2021年09月04日更新
M&Aの買い手側のメリット・デメリット!買収元企業側の目的とは?
M&Aの買い手側のメリットには、新規事業へのスムーズな参入や事業の多角化などがあります。技術やノウハウを短期間で取得することで、飛躍的な企業成長を目指すことができます。本記事では、M&Aの買い手側のメリット・デメリット、買収元企業側の目的を解説します。
1. M&Aにおける買収とは
M&Aにおける買収とは、ある企業が他の企業の発行済み株式の過半数を取得して経営的な支配下におくことを意味します。
株式会社の意思決定は、株主の意向で決まるため、買収で議決権の過半数を取得して支配株主となることで、対象企業の実質的な経営者になります。
経営者の行使権限は、持株比率が高まるほど増えていきます。例えば、2/3を超える議決権を取得すると、特別決議による事項(定款変更、取締役・監査役の解任など)を単独で可決させることができるようになります。
買い手が90%以上の議決権を取得して特別支配株主になれば、スクイーズアウト(少数株主排除)を実施して100%の議決権を取得することも可能です。
また、M&A買収の対象が株式ではなく事業になることもあります。事業譲渡と呼ばれるM&A手法で、特定の事業や技術のみを取得したい場合に活用されています。
買収の対価は、金銭による払い込みが一般的ですが、売り手・買い手の合意であれば買収企業側の株式交付になることもあります。
2. M&Aの買い手(買収企業側)のメリット
M&Aは売り手・買い手の双方にメリットがあります。売り手側には後継者問題の解消や売却益の獲得などがありますが、買い手側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
【M&Aの買い手(買収企業側)のメリット】
- 新規事業へスムーズに参入できる
- 事業の規模を拡大できる
- 事業の多角化ができる
- 自社の弱みを補える
- シナジー効果が生まれる
- 新たな技術・ノウハウを獲得できる
- 節税対策になる
1.新規事業へスムーズに参入できる
新規事業への参入は、M&Aで参入する方法と事業をゼロから立ち上げる方法があります。ゼロから立ち上げる場合、既存の事業者と対抗するために多大なコストと時間をかける必要があります。
M&Aで参入する場合は、事業に必要なノウハウをゼロから築き上げる必要がありません。売り手企業が時間をかけて築き上げてきたものに対して対価を支払うことで、短期間かつ一度に取得できるメリットがあります。
また、新規事業の参入障壁は、M&A買収後は後続企業に対する障壁としての機能も期待できます。障壁が後続企業の参入を拒むことで、自社は守られる側に立てるというメリットです。
新規事業の参入障壁の高さは、業種・市場によって異なります。M&A買収で難易度の高い事業にスムーズに参入できれば、安定した事業展開を行いやすくなります。
2.事業の規模を拡大できる
M&A買収は、事業の規模を拡大させることでスケールメリットを得られます。スケールメリットとは、同種の物を集めることで、生産性面で単体よりも大きな効果を得られることをいいます。
スケールメリットは、特に製造業で高い効果が期待できるとされています。工場・設備等の固定費が高くなる傾向が強いため、労働力・生産方法などを効率的に利用することで変動費のコスト削減効果を得られます。
また、買い手には、営業エリアの拡大というメリットもあります。自社が未進出のエリアの地域密着型企業を買収することで、グループ全体の顧客基盤を強化することができます。
どちらも買い手企業のリソースだけで実現しようとすると時間のかかるものですが、M&A買収であれば事業の規模を拡大させて、さまざまなメリットを得ることができます。
3.事業の多角化ができる
M&A買収は、魅力的な市場で既に優位なポジションを獲得している企業を取得することで、一度に連結の売上高や利益の向上を図れるメリットがあります。
このように、買い手がM&Aを繰り返してコア事業を増やすことを事業の多角化といいます。既存事業とは異なる事業・市場に進出して、新たな商品やサービスを提供するという経営戦略です。
事業の多角化のメリットは、リスク分散効果が高いことです。近年は企業を取り巻く環境の変化が激しく、単一事業では対応が難しくリスクが高くなるためです。
消費者のニーズの多様化も進んでおり、単一の事業で長期的かつ安定的に利益を出し続けることが難しくなっています。M&Aによる事業の多角化は、あらゆる面でメリットを享受することができます。
4.自社の弱みを補える
M&Aの買い手は、自社にない経営資源を取得することで弱点を補うことができます。売り手にとっても、買い手の経営資源を活用することで企業成長を目指すことができます。
例えば、高い技術力で安定して製品開発を行う一方で、販路を持たず製品を販売する手段が乏しい企業があるとします。
M&Aを活用しない場合は自力で販路を獲得しようとしますが、人材・時間・費用などの様々な経営資源を投入することになり、多大な負担がかかることになります。
M&Aであれば、買い手が販路に強みを持つ売り手を買収することで、製品開発力と販路を両立するグループ企業を誕生させることができます。
5.シナジー効果が生まれる
M&Aにおけるシナジー効果とは、複数の企業が統合することで単独で運営するよりも高い価値を発揮することをいいます。
M&Aの買い手が得られるシナジー効果はさまざまです。原材料・商品調達の効率化や生産能力の拡大、物流サービスの向上など業種によってメリットがあるので、買い手側は期待できるシナジー効果を正しく把握しておくことが大切です。
6.新たな技術・ノウハウを獲得できる
M&Aの買い手は、技術を獲得する目的でM&Aを実施することもあります。自社が持たない最新技術や長年をかけて培われた熟練技術を獲得することで、技術力や製品開発力を高めることができます。
既存事業に関連する技術の獲得では、製品開発や事業拡大の面で成長が期待できます。新たな製品を開発できるようになれば、新規事業への参入を目指すこともできます。
市場で優位に立てるほどの技術獲得には、相応の時間と費用が必要になります。M&Aであれば、買い手が必要とする技術をピンポイントで取得でき、技術力や製品開発力を向上を図れるメリットがあります。
7.節税対策になる
M&Aの買い手は、M&Aを節税対策として活用することも可能です。買い手はできるだけ早く投資回収を終わらせて次の買収にリソースを回したいため、適切な節税対策で税金負担を軽減することが大切です。
主な節税対策は、赤字企業を買収することによる法人税負担の軽減です。赤字企業の繰越欠損金を引き継ぐことで、利益を抑制させて法人税額を減少させるメリットが期待できます。
赤字の繰越可能期間は発生した年から7年です。赤字が続いていて繰越欠損金が多くなっている企業であれば、買い手グループの黒字と相殺することも可能です。
ただし、連結納税の場合は繰越欠損金の利用条件には、一定の条件が設けられています。買い手側はM&Aの検討段階から留意しておく必要があります。
3. M&Aの買い手(買収企業側)のデメリット
M&Aの買い手は沢山のメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。M&Aを検討する際はデメリットに留意したうえで戦略を策定することが求められます。
【M&Aの買い手(買収企業側)のデメリット】
- 簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性がある
- 想定していたシナジーが生まれないことがある
- のれん代の減損リスクがある
- 統合までにある程度の期間が必要になる
- M&Aによって優秀な人材が離職する可能性がある
- 許認可の引継ぎができない可能性がある
1.簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性がある
簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない債務のことです。現金主義の会計処理を行っている企業では、退職給付引当金や未払い給与などの支払いが発生していない費用が簿外債務になっていることが多いです。
偶発債務とは、現段階では発生していないものの、将来的に一定の条件が成立した際に発生する債務のことです。偶発的に発生するため、正確な負債額を予測しにくい特徴があります。
M&Aの買い手は、これらの債務を引き継ぐ可能性があります。M&Aの一般的な手法とされる株式譲渡では、権利義務を包括承継するため債務も自動的に承継します。
M&A後に簿外債務や偶発債務が発覚すると、事業の継続が困難になる場合もあります。買い手は事前の調査を徹底して債務の把握に努めなくてはなりません。
2.想定していたシナジーが生まれないことがある
M&Aの買い手の目的はシナジー効果の創出であることが多いです。しかし、必ずしも想定していたシナジー効果を発揮できるとは限りません。
M&Aの買収価格は、想定されるシナジー効果も含めて算出されます。つまり、シナジー効果を発揮できなかった場合は、買い手側は高額資金を投入しただけという結果が残ることになります。
シナジー効果を発揮できない原因は、事前の見立てが甘いことがほとんどです。M&A戦略に穴があったり、相手との交渉に失敗して高値掴みしてしまったりなどの要因があります。
適切な企業価値評価を行って適正な買収価格を算出したうえで、想定されるシナジー効果も価格に反映させていく必要があります。
3.のれん代の減損リスクがある
のれんとは、目にすることができない資産価値のことです。M&Aで買い手が支払った金額のうち、売り手企業の純資産額を上回った金額の部分がのれんに該当します。
のれんの減損とは、M&Aの際に計上したのれんの価値を正しく修正することです。のれんは無形資産のため、価値がなくなったり減少したりした場合は修正する必要があります。
のれんの減損を行うと、巨額損失の計上で大幅赤字に転落することがあります。買い手がM&Aに投じた費用が回収できなくなったことや、M&Aが失敗したことを意味しています。
のれんの減損を避けるためには、期待されるシナジー効果を正しく把握して適正なのれん価値を見極めることが大切です。
4.統合までにある程度の期間が必要になる
M&Aは、買収後に実施する統合プロセス(PMI)を完遂して初めて完了します。PMIとは、企業文化や経営方針の融合を図り、M&Aのシナジー効果を高めるための統合作業です。
各企業の従業員は、これまで異なる企業文化や経営方針で業務を行っています。経営戦略といわれても心理的に受け入れることが難しいため、短期間の統合を図ろうとすると摩擦や反発を生んで業務に支障がでる恐れがあります。
M&Aによる統合では、意識面以外にシステム面も時間がかかります。特にIT統合は重要性が高く、経営陣と各部署の連携と理解が求められます。
PMIに失敗するとシナジー効果を得ることが難しくなるので、M&Aの戦略策定の段階から時間をかけながら進めておき、売り手・買い手の協力体制を整えておくことが大切です。
5.M&Aによって優秀な人材が離職する可能性がある
M&Aの買い手の目的は人材獲得であることも多いですが、M&A買収が原因で人材が流出する可能性があります。
各事業・部署のリーダー格の優秀な人材が離職すると、想定していたシナジー効果を得られなくなる可能性が高くなり、代わりの人材をみつけられなければ業務の続行も難しくなります。
優秀な人材が流出する原因には、企業文化・経営方針や給与・待遇面への不満などがあります。おおむね、買い手企業に対する不満から自主退職という決断に至ってしまいます。
6.許認可の引継ぎができない可能性がある
許認可とは、特定の事業を行うために必要な許可のことです。5つの種類に分けられており、一定の条件を満たした上で各行政機関に申請することで取得することができます。
M&Aでは会社ごと許認可を引き継ぐことができます。新しく申請しなおす必要がないので、業務を停止することなくスムーズな引継ぎを実現できるメリットがあります。
しかし、利用するM&A手法には注意が必要です。包括承継の株式譲渡であれば問題ありませんが、事業譲渡の場合は許認可の引継ぎが認められず買い手企業が申請しなおす必要があります。
業種や種類次第では申請するだけで返事を待つ必要がないものもありますが、なかには行政機関の審査を受けるために数週間以上の期間が必要なものもあります。
4. 買い手(買収企業側)のM&Aでのポイント・注意点
M&Aの成功させるためにはメリット・デメリットを把握したうえで的確な対処を行うことが大切です。M&Aの買い手が特に注意しておきたいポイントには以下の3つがあります。
【買い手(企業買収側)のM&Aでのポイント・注意点】
- 目的に合った適切なM&A手法を選択する
- 対象企業のデューデリジェンスをしっかり行う
- M&Aの専門家に相談する
目的に合った適切なM&A手法を選択する
M&Aは、利用する手法によって得られる効果や手続きが大きく変わります。場合によっては期待していたメリットが得られなくなることもあるので、M&A手法に関する理解が求められます。
一般的な中小企業のM&Aでは、株式譲渡が利用されることが多いです。包括的な承継によって手続きが簡便というメリットがあります。
さらに、株式の売買なので売り手側の経営者に売却益が入るというメリットもあります。このことから、第三者への事業承継を目的とするM&Aでも、株式譲渡を利用して株式の売買を成立させることが多いです。
事業譲渡は特定の事業だけを取得したい時に活用されています。赤字の事業を承継せずに済むなど、メリットが明確化されていて株式譲渡との使い分けがされています。
M&Aは、買収以外に合併という選択肢もあります。被合併会社は消滅することとなり完全に統合されるので、株式譲渡や事業譲渡よりもシナジー効果を得やすいというメリットがあります。
対象企業のデューデリジェンスをしっかり行う
M&Aの買い手には簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性があるというデメリットがあります。
これは、デューデリジェンス(M&A対象の価値・リスクの調査)を徹底することでリスクを低減することができます。
財務面に関しては、売り手の財務状況をチェックすることで潜在的リスクを洗い出します。全てのリスクを把握することは難しいですが、一部だけでも事前に対処できれば状況が改善することもあります。
M&Aの専門家に相談する
M&Aの手法選択やデューデリジェンスの実施には、専門的な知識が必要になります。M&Aの規模次第で必要な業務量も増えるので、M&Aの専門家のサポートを受けることをおすすめします。
M&A買収で特におすすめの相談先はM&A仲介会社です。M&Aの専門家として豊富な経験と知識を持っているので、手法選択やデューデリジェンスを円滑に進めやすいというメリットがあります。
仲介サポートは、売り手・買い手の仲介に入って中立的な立場からM&A成約を目指すというものです。友好的なM&Aを実現させやすく、M&A後のシナジー効果や人材流出防止などに関して協力的な体制を構築しやすいです。
5. M&Aのメリットを最大化するためには
M&Aのメリットを最大化するためには、デメリットや注意点の対策を施したうえで計画的にM&A戦略を策定することが大切です。
しかし、デメリットにはM&A当事会社の企業努力だけでは対応できないものも多いため、M&A仲介会社のサポートを受けながらデメリットや注意点の対策を行うことが望ましいです。
M&A総合研究所は、中堅・中小規模の案件を得意とするM&A仲介会社です。幅広い業種における豊富な知識を蓄積したアドバイザーが丁寧にサポートいたしますので、M&A手法の選択やデューデリジェンスの実施を円滑に進めることができます。
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M&Aに関して無料相談をお受けしておりますので、買収やメリットの最大化を検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
M&Aの買い手には、さまざまなメリット・デメリットがあります。M&Aを検討の際はデメリット・デメリットを把握することで、慎重で計画的なM&Aを実行しやすくなります。
デメリットへの対応方法が分からない時は、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。M&Aの進行や注意すべきポイントに関するアドバイスを受けられるので、複雑なM&Aプロセスも円滑に進めやすくなります。
【M&Aの買い手(買収企業側)のメリット】
- 新規事業へスムーズに参入できる
- 事業の規模を拡大できる
- 事業の多角化ができる
- 自社の弱みを補える
- シナジー効果が生まれる
- 新たな技術・ノウハウを獲得できる
- 節税対策になる
【M&Aの買い手(買収企業側)のデメリット】
- 簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性がある
- 想定していたシナジーが生まれないことがある
- のれん代の減損リスクがある
- 統合までにある程度の期間が必要になる
- M&Aによって優秀な人材が離職する可能性がある
- 許認可の引継ぎができない可能性がある
【買い手(企業買収側)のM&Aでのポイント・注意点】
- 目的に合った適切なM&A手法を選択する
- 対象企業のデューデリジェンスをしっかり行う
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