2022年06月07日更新
【M&A完全攻略マニュアル】M&Aとは?流れ・成約期間、譲渡額の決め方まで徹底解説!
この記事は、M&Aについてのまとめ記事です。M&Aの流れや成約までの期間、譲渡額の決め方などM&Aを経験しないとわからないことを徹底的に解説しています。M&Aを考えている経営者の方で、M&Aの勉強を開始しようと思っている方は、ぜひ一度この記事をご覧ください。
目次
1. M&Aとは?
M&Aとは、事業や会社の売買を行うことです。近年、M&Aを行う会社の数が増加傾向にあります。その理由は、以下の2つに大きく分けられます。
- 会社の規模を大きくして、業績を向上させるため
- 経営者の高齢化による事業承継のため
いずれの理由にしてもM&Aを行うためには多額の資金が必要となり、M&Aで失敗すると会社の経営状況が悪化する可能性があります。
M&Aを行うためには、専門家に相談する必要がありますが、すべてをM&A専門家に任せるのではなく、経営者自身もM&Aについて把握しておくと役立つ場面も多いです。
2. 買収によるM&A
まずは、買収によるM&Aについて紹介します。買収によるM&Aは大きく2種類に分類できます。
- 株式取得
- 事業譲渡
株式取得
対象となる会社の全発行株式数のうち過半数を取得できれば、その会社の経営権を掌握することができます。
株式取得によるM&Aでは、過半数の株式取得を目指す形が多く、取得方法には主に以下の6種類があります。
①株式譲渡
株式譲渡とは、文字通り被買収会社の株式を買収会社の譲り渡す方法で、中小企業が被買収会社になるM&Aで多くみられます。
中小企業の場合は非上場であることが多く、株式の過半数を経営者が所有しているケースも珍しくありません。
会社を売却するときは、保有している株式を買収会社に譲渡することで、経営権を移行します。なお、株式を譲渡したときに受け取る金額がM&Aの対価になります。
②第三者割当増資
第三者割当増資は、被買収会社の新株を買収会社に割り当てて、株式の保有率を上げ、会社の経営権を渡すことで買収するスキームのことをいいます。
会社の新株を発行するときの割り当ては、原則的に発行元が自由に決められます。そのため、M&Aを行う際に新株を発行して第三者割当増資を行い、買収できるのです。
③株式交換
株式交換とは、被買収会社の発行済み株式を買収会社がすべて取得する手法で、実施後、両社は完全親子関係(被買収会社が100%子会社となる)となります。
買収会社は株式の取得対価として、自社が発行する株式を被買収会社の株式に対して割り当てるケースが一般的です。
また、現金を対価としたり、三角交換形式を用いて買収会社の親会社の株式を交付することも可能です。
④株式移転
株式移転は、子会社となる側の発行済み株式すべてを新設する会社に取得させる手法です。持株会社(ホールディングス)を設立するときの組織再編に用いられるケースが多いです。
株式交換と混同しやすいですが、株式交換が既存会社に株式を取得させるのに対し、株式移転は新設する会社が取得するという違いがあります。
⑤TOB
TOBとは、公開買い付けともいわれています。まず、被買収会社の株式の買付情報を公開します。被買収会社の株主から株式を買付し、株式の保有率を上げていきます。被買収会社の全発行株式数の過半数を取得すれば経営権を掌握できます。
TOBは、被買収会社と買収会社の間でM&Aを行う契約がなくてもできる敵対的買収の1つです。
⑥MBO
MBOとは、会社の経営者がその会社の株式を取得し、その会社を買い取る方法です。例えば、グループ会社内からの独立や子会社が親会社から独立するときにMBOを行い、その会社の経営権を取得します。
なお、従業員が会社の経営権を取得でき、この手続きをEBO(Enployee Buyout)といいます。株式取得によるM&Aについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
事業譲渡(事業売却)
事業譲渡とは、会社の売買ではなく、事業のみの売買を行うことをいいます。買い手側のメリットとしては、必要とする事業のみを売買できる点です。
会社の売買を行うと包括承継(すべてを引き継ぐこと)が原則になります。つまり、被買収会社の負債もすべて引き継ぎます。その点、事業譲渡は必要な部分だけを引き継ぐのでそのようなリスクはありません。
また、売り手側のメリットは、会社を残したまま経営を効率化できます。一方買い手側のデメリットとしては、従業員をそのまま譲り受けられない点です。譲渡会社の各従業員に承諾をとる必要があります。
このほかにも事業承継のメリットとデメリットはいくつかあります。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
3. 合併によるM&A
次は合併によるM&Aについて紹介します。合併によるM&Aは大きく以下の2つに分けられます。
- 吸収合併
- 新設合併
ちなみに合併と買収の違いですが、合併によるM&Aでは、被合併会社は消滅会社となり法人格を失います。一方買収によるM&Aは、売却企業の経営権を取得しますが、買収された会社の法人格は残ります。
吸収合併
吸収合併とは、被合併会社(消滅会社)が合併会社(存続会社)に丸ごと取り込まれる形態のことです。合併によるM&Aを行う場合は、ほとんどが吸収合併です。
メリットは、M&Aの費用を比較的抑えられる点や手続きが簡便である点です。一方デメリットは、合併による対価を現金のみで支払う必要がある点や包括承継でリスクも引き継がなければならない点です。
ちなみに、親会社が同じグループ会社内の子会社を吸収合併する場合もあります。事業のシナジー効果やコスト削減を期待して子会社を吸収合併します。吸収合併についての詳細は以下の記事をご覧ください。
新設合併
新設合併とは、2つ以上の会社(消滅会社)の資産や負債などを新たに設立する会社(新設会社)に統合する合併形態のことです。
メリットは、吸収合併よりも良いイメージを持たせられる点や従業員同士がフラットな関係で統合できる点です。デメリットは、手続きが煩雑である点や合併の対価を現金で支払えない点です。
新設合併についての詳細は以下の記事をご覧ください。
4. 会社分割によるM&A
次は会社分割によるM&Aについて紹介します。このM&A形態も大きく以下の2つに分けられます。
- 吸収分割
- 新設分割
会社分割によるM&Aでは、会社を分割し、必要な事業を引き継いでいる会社を他の会社に引き継いでもらう形態です。会社分割によるM&Aは、事業譲渡と似た効果を得られます。
事業譲渡との違い
会社分割によるM&Aの効果は事業譲渡と似ていますが、法律上や引き継げるものが異なっています。ここでは、会社分割によるメリット・デメリットを事業譲渡と比較して紹介します。
会社分割のメリットは以下の通りです。
- 従業員への個別の同意なく異動させられる点
- 事業承継では対価を現金で支払うことが一般的であるが、会社分割では株式で支払える点
一方、会社分割のデメリットは以下の通りです。
- 包括承継であるため、負債などのリスクも引き継ぐ必要がある点
- 競業禁止規定について、事業譲渡では会社法により守られているが、会社分割は守られておらず、契約の際に別途定める必要がある点
会社分割を行うか事業譲渡を行うかはM&Aの専門家に相談したうえで決める必要があります。
吸収分割
吸収分割とは、分割を行う会社(分割会社)がその事業に関する権利や義務を分割した後、ほかの会社(承継会社)に引き継がせる形態のことです。承継会社に制限はありませんが、分割会社は株式会社か合同会社しかなれない点に注意が必要です。
新設分割
新設分割とは、分割する会社(分割会社)がその事業に関する権利や義務を分割し、その分割により設立する会社(新設会社)に引き継がせる形態のことです。新設会社はすべての種類の会社になれます。しかし、分割会社は吸収分割と同様に株式会社か合同会社しかなれません。
5. 資本業務提携とM&Aの関係
M&Aとは、会社の経営権が移動する場合や、会社や事業の売買を行うというイメージを持つ人は多いでしょう。これは、M&Aの狭義的な意味です。
これに対して、M&Aの広義的な意味は、複数の会社が1つの目標に向かって協力することです。つまり、会社や事業の異動がなくても協力をすればM&Aができます。広義的なM&Aに該当するのが資本業務提携です。
資本業務提携とは
資本業務提携とは、各会社が同じ経営目標に向かってヒトやカネを出し合う形態のことをいいます。資本業務提携は、資本提携と業務提携の2つの意味を含んでいます。
資本提携とは、各社の株式を保有し合うことで各社に出資を行います。このとき、経営権に影響しない程度(10%程度)の株式を取得し、出資します。一方、業務提携とは、各社が経営資本を出し合って業務を遂行することであり、生産や販売などで提携を行います。
これらを同時に行うことで、シナジー効果を得たり、研究開発のスピードを上げられたりします。資本業務提携のメリット・デメリットについては後程詳しく紹介します。
6. M&Aのメリット
ここからはM&Aのメリットについて紹介します。買い手側と売り手側それぞれの視点から紹介していきます。
買い手側のメリット
M&Aによる買い手側のメリットはいくつかありますが、この記事では以下の2つについて紹介します。
- シナジー効果を含めた事業拡大
- 初期投資額の少ない新規事業の参入
シナジー効果を含めた事業拡大
買い手側のメリット1つ目は、事業拡大ができる点です。M&Aを行うことでたし算的に利益を増加させられるということは容易に想像できるとおもいます。しかし、M&Aではそれ以上の効果を得ることを期待して契約を行います。
その効果がシナジー効果です。シナジー効果とは、日本語で相乗効果という意味であり、1+1が2以上になる効果のことをいいます。現代において、シナジー効果はたくさんありますが、基本はアンゾフが経営戦略のマトリックスで提唱した4種類のシナジー効果が基本となります(販売・生産・投資・経営)。
なお、M&Aの際に得られるのはシナジー効果だけではありません。その逆の負の効果であるアナジー効果が出てしまう場合があります。
そのため、M&Aを行う前や、M&A後もシナジー効果が得られていないなと感じたときも専門家に相談する必要があります。
初期投資額の少ない新規事業の参入
メリット2つ目は、少ない初期投資額で新規参入できることです。経営安定化のために、経営の多角化戦略で新規事業に参入するという場合があります。
しかし、新規参入にはその業界調査や設備費、原料費など初期投資額が大きくなります。また、その初期投資額を回収できるかわからないリスクもあります。
その点、M&Aによる新規参入ではそれらのデメリットを解消できます。また、経営ノウハウも入手できるため非常に低リスクで新規参入できます。
売り手側のメリット
M&Aによる売り手側のメリットについて以下の4つを紹介します。
- 雇用や事業の継続
- 後継者問題の解消
- 廃業に要するコストの削減
- 株式譲渡による利益
雇用や事業の継続
売り手側のメリット1つ目は、雇用や事業を継続してもらえることです。この点について、事業承継を考えている中小企業の経営者はM&Aを行うことで大きなメリットを得られます。
中小企業白書によると、M&Aでの売却先に希望することの第1位は従業員の雇用で、第2位の譲渡希望金額と大差をつけています。もし、事業承継を考えている方で、事業や従業員の雇用の継続を希望している方はM&Aという選択も考えてみてもよいでしょう。
後継者問題の解決
メリット2つ目は、後継者問題の解決です。近年、少子化と経営者の重責を背負いたくない若者が多いため、後継者を簡単に見つけられなくなっています。しかし、M&Aを行うことで後継者がいない場合も相手先を見つけなくても事業承継を行えます。
廃業に要するコスト削減
3つ目のメリットは廃業によるコストを削減できる点です。廃業するためには、廃業届などの手続きをする必要がありますし、それを確認してもらう専門家にも依頼する必要があります。
そのため、小規模事業者の廃業手続きには50~100万円程度かかります。会社の規模が大きくなるとさらにコストがかかります。しかし、M&Aを行うと、仲介会社への依頼料はかかりますが、廃業するほどのコストはかかりません。
株式譲渡による利益
メリット4つ目は、株式譲渡による利益です。つまり、M&Aによる対価です。廃業する場合、このような利益を得ることはできません。
M&Aの成功事例
M&Aに成功した事例を1つ紹介します。譲渡会社は、売り上げ20億円の飲食業を営んでいる中小企業です。経営者は68才であり、後継者が見つからないことからM&Aにより売却を行うという選択をしました。
一方、譲受会社は売り上げ150億円の飲食業で、事業を拡大させるためにM&Aを行おうと考えていました。両社ともM&A仲介会社のM&A総合研究所にM&A相手の探索を依頼しており、マッチングできました。譲受会社はクロージングを行い、事業の拡大に成功しました。
また譲渡会社は、事業承継を行え、また、希望額を売却益として得られました。M&A総合研究所では、ほかの案件でもM&Aに成功しています。詳しくは以下のページでご覧ください。
また、M&Aを行っているのは、中小企業だけではありません。事業拡大を目的としてM&Aを行っている大企業もたくさんあります。以下の記事では、M&Aに成功した事例を25個掲載していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
7. M&Aのデメリット
次はM&Aのデメリットについて紹介します。この項目についても買い手側と売り手側の視点からそれぞれ紹介します。
買い手側のデメリット
買い手側のデメリットについて以下の2つを紹介します。
- 従業員や取引先への影響
- 交渉後に発覚する債務
従業員や取引先への影響
買い手側のデメリット1つ目は従業員や取引先に影響することです。特に被買収会社の評判が悪い場合や、経営戦略に疑問があるようなM&Aを行うと従業員や取引先に悪影響を及ぼします。
従業員への悪影響の例としては、モチベーションが下がる、会社の今後が不安になり退職するということが考えられます。また、取引先への悪影響は、取引をやめることであり、取引先の数が減ると会社の売り上げが低下することにつながります。
交渉後に発覚する債務
デメリット2つ目は、M&A後に債務が発覚することです。会社の売買を行う場合、包括承継が基本となります。M&A後に隠れ債務や簿外債務が発覚しても引き継ぎを拒否できないので注意が必要です。このような事態を回避する方法は2つあります。
1つ目は、M&A交渉を行う際のデューデリジェンス(企業監査)をしっかりと行うことです。これにより、申告してもらえなかった債務などを見つけられます。発見したトラブルについては、M&A前に対策をとれますし、トラブルの内容によってはM&Aの交渉自体を中止するという判断ができます。
2つ目は、事業譲渡を行うことです。事業譲渡は、必要な事業だけを対象に売買するため、負債などを引き継ぐ必要はありません。
売り手側のデメリット
売り手側のデメリットについて以下の2つを紹介します。
- 譲渡価格への不満
- 従業員や取引先からの不満
譲渡価格への不満
売り手側のデメリット1つ目は、譲渡価格に不満を感じたままM&Aを行う可能性があることです。M&Aでは、買い手側・売り手側ともに利益が最大になるように交渉します。そのため、どこかの段階で妥協する必要があります。
譲渡価格について不満があるならば、M&Aの契約交渉自体を白紙にするという選択肢もあります。
また、以下のように手数料が高くて会社の譲渡益に不満を感じるパターンもあります。
このような不満を感じないためには手数料が安いM&A仲介会社を選ぶ必要があります。M&A総合研究所は、M&A専門のアドバイザーによるアドバイスを受けられるにもかかわらず、手数料は比較的安くなっています。ご相談のある方はぜひM&A総合研究所までご連絡ください。
従業員や取引先からの不満
デメリット2つ目は、従業員や取引先から不満が出る可能性があることです。従業員の場合、特に吸収合併など立場が下の状態になる異動をするため存続会社で働きにくくなったり、処遇を差別されたりする可能性があります。M&Aを行う際には、従業員にしっかりとした説明を行っておく必要があります。
また、取引先についても取引相手が変わるため混乱が生じます。取引先にも説明を行っておきましょう。
M&Aの失敗事例
M&Aに失敗した事例を1つ紹介します。製薬会社の第一三共の事例です。
第一三共は2008年にインドの後発医薬品メーカーランバクシーを約4900億円で買収しました。当時の日本の製薬業界は、国の医療費削減の動きがあり、特許切れの医薬品(後発医薬品)のシェアが拡大しつつありました。
また、1つの新薬を開発するための研究開発費が年々増加していました。これらを背景に第一三共も後発医薬品へ参入し、経営の安定化を図るためM&Aを行いました。しかし、医薬品の輸出規制がかかったことやデューデリジェンスが甘かったことなどが理由でM&Aに失敗しています。
このほかM&Aに失敗している事例はたくさんあります。以下の記事では、それらについて紹介していますので興味のある方はご覧ください。
8. 資本業務提携のメリット・デメリット
資本業務提携とは、先ほども紹介したとおり、広義的なM&Aの1つであり、資本・業務において協力し合うことをいいます。これにより各社の業績を上げていくことを目的にしています。ここからは、資本業務提携のメリットとデメリットについて紹介します。
資本業務提携のメリット
資本業務提携のメリットについて以下の3つを紹介します。
- 財務強化
- シナジー効果を得られる
- 関係性の強化
財務強化
資本業務提携のメリット1つ目は、財務強化です。各社ともに株式という形で出資しているため、金銭面で心配する必要はありません。また、資本業務提携が成功したときには各社の株価が上がるため、モチベーションの向上にもつながります。
シナジー効果を得られる
メリット2つ目は、シナジー効果を得られる点です。業務提携を行うため、各社ともに経営ノウハウや工場などの経営資本を出し合って業務を行っていきます。1社だけではできなかった業務も複数社が協力することで可能となり、かつ売り上げも大きく向上させる可能性があります。
関係性の強化
メリット3つ目は、関係性の強化です。業務を共同で行うため、ヒトやカネ、モノ、経営ノウハウなどが共有されることになります。また、互いに資本を出資しているため関係はより強いものになります。
資本業務提携のデメリット
資本業務提携のデメリットについて以下の2つを紹介します。
- さまざまな制限
- 情報漏えいのリスク
さまざまな制限
資本業務提携のデメリット1つ目は、さまざまな制限を受けることです。資本業務提携の資本の出資方法は株式を取得することで出資します。そのため、資本業務提携を行っている会社が株主となり、株主総会での議決権を保有することになります。
一般的な資本業務提携の場合、全発行済み株式の10%前後を持ち合う場合が多いでしょう。しかし、10%であっても関係会社の利害関係を考慮した経営を行う必要があるため、ある程度の制限を受けて経営を行うことになります。
情報漏えいのリスク増加
デメリット2つ目は、情報漏えいのリスクが高まることです。業務を共同で行い、経営資本も共有するため、各社の情報もある程度共有する必要があります。情報を共有している人が多いほど情報漏えいのリスクが高まるため、対策を取っておく必要があります。
資本業務提携の事例
2020年5月、帝人株式会社は、株式会社PREVENTに出資を行い、資本業務提携を締結することを発表しました。
近年の日本では、生活習慣の変化や高齢化の影響により、生活習慣病などの慢性疾患者の増加など、健康寿命や医療費の観点から、生活習慣病の予防に対する取り組みを強化する動きが求められています。
そのような中で、PREVENT社は、診療報酬明細書や健康診断データを活用した疾患の発症予測を実現する医療データ解析事業や、アプリ、モニタリングデバイスを活用した生活習慣改善指導による重症化予防支援事業を展開しています。
両社は本契約の締結により、生活習慣病の重症化を予防する事業の拡大、および地域包括ケアシステム関連の新事業を創出することを目指すとしています。
9. M&A成約までの流れ
次は、M&A成約までの流れについて紹介します。一般的には以下の5つのステップを経て、M&Aが完了します。この記事では、売却企業の視点から紹介していきます。
- 売却を検討~専門アドバイザーに相談
- 売却先の探索~企業概要書作成
- 売却先企業への匿名での打診~トップ面談
- 意向表明書の作成~クロージング
- M&A成約~統合プロセス
①売却を検討~専門アドバイザーに相談
まずは、売却の検討を行います。この段階でどのような企業に売却したいか、いくらで売却をしたいか、売却時の従業員をどうするかなど具体的な売却戦略を考えます。必要であれば、M&Aについて専門的な知識を持っているM&Aアドバイザーに相談して、より詳細に売却戦略を考えます。
売却戦略に具体性が出てくる場合や、実現可能性が大きくなってきたら、M&Aが完了するまで相談ができるようにM&Aアドバイザーと契約します。一般的に中小企業はM&A仲介会社と、大企業はファイナンシャルアドバイザリー(FA)と契約をして、M&Aが完了するまで面倒を見てもらいます。
②売却先の探索~企業概要書作成
次に売却先の探索を行います。売却先の探索はM&A仲介会社もしくはFAが行います。探索条件は、①の段階で具体的に相談をして決めておきますが、条件をあまりにも絞りすぎていると売却先の企業が見つかりにくくなることがあるので注意が必要です。
売却先の探索中は、自社のことをまとめた企業報告書を作成します。企業報告書はM&Aの相手が魅力的な会社であると感じるように作成します。
③売却先企業への匿名での打診~トップ面談
売却先企業の候補が見つかったら、匿名で打診を行います(ノーネーム)。このときに先ほど紹介した企業報告書も提出します。
売却先企業がM&Aに応じることになったら、両社との間でM&A専門家を仲介して秘密保持契約を締結します。そして、ネームクリアを行い、買収会社と被買収会社の社名をお互いに知らせます。
買収会社は、M&Aをスムーズに行えるようにM&Aの一連の流れを示した提案資料を作成します。作成した提案資料や企業報告書をもとに経営陣同士のトップ面談を行い、より具体的なM&Aの契約内容を交渉し、決めていきます。
④意向表明書の作成~クロージング
トップ面談終了後、M&Aの意向がある場合は、意向表明書を作成し、仲介会社に提出します。両社が意向表明書を提出した場合は、基本合意書を締結し、M&Aの意向があることや独占交渉権などの確認を行います。
そのあと、売却企業のデューデリジェンス(企業監査)を行い、買収会社が問題ないと判断したら最終条件交渉を行います。最終条件交渉では、M&Aに基づいた契約金などを決めます。両社が納得をすれば、最終契約書を締結し、クロージング(実行)を行います。
⑤M&A成約~統合プロセス
クロージングを行い、ヒトやカネなどが移動を開始して初めてM&A成約となります。そのあとは、会社や事業が1つになれるように統合を行います。M&Aの中で統合プロセスに一番時間がかかります。
ハード面では、システムの統合などがあり、完了までに3カ月程度かかる場合があります。一方ソフト面は、企業風土などを統合プロセスであるため、完了と判断できるまでには半年以上かかる場合があります。
経営者はこのことも考えてM&Aのスケジュールを考案する必要があります。M&Aのスケジュールについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
10. M&A成約までの平均期間
次は、M&A成約までにかかる平均的な期間を各段階に分けて紹介していきます。
①M&A成約までの準備期間
M&A成約までの準備期間の平均は約6カ月です。M&Aに必要な書類の作成などがあるため最短でも約3カ月かかります。
②M&A成約に向けての検討段階
M&A成約に向けての検討、売却先の探索には平均で約1カ月かかります。先ほども述べたように探索条件を絞りすぎるとさらに時間がかかる場合があります。
③M&A成約させるための実行段階
売却先が確定してからクロージングを行うまでは平均して約3カ月です。特にデューデリジェンスはしっかりと行う必要があるため約1カ月はかかるものと想定しておきましょう。
M&A成約までの平均トータル期間
M&Aの準備から成約までの平均のトータル期間は約1年です。そのあとの統合プロセスが完了するまでが平均で3~6カ月です。つまり、準備を開始してからM&Aの効果が出るまでに平均でも約1年半かかるということになります。ここまでのM&Aの流れと期間について表にまとめると以下のようになります。
M&Aを考えている経営者は余裕を持って準備・検討を行うようにしましょう。M&Aでの必要な準備について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
11. M&Aにかかる費用や税金
次はM&Aにかかる費用や税金について紹介します。
M&A仲介手数料
M&Aの費用は大きく分けると契約金(買収のとき)とM&A仲介手数料の2つです。M&A仲介手数料は、M&Aの相手を探してもらう場合や、M&Aの交渉・手続きを行ってもらうことに対して支払う手数料のことです。M&A仲介手数料には以下の3種類があります。
- 着手金
- 契約期間中の手数料(リテイナーフィー)
- 成功報酬
これらについて紹介していきます。
着手金
着手金とは、M&Aの業務を依頼した段階で支払う手数料のことです。着手金は、依頼する会社の規模やM&A仲介会社の規模により変動しますが、相場は50~500万円となっています。途中でM&Aの検討を中断することになっても、着手金は返金されないので注意が必要です。
なお、近年では情報技術の発達により、M&Aの事前調査が非常に簡便になってきました。このような背景があるため、着手金を無料にしているM&A仲介会社は増えています。
契約期間中の手数料(リテイナーフィー)
リテイナーフィーとは、契約期間中に毎月支払う手数料のことです。相場は30~200万円と幅広いでしょう。M&Aの交渉や手続きが長引く可能性がある場合、リテイナーフィーを多く支払うことになります。そのことが想定される場合は、リテイナーフィーが無料のM&A仲介会社に依頼することも1つの手段です。
成功報酬
M&A成約までに至った場合、M&A仲介会社に成功報酬を支払う必要があります。成功報酬は、M&A取引額に応じて報酬額が変動するレーマン方式を採用しているところが多いでしょう。レーマン方式による成功報酬の支払い額は以下の通りです。
M&A取引額 | 手数料率 |
5億円以下 | 5% |
5億円超~10億円 | 4% |
10億円超~50億円 | 3% |
50億円超~100億円 | 2% |
100億円超~ | 1% |
M&A取引価格が11億円の場合の成功報酬の計算は以下のようになります。
(5億×5%)+((10-5)億×4%)+((11-10)億×3%)=4,800万円
以上の計算式からM&A取引価格が11億円のとき、M&A仲介会社へ支払う成功報酬は4,800万円となります。
M&A総合研究所の場合
M&A総合研究所は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっており、着手金・相談料は完全無料です。案件それぞれにM&Aアドバイザーがつき、M&Aをフルサポートいたします。
無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
各種税金
M&Aにより課税される税金ですが、主に売却益に課税されます。株式譲渡で得た譲渡益には、所得税もしくは法人税が課税されます。事業譲渡による譲渡益に対しては法人税と消費税が課税されます。
一方、買い手側にも支払う税金があります。事業譲渡の際に引き継いだ固定資産に対して消費税が課税されます。
12. 譲渡額の決め方
次はM&A時の譲渡額の決め方について紹介します。
自分でできる譲渡額計算
譲渡額の計算方法は一般的に以下の2つが用いられます。
- DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法
- 純資産額+のれん代
前者の計算方法は、将来会社がいくら利益を上げられるか予測し、それを現在価値に換算する方法です。後者の計算方法は、現時点での会社の純資産額にのれん代(営業利益または経常利益の3~5年分)をたし合わせたものです。
後者の方法は、計算に使う数字が非常にわかりやすいうえに、客観性があるためこちらの計算方法で見積もることをおすすめします。
譲渡額の相場
上で紹介したように会社の規模により譲渡額の相場は変わります。M&A譲渡額について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
売り手側は高値でM&Aを成約させるポイント
ここからはM&Aで失敗しないためのポイントを売り手と買い手の視点からそれぞれ紹介します。売り手側が高値で会社を売却させるポイントはたくさんありますが、簡単にまとめると以下のようになります。
この記事では、特に大事だとおもわれる以下の3つを紹介します。
- 適切な準備をする
- 魅力をPRする企業概要書を作成する
- M&Aアドバイザーを選ぶ
適切な準備をする
まずは、M&Aに向けて適切な準備をしましょう。高値の譲渡希望額を提示すると買収先はすぐに見つかりません。しかし、譲渡額を妥協しすぎると満足のできるM&Aを行うことはできません。
準備方法としては、まず自身で会社の譲渡額を計算しておき、目安を把握しておきます。そして、どのような企業に売却したいか、譲渡希望金額の幅はいくらかなどを具体的に決めます。
魅力をPRする企業概要書の作成
会社の魅力をPRした企業概要書を作成しましょう。譲渡額は基本的には先ほど紹介した計算方法で算出される金額をもとに決められます。しかし、その金額はあくまでも目安であるため、買収したい企業が魅力的であればあるほど譲渡額が高値になる可能性があります。
M&Aアドバイザーを選ぶ
3つ目は、信頼できるM&Aアドバイザーを選ぶことです。信頼できないM&Aアドバイザーだとより良いM&Aを行えない可能性があります。信頼できないと少しでも感じたらM&Aアドバイザーの交代を要求するなどの対策をとりましょう。
買い手側がM&Aで失敗しないためのポイント
次は、買い手側がM&Aで失敗しないためのポイントについて以下の5つを紹介します。
- デューデリジェンスの徹底
- のれん減損のリスク
- 戦略的な統合プロセス
- M&Aファイナンスの活用
- M&Aアドバイザーを選ぶ
デューデリジェンスの徹底
買収を行う際にはデューデリジェンスを徹底しましょう。特に吸収合併など包括承継の場合、簿外債務など売却先が作成した資料だけではわからないトラブルも引き継ぐ必要があります。M&A後に悪影響を及ぼさないようにデューデリジェンスを徹底し、事前にトラブルを把握しておきましょう。
のれん減損のリスク
のれんとは、M&A契約時に会計上以外の資産(ノウハウや顧客情報など)について支払う対価のことです。目安は営業利益または経常利益の3~5年分と紹介しましたが、法律上の決まりはありません。最終的に買い手側がのれんの金額を決めます。
のれんの価値が数年後、大きく下がった場合、のれんが減損しているといいます。特に減価償却で会計処理をしている固定資産などに対してのれんを計上すると減損するリスクは高くなります。のれん減損が起こると、税務上で非常に不利な扱いを受けるので注意が必要です。
戦略的な統合プロセス
先ほど紹介しましたが、M&Aを行ううえで一番時間がかかるプロセスがクロージング後の統合プロセスです。この段階で失敗すると期待しているシナジーが得られないだけでなく、会社が大きな損失を受けることになります。これを回避するために、戦略的な統合プロセスを考えておく必要があります。
M&Aファイナンスを活用する
M&Aファイナンスとは、M&A時における資金調達のことをいいます。買収には多額の資金が必要になるため、自社の資産だけではまかなえません。M&Aファイナンスを行っている金融機関などを利用しましょう。
M&Aアドバイザーを選ぶ
最後は、売り手側の同様に信頼できるM&Aアドバイザーを選ぶ必要があります。信頼できないM&Aアドバイザーの場合、M&Aに失敗する可能性が高くなるからです。
13. M&Aアドバイザーとは?
M&Aアドバイザーは以下の2つに分けられます。
- M&A仲介会社
- ファイナンシャルアドバイザー
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、買収したい企業の依頼と売却したい企業の依頼を引き受けて、それぞれの希望が合うようにマッチングを行う形態です。主に中小企業のM&Aなど比較的規模の小さいM&Aのときに利用されています。M&A総合研究所もM&A仲介会社の1つです。
ファイナンシャルアドバイザー(FA)
ファイナンシャルアドバイザー(FA)は、M&Aを希望している企業に専属でサポートする形態のことです。そのため、この形態では基本的に両社のFA同士がM&Aの手続きや交渉を行います。
大企業のM&Aなど規模の大きいM&Aのときに利用されます。FAについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
14. M&Aアドバイザーと契約するメリット
M&Aアドバイザーと契約するメリットはたくさんありますが、この記事では以下の2つを紹介します。
- 適切な売却先を見つけやすい
- 売却検討中も通常業務が滞らない
適切な売却先が見つけやすい
M&Aアドバイザーは、M&Aを検討している企業の情報をたくさん持っています。また、M&A業界でのつながりもあるため、ほかのM&A仲介会社からも情報を得られます。そのため、自力で探すよりもより適切な売却先を見つけられるといえます。
売却検討中も通常業務が滞らない
特に規模の小さい会社が売却を検討すると、通常業務を行いながら並行して売却検討も行う必要があります。M&Aには専門的な知識が必要になるため、事実上並行して業務を行うことは不可能です。M&Aアドバイザーと契約することで、売却検討を代理で行ってくれるため、通常業務に専念できます。
15. M&Aアドバイザー選びのポイント
M&Aアドバイザーを選ぶポイントもいくつかありますが、この記事では以下の3つ紹介します。
- 得意業種・得意手法で選ぶ
- 税務の専門家である
- M&Aに関連した資格を持っている
得意業種・得意手法で選ぶ
まずは、得意業種・得意手法で選ぶようにしましょう。先ほど紹介したようにM&Aの規模によってM&A仲介会社かFAを選ぶか検討しないといけません。
また、特に規模の小さいM&A仲介会社の場合、特定の分野のM&Aにおいて実績があるなど得意分野を全面的に押し出しているところが多いでしょう。M&Aに失敗しないためにも実績のあるM&A仲介会社を選ぶようにしましょう。
税務の専門家である
M&Aアドバイザーが税務の専門家あるいは精通しているかを確認しましょう。M&Aでは、譲渡益に対する税金が発生しますし、譲渡額の計算など数字に強いM&Aアドバイザーに依頼する必要があります。
M&Aに関連した資格を持っている
M&Aに関連した資格には、M&Aエキスパート認定制度・M&Aスペシャリスト資格・JMAA認定M&Aアドバイザーの3種類があります。M&Aアドバイザー業務を行う人であれば、必ず保有しているとおもわれます。
しかし、M&Aアドバイザー業務においてこれらの資格を保有することは必須ではないので確認をしておきましょう。
16. M&Aアドバイザーも使う用語解説
最後にM&Aアドバイザーも使う用語について簡単に紹介します。
ノーネーム/ネームクリア
ノーネームとは、M&Aの相手の会社名を明かさない状態でその会社の概要をまとめた報告書のことです。ノーネームでは、業種・地域・規模など会社が特定されない範囲でまとめられています。その会社に興味を示した場合、秘密保持契約を締結してネームクリアで会社名を伝えます。
アーンアウト条項
アーンアウト条項とは、買収金を分割で支払うことです。買収金を一括で支払うことのできない企業にとってはM&Aを後押ししてくれる条項です。しかし、売り手側としてはすべてを支払ってくれないというリスクがあるためしっかりと交渉をする必要があります。
キーマン条項
キーマン条項とは、売り手側の会社のキーマン(社長など)がM&A後から2~3年は会社に残ることを定めた条項です。事業承継でキーマン条項があるときは、M&A後にすぐに引退できないことを示しています。
競業避止義務
競業避止義務とは、M&A後に売り手側が競業を行い、買い手側に損害が出ないようにするための決まりです。競業避止義務は一般的に20年間同じ地域に同業種の営業をしないという決まりになっています。
IM
IMとは、Information Memorandumの略のことで、売り手側の会社の詳細な情報をまとめた資料のことです。IMは売り手側のM&Aアドバイザーが作成し、買い手側の会社に提供します。
17. まとめ
M&Aについてのまとめを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?もし、自身がM&Aを一から失敗なく行うためには、ここで紹介した知識よりもさらに深い知識を持つ必要があります。
M&Aを考えている経営者の方はぜひM&Aアドバイザーに相談する場合や、契約をしてM&Aを行うことをおすすめします。
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