2022年11月28日更新
MアンドAとは?目的や手法、流れ、成功ポイント、株価への影響をわかりやすく解説【案件あり】
近年、MアンドAの成約件数は増えており、特に中小企業が関係している件数は増加傾向にあります。この記事では、中小企業の経営者に知ってもらいたいMアンドAの概要、流れや成功のポイントをわかりやすく解説しています。M&Aに向けた準備についても紹介しています。
目次
1. MアンドA(エムアンドエー)とは
MアンドAとは、合併(Marger)と買収(Acquisition)を意味しています。近年、MアンドAの成約件数は増加傾向にありますが、MアンドAの流れや成功ポイントなど、MアンドAをあまり知らない経営者の方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、MアンドAを浅く広く解説します。まずは、MアンドAの歴史や背景、経営者の目的を紹介します。
MアンドAの歴史
日本のMアンドAは、明治時代から始まっています。のちに財閥と呼ばれる三井や三菱は、造船や炭鉱などの事業買収を通じて、事業基盤を構築していました。
その際の事業買収は友好的な買収だけでなく、議決権を奪い合う敵対的買収も多かったといわれています。これを皮切りに、昭和初期に入っても規模の経済性を目的とした買収は盛んに行われていましたが、戦後の財閥解体によってMアンドAは下火になりました。
MアンドAが増加する背景
再びMアンドAが注目され出したのは、1990年代です。バブル経済崩壊後の不景気により、企業の成長率はほぼ横ばいの状態が続きました。
このような状態から脱却するためにMアンドAを行い、売り上げ向上や規模の経済によるコスト削減などのメリットを求めて、MアンドAが行われるようになりました。
現在では、さらに盛んにMアンドAが行われており、MアンドA成約件数が急増している要因には、積極的な中小企業のMアンドAが挙げられます。
MアンドAの目的
近年は、積極的な中小企業のMアンドAにより成約件数は増加しています。ここでは、その点からMアンドAの目的を紹介します。
売却・譲渡側の目的
中小企業の売却・譲渡の件数は増加しており、その一番の要因は後継者問題です。
近年、中小企業経営者の高齢化と経営者になりたがらない若者の増加により、後継者問題は深刻化しています。このような理由から、事業承継の一環としてMアンドAが行われています。
買収側の目的
買収側の最大の目的は、MアンドAによる相乗効果を得ることです。景気は、アベノミクス効果で少しずつ回復していますが、それでも経営状態が楽ではない企業は非常に多いです。
売り上げの向上やコスト削減などの相乗効果を期待して、MアンドAを行う企業は増加しています。特に近年は、大企業だけでなく中小企業による買収や、個人間でのMアンドA(スモールMアンドA)も行われるようになっています。
2. MアンドAの手法
①事業譲渡
事業譲渡とは、対象企業の特定の事業に関して売買を行うMアンドAをいいます。買収側のメリットは、特定の事業だけ買い取るため、対象事業外の負債などを引き継ぐ必要がない点です。
一方で売却側のメリットは、経営の運転資金を獲得できるなど、自社の経営を効率化できる点でしょう。ただし、事業に関係する従業員を引き継げない、競業避止義務を負うなどのデメリットもあることに注意が必要です。
②株式譲渡
2つ目に紹介するMアンドAスキームは株式譲渡です。経営者が大半の株式を保有している中小企業によく用いられています。
株式譲渡は、株式の保有数が全体の50%以上である場合、会社の経営権を取得でき、かつ煩雑な手続きが少ないため、先に挙げた6つの手法の中で最も簡便に行えるMアンドAスキームです。
③合併
合併とは2つ以上の会社が1つの会社になり、残りの会社が消滅するMアンドAスキームです。合併では、消滅会社が持っていた権利や義務のすべてを引き継ぎます。
既存の会社に引き継ぐ合併を吸収合併、新たに設立する会社に引き継ぐ合併を新設合併といい、それぞれ行うべき手続きが異なることに注意が必要です。
④会社分割
会社分割は対象企業から必要とする事業を含んだ会社を設立し、その会社ごと売却するスキームです。会社分割により、切り出された会社で働く従業員は、MアンドA後は引き継がれることになるので、この点は事業譲渡と異なります。
会社分割で兄弟会社を設立する場合はヨコ型会社分割、子会社を設立する場合はタテ型会社分割といいます。
⑤株式交換・移転
⑥第三者割当増資
第三者割当増資とは、会社が友好関係にある相手に対して新株を割り当てることです。MアンドAは、買収先に新株を発行して保有割合を高め、経営権を取得させて子会社化します。
しかし、第三者割当増資では株式を100%取得できないため、完全子会社化はできません。
3. MアンドAの現状
次はMアンドAの現状を解説します。MアンドAは、会社の規模によって好まれる手法や対象会社が異なります。
中小企業のMアンドA
中小企業のMアンドAは、事業拡大戦略・事業承継問題の解決策として関心が高まっています。今後、中小企業の経営者にとってMアンドAはより身近になり、経営者にMアンドAの知識があるかどうかで、会社経営の結果はかなり差が表れるでしょう。
例えば、後継者不在に悩む経営者が、会社売却の選択肢を知らずに会社を清算すると、創業者利益を得る機会を逃すばかりか、従業員の雇用機会や取引先との関係も失ってしまいます。
経営者が事業拡大を検討している場合は、新規顧客を得るために営業員の給料や広告費にお金を費やすより、同業の会社を買収して顧客基盤を得るほうが、投資効果が高いケースも少なくありません。
中小企業の経営者が、MアンドAの選択肢を認識することは非常に大切です。
好まれる手法
中小企業のMアンドAでは、基本的に事業譲渡もしくは会社分割が行われます。買収先が中小企業の場合は、買収するための資金が限られるため、必要とする事業のみの売買が行われます。
その事業に従事する従業員が必要な場合は、会社分割が行われるでしょう。第三者分割増資が行われる例もあります。
第三者分割増資は、必要最低限の株式を買い取るだけでよいので、資金力に乏しい中小企業のMアンドAではよく用いられる手法です。
MアンドAの対象者
買収先となるのは、一般的に買収企業よりも規模の小さい企業です。しかし、中小企業基盤整備機構によると日本の会社のうち99.7%が中小企業であるため、必要とする会社をできるだけ安い価格で買収できるように、相手先を探す必要があります。
大企業のMアンドA
続いては、大企業のMアンドAを解説します。
好まれる手法
大企業のMアンドAで好まれる手法は、株式譲渡です。その理由は、手続きが比較的簡便であり、かつ大企業には株式会社が多いからです。
株式譲渡では、必要な契約を締結した後は必要数の株式の売買を行い、買収される会社の経営権を取得します。
これに対して、合併や会社分割の場合は登記申請など煩雑な手続きが必要です。大企業のMアンドAの際には株式譲渡が好まれます。
MアンドAの対象者
MアンドAの対象者は、当然のことながら自社よりも規模の小さい企業を買収する事例が多いです。しかし、MアンドAの戦略によっては、同規模のMアンドAを行うことがあります。
同規模のMアンドAの事例には、2018年の武田薬品工業によるシャイヤーの買収があります。買収前の売上高は武田が約1兆7,000億円、シャイヤーが約1兆6,000億円(2017年)と、同じ額の売上高を誇る同規模の製薬会社でした。
買収後、武田は世界でトップ10のメガファーマとなりましたが、その効果はこれから現れてくると考えられます。
4. MアンドAの流れ
続いては、MアンドAの流れを見ましょう。この記事では会社売却・譲渡側と会社買収側に分けて、それぞれの流れを解説します。
会社売却・譲渡側の流れ
まず、会社売却・譲渡側の流れを簡単に紹介します。会社売却・譲渡側の流れは、以下です。
- MアンドAの専門家に相談
- MアンドAに関する委託契約
- 会社情報の提供
- 自社の企業評価算定
- 候補会社の選定
- 企業概要書の作成
- 候補先への打診
- 自社の会社情報の作成および提示
- トップによる会談
- 意向表明書の提示
- MアンドA時の売却価格などの交渉
- 基本合意書の締結
- MアンドA先によるデューデリジェンス
- 最終条件の交渉
- MアンドAの最終契約書の締結
- クロージング
①MアンドAの専門家に相談
会社売却を行う際には、まずMアンドAの専門家に相談します。売却先を早く見つけるため、適切な売却価格で会社を売るためです。
基本的には、取扱件数が多くて、かつMアンドA実績が多い仲介会社に相談するとよいでしょう。
②MアンドAに関する委託契約
相談するMアンドAの専門家が決まったら、次はMアンドAに関する委託契約を締結します。ここでは、秘密保持契約の締結とアドバイザリー契約を紹介します。
秘密保持契約は、売却先の経営者とMアンドAの専門家の間で締結します。MアンドAの情報が従業員の退社のきっかけになったり、株式会社の場合は株価が大きく変動したりするなど、情報が漏洩(ろうえい)するとよくない影響が出ることが考えられるでしょう。そのような事態を防ぐため、秘密保持契約を締結します。
アドバイザリー契約は、会社売却に関して専属でサポートしてもらうことを約束します。経験と実績が豊富で、かつ対応が丁寧なアドバイザリーと契約するようにしましょう。
③会社情報の提供
秘密保持契約を締結した後は自社情報を希望している売却先に伝えます。この情報をもとに、MアンドAの専門家に適切な売却先や希望に近い売却先を探してもらいます。
④自社の企業評価算定
提供した自社情報をもとに、MアンドAの専門家に企業価値の算定を行ってもらいます。自社の企業価値の算定方法は後ほど紹介しますが、厳密な計算が必要なためMアンドAの専門家に任せるようにしましょう。
万が一、間違った企業価値をもとに算出した売却価格を提示してしまうと、安い場合は売却企業が損をすることになり、高い場合はなかなか売却先が見つからない事態にもなります。
⑤候補会社の選定
次は、売却先の候補会社を選定します。アドバイザリー契約を締結していると、MアンドAの専門家が候補会社をいくつかリストアップしてくれるでしょう。売却会社は、そのなかから希望の売却先を選定します。
⑥企業概要書の作成
企業概要書とは、売却会社の概要や事業内容・従業員数・財務状況など、その会社のことをまとめた資料をいいます。
この段階では、売却会社の名前を明かさず、会社の内容を知ってもらいます。この後のデューデリジェンスにも関わるため、企業概要書はできるだけ詳細に記載しましょう。
⑦候補先への打診
売却先の候補が決まったら、その候補先にMアンドAの専門家をつうじて打診します。先ほど作成した企業概要書を提示して、買収に意欲的になるか反応をうかがいます。
⑧自社の会社情報の作成および提示
買収に意欲的であると判断したら、自社の会社情報の作成および提示を行います。これは、トップ会談に向けての資料作成および提示です。
この段階になると、売却先と秘密保持契約を締結した後、ネームクリア(売却会社の名前を開示)を行います。
⑨トップによる会談
次に、会社の経営陣同士によるトップ会談を行います。以降は会社買収に向けて本格的に動き出すため、会社売却の際の疑問点や懸念点など、気になることはすべて質問しましょう。
⑩意向表明書の提示
トップ会談を行って、その会社を売却したいもしくは買収したいと考えたら、意向表明書を提示します。
意向表明書は、主にトップ会談の内容が記載してある書面であり、その内容をもとにした買収を行う意向があるか確認する資料です。両社から意向表明書が提示されて、初めて次の手続きに進みます。
⑪MアンドA時の売却価格などの交渉
次にMアンドA時の売却価格などの交渉を行います。トップ会談では、会社売却に関する大筋の内容を同意したのみなので、ここで詳細なMアンドA条件を交渉します。
⑫基本合意書の締結
MアンドA時の詳細な条件交渉を両社が同意した場合、基本合意書の締結を行います。
基本合意書は、MアンドAを行う意向があることや独占交渉権・独占交渉期間などを記載した書面のことで、それまで交渉した内容が記載されています。
なお、基本合意書には法的拘束力はないため、この後のデューデリジェンスの結果次第では、基本合意書を破棄できることに注意が必要です。
⑬MアンドA先によるデューデリジェンス
次に、売却先のデューデリジェンス(以下、DD)です。DDとは企業監査のことで、財務状態や財務諸表ではわからない部分の調査を行います。
この調査結果をもとに再度企業価値を算定し、売却価格を買収企業が提示します。DDにはいくつか種類がありますが、ここでは以下の3つを紹介しましょう。
- 財務DD
- 税務DD
- 法務DD
財務DDとは、財務情報に関する企業価値の調査を行うことです。財務諸表は適切か、将来の収益性はどうかなど財務面での調査を行います。
税務DDとは、納税に関する調査のことです。法人税などが適正に申告されているか、繰越欠損金の特例が考慮されているかなどを調査します。
法務DDとは、契約や取引行為が法的かつ適正に順守されているか、コンプライアンスは守られているかなどを調査します。
⑭最終条件の交渉
デューデリジェンスの結果を受けて、再度最終条件の交渉を行います。この段階では、主に売却価格の交渉を行います。しかし、場合によっては売却先が買収を拒否する可能性もあるので、それに関する交渉が行われることもあるでしょう。
⑮MアンドAの最終契約書の締結
最終条件の交渉で、両社がその条件に同意した場合、MアンドAの最終契約書を締結します。最終契約書には法的拘束力があるため、締結するとMアンドAを行わなければなりません。
⑯クロージング
クロージングとは、MアンドAの契約の条件に基づいて、ヒト・カネ・モノなどを移動させることです。クロージング後の統合プロセスが最も難易度の高い手続きといわれていますが、ひとまずMアンドAに関する手続きはここで終了となります。
会社買収側の流れ
次に会社買収側のMアンドAの流れを紹介します。売却側と同じ手続きの詳細な解説は割愛します。
- 売却・譲渡側からの打診
- 企業概要書の入手
- MアンドAの秘密保持契約
- 譲渡企業の会社情報の入手および検討
- 仲介会社とのアドバイザー契約
- 譲渡企業の詳細な会社情報を入手
- 資料を元にMアンドAの検討
- 譲渡企業の会社見学
- トップ会談
- MアンドA価格などの条件交渉
- MアンドA基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終条件の交渉
- MアンドAの最終契約書の締結
- クロージング
①売却・譲渡側からの打診
まず、売却・譲渡側からの打診を受けてから、MアンドAの手続きを開始します。アドバイザリー契約を締結している場合には、MアンドAの専門家から打診されます。
売却先の希望に合っている場合は、契約を締結していなくても打診されることがあるでしょう。
②企業概要書の入手
次に打診された売却先の企業概要書を入手します。この企業概要書をもとに買収を行うかを判断します。
③MアンドAの秘密保持契約
買収に意欲的である場合、買収先とMアンドAの秘密保持契約を締結します。この締結により、売却企業は自社のネームクリアを行うのが通常です。
④譲渡企業の会社情報の入手および検討
次は、譲渡企業の会社情報の入手および検討を行います。実際には、詳細な情報や資料は、仲介会社とのアドバイザリー契約を締結してから手に入れる場合が多いです。
⑤仲介会社とのアドバイザリー契約
仲介会社とのアドバイザリー契約を締結します。この契約を締結するタイミングは、打診を受ける前から買収先を探している場合は、はじめにアドバイザリー契約を締結するのが一般的です。
一方、打診を受けてから買収を行うと決めた場合は、この段階で契約を締結します。なお、アドバイザリー契約を締結する際は、情報漏洩(ろうえい)を防ぐために秘密保持契約を締結します。
⑥譲渡企業の詳細な会社情報を入手
次に、譲渡企業の詳細や会社情報を入手します。この際は、経営者自身ではなくアドバイザリー契約を締結した仲介会社に依頼して、詳細な情報を入手しましょう。
⑦資料を元にMアンドAの検討
次に入手した資料を元にMアンドAの検討を行います。この段階では、社内で打ち合わせを実施し、買収に向けて手続きを行ってよいのか検討します。
⑧譲渡企業の会社見学
必要であれば譲渡企業の会社見学を行います。この会社見学は、クロージング後の統合プロセス時に、参考になることが多いといえるでしょう。
特に、企業風土などソフト面での統合には時間がかかるため、企業風土や雰囲気などが自社とあまりにもかけ離れている場合には買収を見送る選択肢も出てきます。
後で行うデューデリジェンスの段階でも会社を訪問しますが、そのときはデューデリジェンスの専門家が調査のために訪問し、経営者自身が訪れることはほとんどありません。
⑨トップ会談
次に両社の経営者同士によるトップ会談を行います。譲渡企業側から提示された資料や買収側が入手した情報をもとに会談を行い、MアンドAでの大まかな条件などを決めます。
⑩MアンドA価格などの条件交渉
トップ会談で決定した大まかな内容をもとに、買収価格などの詳細な条件交渉を行います。その条件に同意した場合は、意向表明書を提示します。
⑪MアンドA基本合意書の締結
両社が意向表明書を提示したら、次はMアンドA基本合意書を締結します。詳細は売却側と同様であるため割愛します。
⑫デューデリジェンスの実施
次に、デューデリジェンス(以下、DD)を実施します。デューデリジェンスの実施は、買収側にとっては重要な手続きになります。
事業譲渡以外の会社買収は、包括承継が原則となるからです。つまり、目的とする事業や資産以外に、不要な負債などマイナス部分も引き継がなければならないので、マイナス部分がどの程度なのかを把握するためにDDを徹底的に行うことが重要です。
⑬最終条件の交渉
デューデリジェンスの結果をもとに、MアンドAの最終条件の交渉を行います。この段階では、買収価格の交渉が主な内容になります。
⑭MアンドAの最終契約書の締結
最終条件の交渉を行い、両社が同意をしたらMアンドAの最終契約書の締結を行います。
⑮クロージング
最終契約書を締結したらクロージングです。ここまでが買収側のMアンドAの主な流れになります。
5. MアンドAのスケジュール
次は、MアンドAのスケジュールを見ましょう。先程は、MアンドAの大まかな流れを述べたので、ここではクロージングが行われるまでの期間を解説します。
売却・譲渡側のスケジュール
MアンドAのクロージングまでにかかる期間は、平均して3カ月~半年です。しかし、株式譲渡のように手続きが非常に簡便なMアンドAスキームの場合は、わずか1カ月程度でクロージングを行う例もあります。
売却・譲渡側の手続きで、一番時間がかかるのは売却先の選定です。希望売却価格を高く設定したり、希望売却先の条件を絞りすぎたりすると、なかなか売却先が見つかりません。
その場合は、価格や条件など、どこまで譲歩できるかを考えておく必要があります。
買収側のスケジュール
買収側に関しても、同様に平均して3カ月~半年かかります。買収側で一番時間のかかる手続きは、売却先の情報収集や買収を行うかの検討です。
買収には平均して3カ月~半年かかりますが、MアンドAを行いにくい企業や信頼性のない企業に対して交渉を行い途中で断念した場合は、交渉に費やした期間が無駄になります。
それを考慮して情報収集や検討を行うため、一番時間をかけるべき手続きであるといえます。
6. MアンドAに成功するポイント
MアンドAを成功させるには、どのようなポイントをおさえて行えばよいのでしょうか。この章では、MアンドAに成功するポイントを売却側と買収側に分けて解説します。
売却側
売却側がMアンドAに成功するためには、以下5つのポイントをおさえることが大切です。
- 適切な売却時期について
- 適切な売却価格について
- 柔軟な買い手候補の選定基準について
- 健全な運営が行われているか
- MアンドAの専門家に相談しているか
適切な売却時期について
1つ目のポイントは、適切な売却時期を把握することです。売却側にとっては、企業価値と売却価格が最も高いときに売却することが、MアンドAの成功であるといえます。可能な限りそのような時期に売却しましょう。
しかし、会社売却は適切な時期を狙ってできるものではありません。MアンドA戦略や何らかの理由がある場合は、そちらを優先して会社売却を行いましょう。
適切な売却価格について
2つ目のポイントは、適切な売却価格で行うことです。適切な売却価格で取引するためには、企業価値の算出方法に基づいて、MアンドAの専門家に売却価格を算定してもらうのが最も良い方法でしょう。
間違った売却価格を提示した場合、安いと売却側が損をすることになり、高すぎると売却先を見つけるのに時間がかかるため、注意が必要です。
柔軟な買い手候補の選定基準について
3つ目のポイントは、柔軟な買い手候補の選定基準を持つことです。買い手候補の条件を厳しくすると、売却先を見つけるのに時間がかかることになります。
どこまで条件を譲歩できるのかなど、選定基準を明確にしておく必要があります。
健全な運営が行われているか
4つ目のポイントは、買収先の企業で健全な運営が行われているのかを確認することです。当然ですが、債務超過や黒字倒産しかかっている会社を買収しようとする企業はありません。
会社売却を考えている場合は、最低限健全な運営が行われるように改善しておく必要があります。改善ができない場合は廃業の選択をせざるを得ません。
MアンドAの専門家に相談しているか
最後のポイントは、MアンドAの専門家に相談することです。会社売却・会社買収を成功させるためには、MアンドAに関する知識に加え、相手先企業との交渉力が必要になります。
専門的な知識と経験が求められるので、会社売却・会社買収を成功させるためには、M&A仲介会社など専門家のサポートが不可欠といえるでしょう。
M&A総合研究所では、M&A専門のM&Aアドバイザーが専任につき、案件をフルサポートします。無料相談を行っていますので、MアンドAをご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
買収側
次に、買収側がMアンドAに成功するための6つのポイントを解説します。
- 買収戦略の明確化について
- 案件情報の収集について
- 適正な買収価格について
- シナジーの実現可能性の評価について
- 統合プロセスの実施について
- デューデリジェンスの徹底について
買収戦略の明確化について
1つ目のポイントは、買収戦略を明確化することです。買収には多額の費用が掛かるため、失敗すると大きな損失になります。買収に失敗しないよう、買収戦略を明確化しておく必要があります。
案件情報の収集について
2つ目のポイントは、案件情報を収集することです。買収はクロージングを行うまでに、平均して3カ月~半年程度かかります。
情報が不十分のまま交渉を開始し、デューデリジェンスの段階で交渉を白紙にするようなことになれば、費やした期間が無駄になります。
そのような事態を避けるために、MアンドAの専門家に協力してもらい徹底的な情報収集を行いましょう。
適正な買収価格について
3つ目のポイントは、適正な買収価格で交渉することです。売却時の成功ポイントの裏返しになりますが、買収価格が高すぎる場合は損失も大きくなります。
適正な買収価格で取引できるよう、MアンドAの専門家と相談しながら、交渉を進めるようにしましょう。
シナジーの実現可能性の評価について
4つ目のポイントは、シナジーの実現可能性の評価です。MアンドAでシナジー効果が得られない場合は、買収に失敗したといえるでしょう。
したがって、事前にシナジーの実現が可能であるかを評価しておく必要があります。シナジー効果の発揮は、後ほど詳しく解説します。
統合プロセスの実施について
5つ目のポイントは、統合プロセスの実施です。クロージング後は統合プロセスを行いますが、特にソフト面の統合はMアンドAの中で一番難易度が高い行程といわれています。
譲渡企業訪問の際に感じた雰囲気などをもとに、統合プロセスの戦略を練っておくことが重要です。
デューデリジェンスの徹底について
6つ目のポイントは、デューデリジェンスを徹底することです。先述したように、会社買収の手法のうち事業譲渡以外は原則として包括承継となります。
買収後、隠れ債務や法的なトラブルなどにより自社に影響が出ないかをあらかじめ予想しておく必要があります。そのようなリスクを回避するためには、売却会社に対して徹底的なデューデリジェンスを行うことが重要です。
7. MアンドAしやすい企業の特徴
MアンドAしやすい企業には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、MアンドAしやすい企業の特徴を解説します。
- シナジー効果を想定しやすい
- 企業文化が似ている・経営者の影響力が低い
- 対象企業・事業に強みがある
- 黒字経営を維持している
- 売上高が安定している
- 市場が拡大している
- 経営者の引退による会社への影響が少ない
- 簿外債務・偶発債務のリスクが低い
①シナジー効果を想定しやすい
シナジー効果を想定しやすい企業であることです。MアンドAはシナジー効果を得ることを目的に行いますが、失敗すれば大きな損失になります。
買収側は、得られるシナジー効果が想定しやすければ、買収意欲が高くなります。
②企業文化が似ている・経営者の影響力が低い
企業文化が似ている・経営者の影響力が低いことです。先述したとおり、クロージング後のソフト面統合はとても難易度の高い行程です。
企業文化が自社と大きくかけ離れていたり経営者の影響力が大きかったりすると、統合完了までに通常よりも時間がかかることになり、MアンドAによる効果がなかなか得られない状態になります。
このような理由により、企業文化が似ている・経営者の影響力が低い企業は、MアンドAしやすい企業であるといえます。
③対象企業・事業に強みがある
対象企業・事業に強みがあることです。強みが明確であれば、自社の強みと買収企業の強みを掛け合わせたり弱みを消したりすることで、利益額を増加できるといった予測が容易にできます。
売却会社は強みを企業概要書に記載しておくことにより、売却先がすぐに見つかると考えられます。
④黒字経営を維持している
黒字経営を維持している企業です。例えば株式譲渡の場合は、負債もそのまま承継されてしまいます。借入金が多い売り手であると買い手の返済負担が大きくなり、会社経営に大きな影響を与えしまう可能性が高いです。
黒字経営であれば、リスクも少なく売却に有利であるといえるでしょう。
⑤売上高が安定している
安定して多くの売上高を稼いでいる企業のほうが、MアンドAを実施しやすいのは事実です。一方、前年だけの売上高がよい場合は一過性の売り上げとみなされ、安定していない企業と捉えられる可能性があるでしょう。売上高が安定していれば買い手に良い印象を与えられ、MアンドAも進めやすくなります。
⑥市場が拡大している
売り上げの市場規模が拡大している業界に所属している企業であれば、売却しやすいでしょう。迅速に収益を上げるためにMアンドAを実施する企業も多く売り手市場となるため、有利に交渉を進めることが可能です。
⑦経営者の引退による会社への影響が少ない
小規模であるほど経営者の引退が企業に与える影響は大きいため、現経営者がいなければ業績が悪化するような会社は、MアンドAには不利になってしまいます。現経営者が引退しても安定した収益を上げられるような経営を目指すことが、円満なMアンドAにつながるでしょう。
⑧簿外債務・偶発債務のリスクが低い
MアンドAの交渉段階で買い手が注意すべきなのが、対象会社の簿外債務・偶発債務です。もし、簿外債務・偶発債務が発生してしまうと買い手企業の経営に大きな影響を与える可能性があります。
ただ、簿外債務がある中小企業も多く存在しているのが現状です。したがって表明保証などで簿外債務がないことを明確にしておくと、買い手は安心して買収ができるでしょう。もし簿外債務がある場合は、MアンドAの実施前に可能な限り精算しておくのが大切です。
8. MアンドAの際に信頼されやすい買収先
MアンドAの際に信用されやすい買収先には、以下3つの特徴があります。
- 買収先が敬意を払っていること
- 買収先から優秀な社員を派遣していること
- 買収先の社員のモチベーションが高いこと
①買収先が敬意を払っていること
1つ目は、買収先が敬意を払うことです。一般的に、MアンドAの交渉は、買収側の立場が上になります。態度が大きすぎると良い条件を提示していても、売却側から交渉中断を申し入れられる可能性もあります。
MアンドAの交渉は、相手先企業の信頼を得るために、特に買収先は売却先に対して敬意を払うようにしましょう。
②買収先から優秀な社員を派遣していること
2つ目は、買収先から優秀な社員を派遣することです。デューデリジェンスや譲渡企業への訪問の際、売却会社は買収先の社員はどのような人なのか無意識のうちに確認します。
そのときに優秀な社員を派遣しておけば、好印象を与えられるため、信頼を得ることが可能です。
③買収先の社員のモチベーションが高いこと
3つ目は、買収先の社員のモチベーションが高いことです。会社売却において、経営者は売却後の従業員の雇用維持を最も懸念しています。
MアンドAによって自社の従業員がステップアップできるようにと願っています。ほとんどの社員のモチベーションが高ければ、「従業員を託せる」と信頼を得られるでしょう。
9. MアンドAの相談先
MアンドAで買収や売却を行う際は、MアンドAの専門家に相談する必要があるのは、先述したとおりです。
ここでは、MアンドAを行う際の6つの相談先に関して、それぞれの特徴を解説します。
- MアンドA仲介会社
- MアンドAアドバイザリー
- マッチングサイト
- 金融機関・証券会社
- 公的機関、事業承継・引継ぎ支援センター
- 税理・会計・法務事務所
①MアンドA仲介会社
1つ目は、MアンドA仲介会社です。MアンドA仲介会社は、買収会社と売却会社の希望を聞いて、条件に合う会社同士に打診します。
主に中小企業のMアンドAを得意分野としているのが特徴で、当サイトの運営元であるM&A総合研究所も、MアンドA仲介会社の1つです。
②MアンドAアドバイザリー
MアンドAアドバイザリーは、買収企業もしくは売却企業のどちらかに専属的にサポートを行い、その企業が最大の利益を得られるように交渉を行います。
MアンドAの交渉はアドバイザリーを通して行われ、主に大企業のMアンドAを得意分野としています。
③マッチングサイト
マッチングサイトとは、そのサイト上に買収希望や売却希望の案件を掲載し、サイトを閲覧した人から連絡を受けてMアンドAの交渉を開始する仲介形態です。
手数料が圧倒的に安いことに加え、幅広い案件を扱っているのですぐに相手を見つけられることがメリットです。
④金融機関・証券会社
金融機関・証券会社の中には、MアンドAを専門に扱う部署があります。専門性の高さでは、MアンドA仲介会社に負けておらず、また大手の金融機関や証券会社のもとで運営を行っているため、安心感があります。
⑤公的機関、事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業基盤整備機構が運営を行っている公的機関の1つです。メリットには、中小企業のMアンドAに特化していること、公的機関であるため手数料や成功報酬が比較的安いことが挙げられます。
⑥税理・会計・法務事務所
税理・会計・法務事務所でも、MアンドAは相談できます。しかし、各事務所ではそれぞれの専門に特化した事案しか相談できないため、相談内容によって相談先を変える必要があります。
10. MアンドAの相談先を選ぶポイント
MアンドAの相談先は数が多いため、「どこにするべきかわからない」経営者は多いのではないでしょうか。MアンドAの相談先を選ぶときは、以下5つのポイントをおさえるとよいでしょう。
- その分野の専門的知識・MアンドA実績を持っている
- 自社と同規模の案件実績がある
- MアンドAに関する幅広い知識・経験を持っている
- 手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい
- 担当スタッフの対応・相性が合う
①その分野の専門的知識・MアンドA実績を持っている
MアンドAの相談先選びで重要なことは、その分野の専門知識やMアンドA実績を持っているかです。事業規模の大きいMアンドAの相談先では多数の案件を扱っているため、その分野に適したスタッフが在籍しています。
一方、小規模なMアンドA相談先の場合は人的資源が少ないため、ある分野に特化している会社がほとんどです。MアンドAの相談先を選ぶ際は、一度相談先の公式サイトや口コミを参考にしたり、無料相談を利用したりすることをおすすめします。
②自社と同規模の案件実績がある
2つ目のポイントは、自社と同規模の実績があるかどうか確認しておくことです。先述したように、大企業と中小企業とでは交渉方法が異なるため、実績のある規模が異なると相談を断られる可能性もあります。
③MアンドAに関する幅広い知識・経験を持っている
MアンドAを成功させるためには、幅広い知識と経験が必要です。相談先のMアンドAに関する知識が幅広く、経験が豊富であるほどMアンドAの成功確率は高まると考えられます。
それを判断するには、経営者自身もMアンドAに対する多少の知識が必要になるので、事前に勉強しておくとよいでしょう。
④手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい
MアンドAを行うためには、多額の資金が必要になります。合わせてMアンドAの相談先に対して、手数料や相談料・成功報酬も支払う必要があります。
できるだけこれらの料金体系がわかりやすいMアンドA相談先に、依頼するようにしましょう。
⑤担当スタッフの対応・相性が合う
担当スタッフの対応・相性は一番重要です。担当スタッフの対応・相性が悪いとMアンドAの手続きをスムーズに進められず、成功確率を大きく下げることになります。
対応・相性が悪いと感じた場合は、すぐに交代してもらうよう依頼しましょう。
11. MアンドAの際の売却価格と評価方法
次にMアンドAの際の売却価格と評価方法を紹介します。企業価値の算出や売却価格の算出方法には、主に以下の3種類があります。
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
コストアプローチ
コストアプローチとは、会社の純資産額をもとに企業価値を算出し、そこから売却価格を算定する計算方法です。コストアプローチには、簿価純資産法と時価純資産法があります。
前者は、貸借対照表に記載されている純資産額をもとに算出する方法です。後者は、簿価価格を時価に評価しなおしてから純資産額を算出します。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、将来得られると想定される収益額をもとに企業価値を算出し、売却価格を算定する計算方法です。
将来的に成長が見込まれる会社の売却の場合は、インカムアプローチが使われます。インカムアプローチには、DCF法と配当還元法があります。
前者は、1年間の収益から企業が自由に使える資金(キャッシュフロー)をもとに企業価値を算出する方法です。後者は、株主に分配される配当金をもとに企業価値を算出する方法です。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは市場での株価や取引額をもとに企業価値を算出し、売却価格を算定する計算方法です。マーケットアプローチには、市場株価法と類似会社比準法があります。
前者は、売却会社と類似している企業の株価をもとに時価総額を算出し、企業価値を算定する方法です。後者は、類似企業の財務状態を参考に企業価値を算定します。
企業価値の算出方法は、以下の記事でも詳しく解説します。
12. MアンドAにかかる税金
MアンドAでは多額の資金が移動するため、それに対して課税されます。売却側は売却益に対して所得税、法人税、消費税などが課税されます。
一方、買収側は会社の資産を入手するため、みなし所得税やみなし法人税などが課税されるでしょう。行うMアンドAスキームによって、課税される税金が異なるため注意が必要です。
MアンドAにかかる税金は、以下の記事でも詳しく解説します。
13. MアンドAにかかる費用
MアンドAにかかる代表的な費用には、相談料・着手金・リテナーフィー(月額報酬)・中間金・成功報酬・その他手数料があります。
ここでは、これらの費用を簡単に解説します。
相談料
相談料は、MアンドAに関して正式な依頼をする前の相談手数料をいいます。相談料は無料で行っているMアンドA仲介会社が多いですが、相談料が必要な会社もあるでしょう。
電話やメールでの相談を無料で受け付けている仲介会社もあるので、気軽に利用できます。
着手金
着手金とは、MアンドAを依頼したときに支払う料金のことです。近年、MアンドAの相談を行う業界では、着手金が無料であることが主流になっています。
リテナーフィー(月間報酬)
リテナーフィーとは、月額顧問料のことをさしており、MアンドAのサポートを行ってもらう期間中、払い続ける料金です。リテナーフィーの金額は相談会社によって決められますが、この料金を必要としない相談会社もあります。
中間金
中間金とは、MアンドAの交渉の各段階で支払う報酬のことです。支払うタイミングは相談先や契約内容によって異なります。金額も会社や契約内容によって異なっていますが、ほとんどの場合はレーマン方式で計算されます。
成功報酬
成功報酬とはMアンドAに成功したときに支払う料金のことです。報酬額はレーマン方式で計算されます。
レーマン方式では、MアンドAの取引額に対して数%分を報酬として算出するため、取引金額が大きくなるほど計算される割合も大きくなります。
その他手数料
その他の手数料とは、MアンドA仲介会社などの専門家に依頼した場合、MアンドA業務を実施する際に必要となる費用をいいます。紹介手数料、デューデリジェンス費用、実務実行にかかる費用などが発生するケースもあるでしょう。
デューデリジェンスであれば、法務デューデリジェンス、財務・税務デューデリジェンス、ITデューデリジェンス、人事デューデリジェンスなどがあり、MアンドA仲介会社に依頼した場合、おおよそ100〜200万円程度の費用がかかります。
他にもMアンドAの実務実行にかかる費用は多岐に渡るため、必要なときに随時支払うことになります。依頼内容やサポート内容によって金額は大きく変動するため、具体的な相場は存在しません。
どのような手数料がかかるのかは、相談時に確認するのが重要です。
14. MアンドAの案件紹介
この章では、実際に紹介されているMアンドAの案件を2件紹介します。
①【東京都】個別学習塾の譲渡
この塾は個人経営であり、別の事業に専念するため譲渡を行います。直近の売上高は1,000万円以下、希望譲渡額は1,000万円以内です。
小学生から中学生を対象とした学習塾で、指導経験のない人でも指導できるノウハウがある点が強みです。
②【近畿地方】iPhone修理業
この企業は、会社戦略の見直しのために事業譲渡を行います。直近の売上高は1,000万円以下、希望譲渡額の提示はありません。この企業の強みは、アップル社では受け付けていない即日修理に対応できる点で、リピーター率は8割を超えています。
15. MアンドAに向けた準備
MアンドAをスピーディーに行うには、事前の準備が必要です。ここでは、MアンドAに向けた準備に関する以下の3つのポイントを解説します。
- MアンドAの専門家に相談する
- 書籍・Webサイトなどから情報収集する
- マッチングサイト・金融機関・公的機関に相談する
①MアンドAの専門家に相談する
1つ目は、MアンドAの専門家に相談することです。MアンドAの戦略策定や売却価格の算出など、MアンドAの専門知識を要する内容は、MアンドA仲介会社などの専門家に相談することが重要です。
MアンドAの実施を検討している場合は、準備の段階から積極的に相談するようにしましょう。
②書籍・Webサイトなどから情報収集する
2つ目は、書籍・Webサイトなどから情報収集することです。MアンドAでは経営者も戦略などを考える必要があるため、ある程度MアンドAに関する知識を身につけておく必要があります。
その勉強方法として、書籍・Webサイトなどから情報収集することをおすすめします。
③マッチングサイト・金融機関・公的機関に相談する
3つ目は、マッチングサイト・金融機関・公的機関に相談することです。MアンドAの専門家に相談することに比べると、いずれも敷居が低いです。
簡単な相談内容であれば、マッチングサイト・金融機関・公的機関にも相談できます。
16. MアンドAのメリット・デメリット
ここではMアンドAのメリット・デメリットに関して、売却・譲渡側と買収側に分けて解説します。
売却・譲渡側のメリット
まず、MアンドAを行う売却・譲渡側のメリットには、以下の6つが挙げられます。
- 売却・譲渡利益の獲得
- 後継者問題の解決
- MアンドAによる自社の成長・発展
- 事業再編・注力事業へのかじ取り
- 将来性の不安を解決
- 個人債務・債権・保証の解消
売却・譲渡利益の獲得
会社を売却することで、売却益が得られます。その資金を用いて新たな事業を起こしたり、経営者を引退する場合は老後の生活に使ったりもできます。
売却・譲渡利益の獲得は、MアンドAを行う際の大きなメリットといえるでしょう。
後継者問題の解決
会社売却をすることにより、後継者問題を解決できるでしょう。近年、中小企業を中心に事業の引き継ぎ手がいないといった後継者問題が深刻になっています。
MアンドAは、後継者問題を解決する1つの選択肢でもあります。
MアンドAによる自社の成長・発展
MアンドAによるシナジー効果を得たり、親会社から資金提供を受けたりできるので、自社の成長・発展を期待できます。MアンドAでの子会社化によって自社が成長・発展すれば、従業員のモチベーション向上を期待することも可能です。
事業再編・注力事業へのかじ取り
事業再編や注力事業へかじ取りを行うため、MアンドAを行うケースもあります。売却により、本業や売却する事業の共倒れを防ぎ、かつ成長させることが可能です。
将来性の不安解決
事業規模の大きい会社に売却できれば、その事業の将来的な不安を解消できるでしょう。特に、売却する会社が抱えている従業員の雇用維持は解決できます。
個人債務・債権・保証の解消
個人経営から成長した中小企業の場合、経営者自身が無限責任で経営を行っているため、個人債務や債権・保証を負っていることがほとんどです。
しかし、会社売却は原則包括承継であり、個人債務や保証なども引き継がれるため、これらのことから解放されます。
買収側のメリット
次は、MアンドAの買収側におけるメリットを解説します。
- 新規商品の獲得・サービスの拡充
- スケールメリットによるコスト削減
- 関連・周辺分野への低コスト参入
- 新規事業への低コスト参入
- ライバル企業の吸収・買収
- 一括生産・内製化に向けた準備
新規商品の獲得・サービスの拡充
売却会社が販売していた商品やサービスを提供できるため、ラインアップを拡充できるでしょう。売却会社の技術や開発力とのシナジー効果により、新商品の開発・販売ができる可能性もあります。
スケールメリットによるコスト削減
買収により事業規模が大きくなるため、コスト削減を期待できます。このシナジー効果を生産のシナジー効果といいます。
関連・周辺分野への低コスト参入
一般的に関連・周辺分野に参入するためには、設備投資や人材確保などの多額の資金、ノウハウを確立するまでの時間が必要です。しかし、関連・周辺分野の会社を買収することでこれらを獲得し、すぐに経営を行えるため資金面だけでなく、時間の面においても低コストで参入できます。
新規事業への低コスト参入
新規事業も設備、人材、ノウハウなどを獲得できるため、一から事業を起こすよりも低コストで参入できます。
ライバル企業の吸収・買収
ライバル企業を吸収・買収することで、競争相手を減らし市場シェアを拡大できます。しかし、独占禁止法に抵触する場合があるので、MアンドA仲介会社などの専門家と相談したうえで買収を行うようにしましょう。
一括生産・内製化に向けた準備
買収により工場などの規模が大きくなると、自社で生産できる能力は大きくなります。外注しにくい製品の生産能力を高められたり、自社製品の品目数を増やしたりできます。
売却・譲渡側のデメリット
MアンドAの売却・譲渡側のデメリットを解説します。まず、MアンドAを行うことにより、従業員や取引先との関係が悪化する可能性もあるでしょう。
特に売却側・譲渡側の従業員はMアンドA後の待遇が悪化する場合もあり、解雇されることも考えられます。MアンドAによって取引先との契約が終了してしまう可能性もあるでしょう。これらを避けるためには、MアンドA交渉段階で従業員や取引先に対する処遇を細かく定めておくことのが重要です。
次に、自社の売却・譲渡を検討しても、条件に合う買い手企業が見つからない可能性もあります。従業員や取引先との関係性を保ちつつ、できるだけ高く売却したいのが売却側・譲渡側の本音でしょう。
買い手探しはMアンドA仲介会社などの専門家に相談したうえで、希望額の設定・譲渡内容を含めたMアンドA戦略を十分に練ることが必要です。
買収側のデメリット
MアンドAの買収側のデメリットを解説します。MアンドAでは、資産や不動産などを引き継ぐと同時に負債も引き継ぐ可能性もあります。帳簿に記載されている負債であれば、交渉の段階で情報を獲得できるため問題はありません。
しかし、帳簿に記載されていない簿外債務や偶発債務は気付きにくく、買収後に簿外債務や偶発債務が見つかった場合、買収側の経営が大きく傾く可能性もあるでしょう。したがって、MアンドA前に専門家へ依頼しデューデリジェンスを行う必要があります。
MアンドAは、従業員に大きな影響を与えます。労働条件の変更や社内の派閥争いなどが発生する可能性もあるでしょう。これにより、優秀な人材が流出するケースも考えられ、優秀な人材の流出は経営に大きなダメージを与えます。優秀な人材の流出を防ぐためには、従業員に事前の丁寧な説明が大切です。
17. MアンドAが株価にもたらす影響
上場企業の場合、自社の株式が株式市場で流通していているため、日々株価の値段がつきます。したがって、MアンドAによって勢いのある会社を子会社化、あるいは市場の投資家によいイメージを与えられるMアンドAを実行すれば、株価は上昇するでしょう。
一方、非上場企業の株価は、純資産・資本金・配当金などによって算出します。MアンドAによって収益性が上がり純資産や資本金が増加すれば、結果的に株価は上昇します。
ただしMアンドAに負のイメージがある場合やMアンドAが失敗した場合は、株価が下がる可能性も高いでしょう。
18. MアンドAの際におすすめの相談先
MアンドAを行う際は、多面的に分析しさまざまな準備を行うことが重要です。MアンドAを行うときは、M&A仲介会社などの専門家に相談することが不可欠といえるでしょう。
M&A総合研究所では、MアンドAに関する豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーが専任につき、案件をフルサポートします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより随時、受け付けていますので、MアンドAをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
19. MアンドAのまとめ
この記事では、MアンドAに関してさまざまな観点から解説しました。流れや成功ポイントなどは、MアンドAを行おうとしている経営者であれば、最低限知っておくことが大切です。
MアンドAの成功確率を高めるには、MアンドA専門家に相談しサポートを受けながら進めることをおすすめします。
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