が同時に失敗するリスクもあります。

そこで、まったく異なる事業に手を伸ばしてリスクを分散しようとするわけですが、今まで手がけていなかった事業をゼロから立ち上げるのは大変です。既存の会社をM&Aで買収することで、効率的にリスクを分散できます。

M&Aにより関連事業を買う場合

M&Aで買い手が関連事業を買う場合の主な狙いは、シナジー効果の獲得です。シナジー効果とは相乗効果のことで、企業同士が協力して事業を行うことで、単体では成し得ない事業展開を目指すことです。

例えば、製品を開発・製造しているメーカーが買い手で、販売業者が売り手のM&Aなら買い手は販路を手早く獲得できます。

M&Aにより既存事業を買う場合

自社がすでに手がけている既存事業の会社を買収し、シェアの拡大を目指すのも、M&Aの買い手の狙いの1つです。自社でゼロから新しい店舗を出そうとすると、設備投資や人件費などさまざまな費用がかかります。

一方で、M&Aで既存の店舗を買収すれば、設備投資や人件費を抑えつつ、手早くシェア拡大できます。買収した店舗がリピーターの顧客や取引先を有している場合、ネットワークも獲得できる点がメリットです。

7. M&Aの買い手が持つべき視点

M&Aの実施にあたって、買収側が持つべきであると一般的に考えられている視点を3つピックアップし取り上げます。

取引価額

M&Aは取引の一種であり、売り手はなるべく高く売りたいと考えるのに対して、買い手はできるだけ安く買いたいと考えるのが一般的です。買収側としては、M&Aを成立させるうえで、こうした心理をなるべく排除し、M&Aの対象企業の価値を客観的な目で判断することが大切です。

オーナーの株式所有割合

M&Aの成功を目指すうえで、株主構成が重要な鍵を握ります。株主の持株比率に応じて会社への影響力が強まるため、もしも売却側のオーナーが実質的にすべての株式を支配していなければ、スムーズなM&Aの実施が困難になります。

オーナーの人間性

買収側は、トップ面談を通じて売却側のオーナーの人間性を判断し、M&Aの実施有無を決定することもあります。トップ面談とは、売り手と買い手の経営者が直接顔を合わせることです。お互いの人間性や経営理念などを把握するうえで重要なプロセスです。

8. M&Aを実行する買い手が失敗しないポイント

M&Aの成功率は、一説によると20~30%といわれています。成功する事例よりも、失敗する事例のほうが多い現状を踏まえたうえで、慎重に準備してM&Aを行うことが大切です。M&Aを実行する買い手側として、注意しておきたいのは以下の3点です。これらのポイントを理解して、失敗する可能性を最小限に抑えるようにしましょう。

  1. デューデリジェンスの徹底
  2. 統合プロセス(PMI)の実施
  3. M&Aの専門家に相談する

①デューデリジェンスの徹底

デューデリジェンスとは、買い手側の企業が売り手側に対して、会社の詳細に関して調査を行うことです。通常、デューデリジェンスは、買い手と売り手が基本的な合意を得て基本合意書を締結した後に行います。

基本合意を締結した時点では買い手は売り手側企業の詳細をわかっていないので、最終契約を締結する前にデューデリジェンスを実行しておく必要があります。

デューデリジェンスは、費用と手間がかかるのでおろそかにしてしまいがちですが、買い手にとってはM&Aを成功させるための重要なプロセスなので、費用と手間を惜しまずに徹底して行うことが大切です。

②統合プロセス(PMI)の実施

M&Aでは今まで面識のなかった買い手と売り手が親会社・子会社となり、ともに事業を手がけていくことになります。それまで業務システムも企業風土も違っていた両社がスムーズに事業を行うためには、統合プロセス(PMI)を実施することが必須です。

統合プロセスには、まず両社がスムーズに業務を実行できる社内体制の確立、両社の強みを生かした新しい経営方針の立案などがあり、期間は少なくとも半年程度は必要とされています。この統合プロセス(PMI)をいかに実施していくかが、M&Aの成功を左右します。

③M&Aの専門家に相談する

買い手としてM&Aを実行するには、さまざまな知識や経験を必要とします。買い手企業の経営者が本業とは別にM&Aを進めていくのは、非常に難しいでしょう。買い手としてM&Aを行う際は、M&A仲介会社などの専門家に相談することが一般的です

専門家のサポートを受ければ手続きがスムーズに進み本業への支障が最小限に抑えられるメリットもあります。M&A仲介会社以外の相談先としては、金融機関のM&A相談窓口や、事業引継ぎ支援センターなどの公的機関といった選択肢もあります。

9. M&Aを実行する買い手におすすめの仲介会社

買い手としてM&Aによる買収を検討中の方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&Aの経験豊富なM&Aアドバイザーが買収企業の選定から交渉、そしてクロージングまでフルサポートします。

料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)です。無料相談は随時受け付けていますので、買い手としてM&Aを検討している方は、お気軽にお問い合わせください。

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10. M&Aの買い手が持つべき心構えと狙いまとめ

M&Aは買い手としてはリスクもある取引ですが、成功すれば自社だけでは成し得なかった事業拡大を実現できます。買い手のメリットとデメリットを理解して、慎重にM&Aを行うことが成功のポイントです。

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