M&Aによる会社売買とは?手続き、メリット・デメリット、最新動向、相場についても解説

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&A・会社売買が年々、盛んに行われるようになってきました。そこで本記事では、M&A・会社売買に関連する情報として、そのメリット・デメリット、最新動向、増加理由、実際のプロセス、売買価格算出法、注意点、マッチングサイトなどについて解説します。

目次

  1. M&Aによる会社売買とは
  2. M&Aによる会社売買のメリット
  3. M&Aによる会社売買のデメリット
  4. M&Aによる会社売買の最新動向
  5. M&Aによる会社売買の増加理由
  6. M&Aによる会社売買の手続き・流れ
  7. M&Aによる会社売買の価格算出方法
  8. M&Aによる会社売買の注意点
  9. M&Aによる会社売買に役立つマッチングサイト
  10. M&Aによる会社売買のまとめ
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1. M&Aによる会社売買とは

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略称です。Mergerは合併、Acquisitionは買収を意味します。M&Aには多くのスキーム(手法)があり、状況に応じたスキームを選択し実施されるのが会社売買です。

会社売買とは、売り手が会社を売却し買い手がそれを買収するものですが、会社売買の直接的な対象は会社の経営権の譲渡および取得をさしています。つまり、買い手は会社の経営権を買収し取得することで、当該会社を支配するのです。会社の重要事項は全て株主総会で決します。

したがって、会社の経営権を握るには、株主総会での議決権の過半数以上が必要です。その意味で、会社売買のイメージに最も合致するM&Aスキームは株式譲渡でしょう。株主総会での議決権そのものである株式の譲渡および買収によって、会社の経営権の移転が行われます。

会社売買とM&Aの違い

M&Aスキームには、株式譲渡以外にも事業譲渡株式交換、株式移転、第三者割当増資、合併、会社分割などがあり、さらに広義のM&Aとしては企業間の資本提携も含まれます。これらのスキームは、企業グループにおける組織再編行為として行われることも多いです。

つまり、M&A=会社売買とはなりません。M&Aとは、会社売買も含めた企業の組織再編行為の総称となります。

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2. M&Aによる会社売買のメリット

ここでは、M&Aによる会社売買のメリットを見てみましょう。売却側と買収側ではメリットが異なりますので、それぞれ分けて掲示します。

売却側のメリット

M&A・会社売買における売却側の実施理由は、後継者不足や経営難、事業の見通しをつけられないなどです。その際に売却側の得られるメリットを確認しましょう。

会社の存続

後継者不在により事業承継が困難な中小企業の場合、会社売買が成功すれば買い手が後継者(新たな経営者)となり、事業承継が成立します。廃業を免れ会社が存続しますから、従業員の雇用も守られ地域経済へのダメージもありません。

資金獲得

会社を売却するわけですから、当然、売却益を獲得します。老後の生活資金や新たな事業資金など、自由使途の資金を獲得できるのは大きなメリットです。

廃業コストが省ける

仮に廃業する場合、官報掲載費用、解散登記費用、解散決算費用、原状回復工事費、備品処分費などの費用が発生します。それらの手続きにかんする労力も負担です。しかし、会社売買ができれば、これらの費用・労力は一切発生せず、さらに売却益が得られます。

買収側のメリット

続いて、会社売買時の買収側のメリットを見てみましょう。

時間短縮

新規事業への参入などを考えている場合、一から自社で開発やノウハウを構築にはかなりの時間がかかります。会社売買・M&Aによって買収先の技術やノウハウを得られれば、その時間を削減できるのです。

人材獲得

少子化による人口減少が続く日本では、ほとんどの産業において労働者不足とされています。会社売買で他社を買収することによって、経験・スキルを備えた人材をまとめて獲得できるのはメリットです。

シナジー効果

シナジー効果とは、部門や企業間の協働によって生じる相乗効果です。会社売買で買収した企業と協業体制を敷くことで、相互の売上増が発生することをさします。

事業拡大

人口減少化にある日本では、多くの作業において市場規模は頭打ちで停滞傾向です。そのような環境下で生き残りを果たす手段として、会社売買で同業種の会社を買収し、グループとして市場シェアを拡大することが盛んになっています。

不労所得

近年、スモールM&Aとも呼ばれる小規模の会社売買が行われるようになりました。数百万円程度の売買額の場合もあり、個人でも取引可能です。飲食店のような店舗運営ビジネスであれば、自分はオーナーになるだけで運営自体は人に任せられます

言い換えれば、不労所得を得られる立場となる目的で、スモールM&Aなどの会社売買を行う個人が増えているのです。

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3. M&Aによる会社売買のデメリット

M&Aによる会社売買では、残念ながらメリットだけでなくデメリットやリスクもあります。メリットだけに着目するのではなく、デメリットにもきちんと目を向けておきましょう。

売却側のデメリット

会社売買の売却側のデメリットは、希望額で売れない可能性があることです。M&Aや会社売買は経営戦略として行われているので、買収側も条件交渉にはシビアに臨んでおり、買収側の希望条件に合わない場合には、売買が成立しないこともあります。

そのため、売却側はやむを得ず売却価格を下げて売らければならないこともあるのです。売却益を一定以上、得るには相応の準備が必要で、市場動向や情報収集をしっかりと行う必要があります。

買収側のデメリット

会社売買の買収側は、売却側と違って、会社売買成立後、想定したとおりに業績のプラス効果が上げられるかというテーマがあります。買収側のリスクは、それに関連するものです。

隠れ債務

売却側企業の貸借対照表に記載されていない簿外債務を見落とすと、会社売買成立後にそれが明らかになったとき、経営上、大きなダメージを受ける場合があります。簿外債務の具体例には以下のようなものがあり、会社売買契約前に十分な調査が欠かせません。

  • 賞与や退職手当の引当金
  • 未払いの残業代や社会保険料
  • 債務保証
  • リース債務
  • 買掛金
  • 手形割引による償還義務
  • 訴訟による賠償義務

収益が出ない

会社買収をして新規事業参入や事業強化を図っていても、会社売買にかかった費用と収益が見合わない可能性があります。これは企業文化の違う2社のすれ違いが起こり、シナジー効果を得られないまま事業が成長しないことなどが原因です。

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4. M&Aによる会社売買の最新動向

ここでは、会社売買を含むM&Aの日本における近年の動向について確認します。

M&A件数の推移

通常、非上場企業間のM&Aには公表義務はないため、真の意味での日本のM&A件数の統計資料はありません。それに代わるものの1つとして、レコフデータが毎年、情報開示義務のある上場企業が発表したM&A件数を統計した「M&A回顧」があります。

それによると、日本でのM&Aは1990年代から毎年、数を増やしてきましたが、2008(平成20)年にアメリカで起こったリーマン・ショックによる世界的大不況の影響で減少に転じました。

しかし、2012(平成24)年から再び上昇に転じて毎年その数を増やし、2019(令和元)年には過去最高の4,088件を記録します。2020(令和3)年は、コロナ禍の影響を受け前年より減少してしまいましたが、それでも過去3番目となる3,730件のM&Aが実施されました。

会社売買で広く採用されているM&Aスキーム

一般に、大企業行うM&Aは、事業規模の拡大や市場シェアの獲得(業界再編)、事業領域の拡張や新規事業への参入、海外市場への進出などを目的としています。

一方、中小企業では、後継者不足の企業が会社売買によって、その買い手が後継者(新たな経営者)となる事業承継を目的とするケースが多いです。さらに、ベンチャー企業やスタートアップでは、イグジット戦略としてIPO(株式公開)よりも会社売買を行うケースが増えてきました。

それらの会社売買で採用されるM&Aスキームの中で最も多いのは、株式譲渡です。特に中小企業が売却側の場合、オーナー経営者が全株式を所有していることが多いでしょう。

株式譲渡であれば交渉・手続きが簡潔に行え、株式=経営権の取得がスムーズに実現できる点が採用されている理由になります。また、事業譲渡は、厳密には会社の売買ではありませんが、広義の会社売買として採用されるケースも少なくありません。

税務対策などで会社組織は手元に残しておきたい中小企業経営者が、会社の全事業を譲渡する例などがあります。

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5. M&Aによる会社売買の増加理由

会社売買が増加している理由はいくつかあり、売却側・買収側の両方に多くのメリットがあることから現在では年々、多くの企業が会社売買による取引を行っています。

その背景には、経営戦略としてM&Aの活用が活発化されており、会社売買に対する負のイメージが少なくなっていることも理由の1つです。また、日本国内の社会問題も原因となっており、それらを解説します。

後継者不足

従来、日本の中小企業では、経営者の親族が後継者となる親族内事業承継が広く行われてきました。中でも後継者の代表格は経営者の子供です。しかし、近年は、少子化により後継者となる子供自体が少ない、またはいない事態となっています。

さらに、時代の変化により社会の価値観も多様化しました。その結果、後継者にならない選択をする子供がいたり、子供が後継者となることを無理強いしない親もいたりなど、後継者不足に拍車を掛けているのです。

親族に後継者がいない場合、社内の役員や従業員を後継者とする社内事業承継が次善の策になります。ただし、その場合の後継者は親族ではないため株式を相続できません。後継者となるには株式を買い取らねばならず、資金の問題で断念するケースも多くあります。

そこで、この数年来、脚光を浴びているのが、M&Aによる会社売買で、第三者を後継者とする事業承継です。

M&A戦略の浸透

当初、M&Aが知られ始めた頃の世間のイメージは、買収側=会社の乗っ取り、売却側=会社の身売りなどという、とてもネガティブなものでした。しかし、近年になって、そのイメージは覆り、M&Aは有効な経営戦略という理解が進むことで、広く実施されるようになったのです。

起業の手段

現在は、以前に比べ会社を興す起業家も増えました。起業家にとっては、会社設立が目的ではなく、設立後の事業運営が重要事項です。したがって、合理的な起業家ほど、企業手段は問いません。新規設立にこだわらず、M&Aで会社を取得し目的の事業を行う企業かも大勢います。

特に、M&A・会社売買で既存の会社を取得すれば、組織・人材・環境がそろっている状態で事業を行えるので、新設よりも手っ取り早いのです。

経営者のリタイアに対するニーズの変化

昨今、アーリーリタイア(早期リタイア)という言葉をよく聞くようになりました。これは、サラリーマンの定年時期のような一般的な引退年齢を待たず、40代や50代で仕事を辞め、残りの人生は不労所得や貯蓄などで生活することをいいます。

60代や70代まで事業を続けず、それよりも早く会社売買する経営者が増えることによって、会社売買の取引数も増える結果となったのです。

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6. M&Aによる会社売買の手続き・流れ

会社売買の方法は株式譲渡、合併、事業譲渡などがあり、どのような方法で会社売買を行うかは会社の状況や会社売買の目的により異なります。ここでは、一般的なM&Aによる会社売買の流れを確認しましょう。

会社売買の流れ

会社売買の一般的なプロセスは以下のとおりです。各プロセスの概要をそれぞれ掲示します。

  1. 事前準備
  2. M&A会社への無料相談
  3. アドバイザリー契約締結
  4. 企業探し
  5. 秘密保持契約締結
  6. 条件交渉
  7. 基本合意契約締結
  8. デューデリジェンス
  9. 最終契約書締結
  10. クロージング

①事前準備

最初に行うのが事前準備です。ここではM&Aの検討や、会社売買が本当に正しいかどうかを考え、その将来性や目標の設定、M&Aアドバイザーや専門家への相談を行います。第三者の意見を取り入れながら、M&Aや会社売買に向けた方針や手法などを決めるのです。

会社を売却する際の準備期間は一概にはいえませんが、より良い金額や条件で売却するには、強みを発揮した経営内容やしっかりした事前準備を行わなければなりません。そのほうが、買い手会社との手続きもスムーズです。

会社を売り急いでしまうと、買い手が見つかっても提示条件が良くなく、また買い手が見つからずに倒産してしまう可能性もあります。

②M&A会社への無料相談

会社内でM&Aに向けての方針がある程度定まったら、M&A仲介会社に無料相談をし、これからのM&Aのプロセスを話し合います。会社売買やM&Aには専門家が必要になるため、このプロセスでどのM&A会社を選ぶかがキーポイントです。

会社売買やM&Aをご検討の際は、豊富な実績を持つM&Aアドバイザーが専任に就き、クロージングまでのフルサポートを提供するM&A総合研究所にお任せください。当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。

無料相談はお電話・Webより随時、お受けしておりますので、M&A・会社売買をご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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③アドバイザリー契約締結

M&A会社が決まれば、アドバイザリー契約を結びます。このアドバイザリー契約は「専任契約」と「非専任契約」があり、案件の規模や報酬額によって使い分けるとよいでしょう。

アドバイザリー契約を結ぶことで情報漏えいのリスクを回避したり、M&A進行のサポートをM&AアドバイザーやM&A会社が行ったりするので、条件交渉がしやすく難しい契約などの業務も任せられます。

④企業探し

M&A仲介会社とのアドバイザリー契約後、M&A仲介会社が会社売買の相手候補を探します。希望に見合った企業や将来性の見いだせる企業を探し、十分に検討して選びましょう。

⑤秘密保持契約締結

M&Aではプロセスの中で重要な契約書をいくつか締結しますが、秘密保持契約書はM&Aを進めるうえでかなり重要な部分なのでしっかりと理解を深めましょう。会社売買交渉を行う希望があることが相互に確認できたら、まず、秘密保持契約書を締結します。

M&A・会社売買の交渉では、会社の機密情報を相手に開示する必要があるため、仮に情報漏えいしては大問題です。そのリスクを回避するため、秘密保持契約を締結してから交渉に臨みます。

⑥条件交渉

M&A仲介会社とアドバイザリー契約を結んでいる場合、ほとんどの条件交渉はM&A仲介会社が行います。ただし、最低でも1度、行われるのが、両社の代表者が直接会って話すトップ会談です。

トップ会談では、細かい条件面の話をするのではなく、それぞれの経営ビジョンや企業風土の確認、人物像の見極めなどが目的になります。

⑦基本合意契約締結

条件交渉である程度の条件が確定したら、基本合意書の締結です。ただし、基本合意書は、現時点での合意内容の確認書という位置付けであり、会社売買が決まったわけでもなく法的拘束力もありません

しかし、これを結ぶことで、これから先のM&Aの進行がスムーズになり、基本的な条件の確認ができるため、破談するリスクを抑えられるのです。また、独占交渉権などを盛り込むことにより、買い手側は細かい部分の交渉が行いやすくなります。

⑧デューデリジェンス

デューデリジェンスは、買い手側が行う売り手側企業の精密調査です。財務・税務・法務・労務・事業などの各分野について、士業などの専門家が起用され調べ上げられます。

デューデリジェンスの目的は、会社売買後、経営上のリスクとなることが隠されていないかと、最終的な売買価格決定のための売り手企業の評価、会社売買後のPMI(Post Merger lntegration=経営統合プロセス)計画策定のための情報収集です。

⑨最終契約書締結

デューデリジェンスが問題なく終われば最終交渉が実施され、そこで定まった条件による最終契約書を締結します。最終契約書の正式な呼称は、株式譲渡なら「株式譲渡契約書」、事業譲渡なら「事業譲渡契約書」です。

最終契約書には当然、法的拘束力があり、この締結以降、条件の変更などは認められません

⑩クロージング

クロージングとは、最終契約書で定められた内容の履行および、それに関連する諸手続きの実施をいいます。諸手続きには準備がいる場合もあるため、最終契約書締結日とクロージング実行日には、間隔が空けられることが多いです。

スキーム選択

M&Aや会社売買には以下のようなさまざまなスキームがあります。会社売買では状況に応じて最も適するスキームを選択しなければなりません。各スキームの概要を掲示します。

  1. 株式譲渡
  2. 事業譲渡
  3. 第三者割当増資(新株引受)
  4. 会社分割
  5. 株式交換・株式移転
  6. 合併

①株式譲渡

株式譲渡

株式譲渡とは、最も基本的なM&Aの取引です。売却企業のオーナーが保有株式を買い手に譲渡して、その対価として金銭を受け取り、買い手に経営権が移転します。

経営者個人が株式を保有していて売却した場合、株式譲渡による会社売買で得た利益は全て個人の手元に入ります。このときの売り手にかかる課税率は20.315%(2021年10月現在)と一律です。規模が大きい案件でも課税額を抑えられます。

②事業譲渡

事業譲渡

事業譲渡は企業が有している事業・資産の全てや一部を売却し、その権利を買い手側に譲り渡すM&Aの手法です。事業譲渡は、「会社は存続させたいが、不採算になっている事業を切り離したい」といった局面でよく用いられます。

事業譲渡では、買い手は必要な事業の一部分だけ承継できるので、M&A後のトラブルが少ないのが特徴です。しかし、大企業になると手続きが煩雑になるため、あまり採用されません。

③第三者割当増資(新株引受)

第三者割当増資

第三者割当増資(新株引受)とは、株式会社の資金調達の1つの方法であり、既存株主であるかどうかを問わず、特定の第三者に対して募集株式を割り当てる増資のことです。

上場企業の場合は、公募増資が一般的で不特定多数の投資家を公に手広く募り、新たな株主となる投資家より資本の払込を受けて資金調達を行います。未上場企業の場合は株式を公開していないため、公募増資が受けられません。そのため、第三者割当で増資を募ります。

M&Aでこの手法を用いる場合には、第三者割当で資金を投入するのと同時に、株式の過半数以上を取得して子会社化することが多いです。

④会社分割

会社分割

会社分割は企業組織再編のために用いられる手法で、既存の会社の持つ事業や権利を他の会社に承継する方法です。この手法には2種類の方法があり、「新設分割」と「吸収分割」があります。

新設分割は既存会社から新設の会社に事業の一部または全て承継することで、吸収分割は既存会社から他の既存会社へ事業を一部または全て承継する方法です。

分割会社が承継会社と吸収分割契約を締結し、分割会社の事業に関する権利義務の全てや一部のみを承継することで、分割会社は承継会社から対価を受け取ります。会社分割では対価が現金だけでなく、株式交付で実施できる点も特徴です。

⑤株式交換・株式移転

株式交換

株式交換とは、A社の株主のA社株式をB会社株式と交換し、A会社はB会社の完全子会社になる手続きをいいます。株式移転とは、A会社を完全子会社にするB会社を新設することで、新設されたB会社の株式とA会社株主のA会社株式を交換する手続きです。

この株式交換・株式移転は、株式譲渡とは違い、全ての株主の合意は必要なく実施できます。また、買収の対価は株式を交付するだけなので、資金調達の必要がありません。

⑥合併

合併

合併とは、複数の会社が統合し1つの会社となる方法で、中小企業よりも大企業がよく活用するM&Aの手法です。合併にも2つの手法があり、複数の既存会社が1つの会社に吸収される「吸収合併」と、新設した会社に全ての会社が合併される「新設合併」があります。

実際に活用されることが多いのは「吸収合併」が多く、株式譲渡とは違って吸収された会社は消滅してしまうのが特徴です。

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7. M&Aによる会社売買の価格算出方法

M&Aにはバリュエーション(Valuation)という用語があります。日本語では「企業価値評価」といって、会社売買価格を決める根本の数字です。バリュエーションでは、さまざまな算出方法が確立されていますが、大別すると3つの体系に分かれます。

それぞれの体系の概要を知っておきましょう。

コストアプローチ

売り手企業の貸借対照表にある純資産を基として企業価値評価を行うのがコストアプローチです。純資産を簿価のまま基準とする簿価純資産法や、資産・負債を時価に換算してから基準とする時価純資産法などがあります。

計算が簡易で便利ですが、売り手企業の将来価値について全く考慮されていない点が特徴です。

インカムアプローチ

インカムアプローチでは、売り手企業の中期経営計画(向こう3年間の事業計画)などをベースとして、売り手企業の将来価値を加味した企業価値評価を行います。M&Aでもよく用いられる代表的な算定方法が、DCF(Discounted Cash Flow)法です。

将来価値が含まれた評価は理想的ですが、ベースとする事業計画内容に計画策定者の恣意性が及ぶ可能性があるのが懸念事項になります。

マーケットアプローチ

マーケット(市場)にある上場企業の実例を基準として企業価値評価を行うのが、マーケットアプローチです。同業種で同程度の企業規模の上場企業の株価を参考にして算定する類似会社比較法や、類似するM&A取引を参考に算定する類似取引比較法などがあります。

算定には特殊な係数を掛け合わせる計算式が用いられますが、参考にできる企業や取引が見つからない場合は評価の実施はできないのが欠点です。

【関連】M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?算定方法を解説【事例・図解あり】

8. M&Aによる会社売買の注意点

ここでは、M&Aでの会社売買において特に注意すべき以下の3項目について解説します。

  • 包括的承継に伴うリスク
  • 休眠会社の売買取引
  • 悪質なM&A仲介会社への依頼

包括的承継に伴うリスク

株式譲渡や合併の特徴の1つは、包括承継であることです。売り手企業の事業・資産・権利・資格・許認可など全て丸ごと取得できるのはメリットなのですが、それと同時に義務となる隠れた問題点なども合わせて承継してしまう可能性を秘めています。

会社売買後、多額の偶発債務が発生すれば、その債務履行は買収側が負わねばなりません。ハラスメント問題など労使間の問題が明るみになって、裁判沙汰に発展する場合も矢面に立つ必要が生じます。

これらのリスクを極力、排除するには、徹底したデューデリジェンスを実施するしかありません。

休眠会社の売買取引

会社売買では、休眠会社もその対象となることがあります。その場合の注意点を把握しておきましょう。

休眠会社の定義

休眠会社とは、会社設立されたものの現時点では事業活動を休止している会社のことです。休業ともいいます。解散登記が行われたわけではないので会社は消滅せず、存続させたまま事業活動が停止している状態です。

休眠会社の問題点

休眠会社は「ペーパーカンパニー」として設立されることもあり、その目的は節税対策です。利益や売上高の分散により、納税額を減らすのが一番の目的になるのですが、この節税対策は合法的な節税ではないため、「脱税」と判断される可能性があります。

また、休眠会社には隠れ債務がある可能性も高く、売買するときには気をつけなければなりません。休眠していることで、未払いの借金や買掛金など帳簿に載っていない債務が隠れていることが多いです。

これらを理解せずに休眠会社を買収してしまうと、その債務も一緒に引き継ぐことになるので、リスクはかなり大きなものがあります。休眠会社の売買では、登記事項証明書や定款、決算書などを入手して、実情を詳しく調査しなければなりません。

休眠会社売買のメリット

一方で、休眠会社に買収にはメリットもあります。それは「多額の資本金を名目としてあげられる」ことと「社歴を入手できる」ことです。資本金の額は信用力につながります。資本金額が大きい休眠会社を買収すれば、少ない予算で資本金の名目が得られるのです。

また、継続期間の長い会社も信頼を得られやすい傾向にあります。帳簿や決算・納税などに問題がない休眠会社であれば、社歴の長さも魅力の1つです。

さらに、許認可持ちの会社を買収すれば、その許認可を取得できます。不動産業などの免許が必要な事業を行いたい場合、それを所持している休眠会社を買収すれば、取得の手間がかかりません。すぐには取得できない許認可であれば、なおさらお得です。

悪質なM&A仲介会社への依頼

一般的に悪質なM&A仲介会社というのは、そうそう見かけるものではありません。しかし、M&A仲介会社には国家資格のようおなものはなく誰でも開業できるため、それぞれの会社のモラルで運営されているのが実情です。

したがって、中には依頼者の真の利益よりも、自社の利益や評判を気にして交渉相手を決めたり、交渉を進めたりする可能性がゼロではありません。M&A仲介会社を選定する際には、事前によく情報を収集し、また無料相談などを活用して見極めてください

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9. M&Aによる会社売買に役立つマッチングサイト

昨今、インターネット上でのM&Aマッチングサービスも盛んになっています。多くのマッチングサイトが登録手数料は無料で使用できるので、手軽に会社売買を始めるには1つの手段です。ここでは、代表的なM&Aマッチングサイト4つを紹介します。

M&Aプラットフォーム

M&A総合研究所が運営しているM&Aマッチングサイトが「M&Aプラットフォーム」です。売り手は手数料が完全無料、買い手も登録手数料は無料となっています。専用サイト内で登録社の内容を相互に探すことが可能です。

また、M&A総合研究所独自のAIシステムにより、ニーズに合致する相手が見つかったらお知らせもいたします。通常、マッチングサイトでは当事者同士で交渉や手続きを行いますが、ご希望があればM&A総合研究所のアドバイザーにサポートを依頼することも可能です(有料)。

【関連】M&A仲介プラットフォームとは | M&A・事業承継の仲介会社ならM&A総合研究所

M&Aプラス

デロイト トーマツグループが運営しているマッチングサイトが、M&Aプラスです。M&Aプラスでは、登録案件の検索以外にも、全国のM&Aアドバイザー検索ができます。そのほか、オプションで各種サポートサービスも用意されているので利用しやすいでしょう。

バトンズ

日本M&Aセンターが32.46%出資しているバトンズが運営するM&Aマッチングサイトが、バトンズです。売り手は手数料無料ですが、買い手は成約時に成約額の2%の手数料が発生します(最低報酬額は税抜25万円)。早期から立ち上げられたサイトで国内最大級の規模です。

トランビ

トランビは、トランビが行っているM&Aマッチングサイトです。売り手は手数料無料で利用できます。買い手は、2021年1月から新料金システムとなり、月額3,980円・9,800円・19,800円のいずれかのプランから選択するシステムです(契約期間6カ月)。

プランにより交渉できる案件の条件が定まっているので、買い手の場合にはプランの検討が必要になります。

【関連】M&Aマッチングサイトのおすすめ40選!各サイトの一覧、特徴を比較【2021年最新版】

10. M&Aによる会社売買のまとめ

会社売買・M&Aにはメリットもあればデメリットもあります。一般に会社売買というと株式を一括で譲渡するものとされていますが、休眠会社の売買などでより戦略的に会社を取得可能です。

自社に有益な会社売買を実現するには、早期に信頼できるM&A仲介会社などの専門家を選定し、サポートを依頼するのが得策でしょう。

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