システム開発会社の問題を会社譲渡(株式譲渡)で解決しよう!業界動向や事例まで

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

近年、システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)は増えています。今回はシステム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)が増えている理由や、売り手・買い手のメリットについて徹底解説していきます。また、会社譲渡の事例や手続きの流れもわかりやすく説明しています。

目次

  1. システム開発業界の近年の動向・特徴
  2. システム開発会社が会社譲渡(株式譲渡)する理由
  3. システム開発会社を買収したい買い手の狙い
  4. システム開発会社による会社譲渡(株式譲渡)の3つの事例
  5. システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)に必要な手続き
  6. システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)を成功させるポイント
  7. システム開発会社の株式譲渡と事業譲渡の違い
  8. システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)は専門家に相談しよう
  9. まとめ
  10. システム開発業界の成約事例一覧
  11. システム開発業界のM&A案件一覧
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1. システム開発業界の近年の動向・特徴

近年、システム開発業界の会社譲渡(株式譲渡)が増えています。増えている理由をシステム開発業界の動向から読み解いていきましょう。

近年のシステム開発業界は伸びが拡大しており、2020年5月のIT Leadersの情報によると、2019年における企業情報システム市場は前年と比べて4.4%増の10兆8,190億円となっています。

システム開発会社の近年の特徴は、以下の3つが挙げられます。

  1. 各産業におけるIoTの活発化
  2. IT技術の進歩の急速化
  3. 慢性的な人材不足

3つの特徴について詳しく確認していきましょう。

①各産業におけるIoTの活発化

各産業におけるIoT(インターネット・オブ・シングス)が活発化しています。

労働人口が減少してきている日本において、企業成長させるためには人手不足を補うことが必須です。ロボット化や業務効率化など、人手が少なくても業務をこなすためにIoTの技術が不可欠となっています。

カスタマーユーザーにおいてもIoTに求める技術は高度化しているといえるでしょう。例えば、AmazonやGoogleなどがこぞって力を入れているAIスピーカーなどが挙げられます。

ほかにも、家電製品×IT、防犯×ITといったサービスに期待が高まっており、需要も高まる見込みです。各企業のITへの投資意識も高まっており、システム開発業界は今後も拡大していくでしょう。

②IT技術の進歩の急速化

近年、IT技術の進歩は急速化しています。一度技術を獲得しても常に新しい技術を追いかけ続けなくては、日々進化するIT技術に追いつくことはできません。

新しい技術を習得しても1年後には「古い技術」として扱われてしまいます。つまり、時代に即したサービス・製品を提供するためには常にアップデートが必要です。

一方、新しいサービスを供給したいと企業が考えるとき、社内にその技術を持っている人が少ないこともあります。なぜなら、1つの分野に特化していると、別分野の技術は持っていないこともあるからです。

例えば、会社の基幹業務システムの開発技術とスマートフォンのシステム開発技術では全く別の技術が必要となります。

しかし、「基幹業務ソフトをPCだけでなくスマートフォンからも使いたい」といったニーズは多いでしょう。

このようなときに、人材を1から集めなくてはなりません。同じシステム開発といっても、さまざまな分野の技術が混在しており、それぞれの技術が日々進歩しているのです。

③慢性的な人材不足

システム開発業界では慢性的な人材不足が問題となっています。これはIT業界全体にいえる課題です。

なぜなら、IT需要が急激に拡大している一方で最新の技術を取得し続けることが難しいからです。エンジニアが離職してしまうケースもたくさんあります。

さらに、エンジニアの収入の低さも人材不足の原因です。特に中小企業・中堅企業では下請けの仕事が多く、数をこなさなければ事業継続できません。

人材不足が原因で仕事が請けられなかったり、新しいサービス・製品の開発に時間がかかったりします。

人材不足は、中小企業ほど深刻です。なぜなら採用募集をしても人が集まらず、知名度の高い大手企業に人材を確保されてしまうからです。

人材不足を理由に廃業したり事業を縮小したりする企業は増えています。このように、システム業界における人材不足は深刻な問題です。

これらの問題を解決できず、会社譲渡を決意する経営者が増えています。次の章で株式譲渡を決意する経営者が増えている理由を、もっと詳しく確認していきましょう。

2. システム開発会社が会社譲渡(株式譲渡)する理由

システム開発会社が会社譲渡(株式譲渡)する理由は、4つあります。

  1. 人材不足で仕事を請けられない
  2. 案件単価が下降傾向にある
  3. 安定した経営基盤を獲得したい
  4. 後継者はいないが事業継続したい

順番に理由を確認していきましょう。

①人材不足で仕事を請けられない

まず、人材不足で仕事を請けられないと判断し、会社売却を決意するケースが考えられます。自社だけでは人が少なくて請けられない仕事でも、会社譲渡をすれば、グループ会社全体として仕事を請けることができるからです。

今までは1社単体で請けられた仕事も、1つの案件が大きくなることで請け負いきれなくなります。請けられる仕事が減り、事業継続に不安を覚えるでしょう。

そこで、会社売却をすると親会社が請けた仕事の一部を請けられるようになり、安心して事業継続ができるのです。

このように、人材不足が原因で仕事が受けられず事業継続することに不安を感じ、会社譲渡を決意する経営者は多くいます。大手傘下に入ることで安定して仕事を受け続けることができるのです。

②案件単価が下降傾向にある

システム開発会社の会社譲渡の理由に、案件単価の下降が挙げられます。

システム開発会社は仕事の需要は増えているにもかかわらず、単価が下がっています。なぜなら、オフショア開発や内製化が増えているからです。

また、業界構図も単価が低くなる要因の1つといえます。システム開発業界では、下請けの下請けの下請け、といったように実際にシステム開発業務を行っている会社は、3次請け・4次請けであることも珍しくありません。

システム開発会社の案件単価も下がってきています。そして、エンジニアの離職につながったり、利益確保ができなくなったりしてしまうのです。

そこで、会社譲渡をします。4次請けの会社が1次請け会社の子会社になれば、同じ仕事をしてもかなり案件単価は上がるというわけです。

このように案件単価の下降傾向によって、会社譲渡を決意する会社は増えています。

③安定した経営基盤を獲得したい

安定した経営基盤を獲得するために、会社譲渡をするシステム開発会社もあります。人材不足や薄利商売によって、経営基盤に不安を抱える経営者が増えているからです。

しかし、大手企業に会社譲渡をすれば経営基盤は安定します。なぜなら、会社譲渡をすることで株主が大手企業に変わるからです。

ブランド・知名度はもちろん、大手企業には財力もあります。経営していくうえで、事業継続の心配をすることはなくなるでしょう。

④後継者はいないが事業継続したい

システム開発会社では事業継続したいのに後継者がいないことも問題となっています。事業継続をするために、会社譲渡を決意する経営者も多いです。

1990年代から拡大し始めたシステム開発会社ですが、起業が多かったのは1998年以降です。その頃25歳〜40歳ほどで起業した若者も今や引退を考える年代となりました。

どの業界でも少子高齢化に伴って後継者不足は課題となっています。しかし、システム開発業界における後継者不足はさらに深刻といえるでしょう。

なぜなら、専門の知識を要するため引き継ぐ人材が非常に少ない状態だからです。後継者がいない場合、最悪廃業せざるを得ません。

そこで、事業を継続させるために、会社譲渡(株式譲渡)は非常に有効な手段といえます。なぜなら、第三者を後継者として企業を譲渡できるからです。

経営者が高齢になった場合は、早めに見つける必要があります。早期に譲渡先を見つけ、企業を引き継ぐべきといえるでしょう。

システム開発会社の事業継承については、下記の記事をあわせて確認してください。

【関連】システム開発会社の事業承継はどうする?承継方法と成功事例を紹介

以上、システム開発会社を会社譲渡する理由でした。一方で、システム開発会社を買収したい買い手も増えています。次の章で、買い手の狙いを確認していきましょう。

3. システム開発会社を買収したい買い手の狙い

システム開発会社を買収したいと考える買い手の狙いは、以下の3つです。

  1. サービス・製品の内製化をしたい
  2. 人材や技術を確保したい
  3. 異業種からIT分野に進出したい

買い手の狙いを知ることで、どのような会社の需要があるのかを知ることができます。順番に確認していきましょう。

①サービス・製品の内製化をしたい

自社でサービスや製品を提供している会社は、これらを内製化したいという思いがあります。

システム開発・保守・運用・販売までを一括提供することで、コストダウンを図ったり、よりニーズに合わせたサービス・製品にしていきたいと考えたりしているのです。

開発までは外注で良くても、その後改良を続けるたびに予算を確保し他社へ依頼をかけなければなりません。また、外注先がいつでもフレキシブルに対応してくれる約束もないのです。

そこで、システム開発会社を買収し、子会社にするケースがあります。そうすることで、自社のイメージどおりのサービス・製品を作れたり、顧客からのフィードバックに対してスピーディーな対応が取れたりするのです。

このような理由から、システム開発会社を買収したいという会社が増えています。

②人材や技術を確保したい

人材や技術を確保したいという狙いによってシステム開発会社を買収しようとする会社も多いです。

システム開発業界・IT業界では慢性的な人材不足が課題となっています。一方で需要は拡大しているため、一人でも多くのエンジニアを確保したいのです。

今より会社を成長させるためにはエンジニアや技術の獲得が必須ともいえます。

IT技術の進歩の速さはめざましいものです。そのため、業界内では常に「どちらが早く発表できるか」が重視されます。

自社の開発スピードを早めるためにも人材や技術の獲得は必要です。しかし、1人1人採用をしていると時間と労力がかかります。

そこで、すでに技術力とエンジニアを抱えているシステム開発会社を丸ごと買収して採用するのです。このような理由でシステム開発会社を買収したい会社は多いです。

③異業種からIT分野に進出したい

システム開発会社を買収することで、異業種からIT分野に進出したいという狙いもあります。

例えば、Amazonを例にしてみましょう。元々のAmazonの本業は、ECサイトの運営です。しかし、近年Kindleといった電子書籍サービスやAIスピーカーの開発を行い、自社サービスとして提供しています。

もちろん、ECサイト運営とAIスピーカーの開発には全く別の技術が必要です。このようにノウハウや技術力がないけれどもIT分野に進出したい場合は、システム開発会社を買収するのが手っ取り早いです。

商品・サービスを早急に提供し、フィードバックに基づいた改良を現在も行い続けています。

このように、異業種からIT分野に進出する際も、すでに技術力やノウハウの持つシステム開発会社を買収しようとする会社が多いのです。

  • システム開発会社のM&A・事業承継

4. システム開発会社による会社譲渡(株式譲渡)の3つの事例

システム開発会社の株式譲渡・会社譲渡の事例を見ていきましょう。今回は、以下の3社による事例を見ていきます。

  1. SBテクノロジーによる株式譲渡
  2. 日立製作所による株式譲渡
  3. NTTデータによる株式譲渡

では、1つずつ見ていきましょう。

①SBテクノロジーによる株式譲渡

SBテクノロジー

SBテクノロジー

出典:https://www.softbanktech.co.jp/

          買い手企業      売り手企業
SBテクノロジー 電縁
建設業やグローバル製造業などの法人、官公庁・自治体に向けたプロジェクトを手掛ける会社 通信、自治体などを中心にシステム開発を手掛ける会社

2020年6月に、SBテクノロジーは、電縁を株式譲渡により買収しています。

SBテクノロジーはソフトバンクのIT支援やクラウドやセキュリティの技術力を強みとして、主に建設業・グローバル製造業の法人、官公庁・自治体向けのプロジェクトを行っている会社で、電縁は、各種システム開発を行っている会社です。

この買収によってSBテクノロジーは、電縁との強みを融合したグループ間シナジーの創出を見込んでおり、収益基盤がより強化され企業価値が上がることを目指しています。

②日立製作所による株式譲渡

日立製作所

日立製作所

出典:https://www.hitachi.co.jp/

買い手企業 売り手企業
日立製作所 REAN Cloud LLC
社会インフラ事業を展開する国内最大の総合電機メーカー 不特定多数の企業または個人で使用するクラウド環境のマネージドサービスと既存システムの機能を活用し、システム移行を行う企業

2018年7月に、日立製作所は米国子会社であるHitachi Vantaraをとおして、REAN Cloud LLCを株式譲渡によって取得しました。日立製作所は社会インフラ事業を展開する国内最大の総合電機メーカーです。

情報・通信システムや電力システムといったサービスを展開しています。企業の課題をOTとITに、プロダクトシステムを組み合わせ解決する事業を国内だけではなく海外でも推進しているのです。

一方REAN Cloud LLCは、不特定多数の企業または個人で使用するクラウド環境のマネージドサービスと既存システムの機能をそのまま活用し、新しいシステムへ移行するサービスを提供している企業です。

今回の株式譲渡の目的は、クラウド関連サービス事業の拡大です。日立製作所は、REAN Cloud LLCが保有しているパブリッククラウド関連のサービスの提供能力を獲得します。そしてアメリカを中心に海外にクラウド関連サービス事業を拡大していく目論見です。

日立製作所はIT事業拡大に向けて2017年〜2018年度の2年間で総額1兆円をM&Aに投資する方針を明らかにしていました。そして、REAN Cloud LLCの買収もその一環として実施されたのです。

③NTTデータによる株式譲渡

NTTデータ

NTTデータ

出典:https://www.nttdata.com/jp/ja/

   買い手企業             売り手企業
NTTデータ MagenTys Holdings Limited
データ通信やシステム構築事業を行っている企業 アプリケーション開発、クラウドオーケストレーションといったDevOpsコンサルティングサービスを提供する企業

2018年6月に、NTTデータは、子会社である英国NTT DATA EMEA Ltd.をつうじ、イギリスのMagenTys Holdings Limited を株式譲渡により買収しました。MagenTys Holdings Limitedは、イギリスで、アプリケーション開発、クラウドオーケストレーションといったDevOpsコンサルティングサービスを提供する企業です。

オープンソースフレームワークといったIP資産を多く保有しているほか、エンジニアリングスキルが非常に高い企業とされています。今回の株式譲渡は、NTT DATA EMEAの保有しているデジタルトランスフォーメーションサービスの強化が目的です。

デジタル化が加速している状況で、他社と差別化するサービスや強みが欲しいと考えていました。MagenTysのDevOpsケイパビリティを活用することで、顧客のデジタルトランスフォーメーションの強化を図っています。

ここまで事例を見てきましたが、実際にシステム開発会社を会社譲渡するとなると何から始めて良いかわからないため、次の章で、会社譲渡に必要な手続きの流れを確認していきます。

【関連】システム開発会社の売却・M&A事例30選!計算方法や相場は?高値で売る方法を解説

5. システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)に必要な手続き

システム開発会社を会社譲渡(株式譲渡)するときは、以下の7つの手続きが必要です。

  1. 買い手企業探し
  2. 買い手企業と面談・交渉
  3. 基本合意契約の締結
  4. 買い手企業によるデューデリジェンス
  5. 株式譲渡契約の締結
  6. クロージング
  7. PMI作業

それぞれの手続き内容について事前に確認し、スムーズに会社譲渡を実行しましょう。

①買い手企業探し

まずは、買い手企業探しからです。買い手企業は、以下のような探し方があります。

  • M&A仲介会社に相談する
  • マッチングサイトに登録する
  • 弁護士や会計士などの士業に相談する
  • 銀行などの金融機関に相談する
  • 知人の情報網を駆使する

もし、まったく株式譲渡についての知識がないならM&A仲介会社に相談するとスムーズに進むことが多いです。なぜなら、サポートが手厚く、比較的低コストでサポートを受けられる可能性が高いからです。

M&A仲介会社は会社譲渡に特化しているため、専門知識も豊富に持っています。士業や銀行も専門知識を持っていることが多いですが、報酬が高くなることが多いです。

また、最終的にはM&A仲介会社を紹介されることも多いので、初めからM&A仲介会社に相談した方が時間短縮になるでしょう。

さらに、マッチングサイトや知人のつてを使うと費用はかかりませんが、専門家の手を借りないと不利な条件で会社譲渡してしまう可能性が出てきます。

このような理由からM&A仲介会社に相談することをおすすめします。M&A仲介会社に相談すると、買い手企業の候補を複数紹介してくれます。

気になる企業があればM&A仲介会社をとおして、アプローチしてもらいましょう。

もし相談先にお心当たりがなければ、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には、会社譲渡(株式譲渡)に精通したM&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートいたします。

無料相談を行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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②買い手企業と面談・交渉

買い手候補が決まったら、トップ面談という経営者同士の話し合いを行いましょう。

トップ面談では会社譲渡の条件を交渉しません。なぜ会社譲渡・買収をしようと思ったのか、今後どのように会社を発展させたいかなど、経営者や企業についての理解を深めていきます。

例えば、「人が足りなくて請けたい仕事が受けられない。技術は十分にある。」などと、自社をアピールすることも大切です。互いに「この経営者となら交渉を進めたい」と感じたら、会社譲渡の条件について話し合いを進めていきましょう。

買い手企業側から、意向表明書を提出されることもあります。意向表明書とは、「このような条件で会社を買収したい」という意向を文章にした書類のことです。

意向表明書が提示されたら、その内容を元に条件を決めていきましょう。

③基本合意契約の締結

互いに納得のいく譲渡・買収条件がまとまったら、基本合意契約を締結します。

基本合意契約とは、会社譲渡における基本的な条件の合意事項を確認するための書類です。話し合ってきた内容を改めて確認する意味で、書面にまとめます。

内容が正しいか経営者自身で確認し、さらに弁護士などの専門家にリーガルチェックをしてもらいましょう。

基本合意契約を締結しても、会社譲渡が確実に行われるわけではありません。なぜなら、このあと行われるデューデリジェンスによって問題やリスクが出てきたときは無効となるからです。

④買い手企業によるデューデリジェンス

続いて買い手企業によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、買い手企業による売り手企業の詳細な内部調査のことです。

例えば、財務状況やキャッシュフロー、取引先との契約内容などがチェックされます。システム開発会社の会社譲渡においては、特にエンジニアの持つ技術力を詳しく確認されるケースが多いです。

システム開発会社の買収はエンジニアの採用を目的として行われることがよくあります。あらかじめエンジニアの持つ技術力が客観的に伝わるよう、以下のような内容をまとめておきましょう。

  • 過去の経歴
  • 社内での実績
  • 対応可能な技術力

事前にまとめておくことで、スムーズなデューデリジェンスが行われるでしょう。ほかにも、資料請求や会社の視察の立会いなどを求められるかもしれません。

専門家の力を借りながら、適宜対応しましょう。

⑤株式譲渡契約の締結

デューデリジェンスが問題なく終われば、株式譲渡契約を締結しましょう。

株式譲渡契約とは、会社譲渡をするための契約です。これによって株主が買い手企業に変わることが約束されます。

他にも、譲渡価格や従業員の扱いなど、さまざまな条件が記載されている書面です。一度契約すると撤回できないので、締結前に専門家にチェックをしてもらいましょう。

⑥クロージング

株式譲渡契約の締結後は、クロージングです。

クロージング期間には、会社譲渡の対価を受け取ったり株式名簿の書き換えをしたりします。株式譲渡契約の締結とは別日に譲渡対価の受け取りや株式名簿の書き換えを設定しているケースは多いです。

具体的には、株式名簿の名前を買い手企業にするために、売り手企業に対して株式名簿の書き換え請求を行います。さらに、書き換えが終わったら、株式名簿記載事項証明書を発行しましょう。

株式名簿記載事項証明書によって、株主が買い手企業となったことが証明されるのです。

⑦PMI作業

クロージングと同時にPMI作業も進めていきましょう。PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、会社譲渡後に効果を最大化させるための買い手企業との統合プロセスのことです。

具体的には、経営・業務・意識など、すべてにおいて統合を行っていきます。

会社譲渡の場合、会社はそのまま存続するため通常業務は問題なくこなせることが多いです。しかし、会社譲渡に伴って、社内の業務システムや人事業化システムが変わる場合は意識改革が必要となります。

また、従業員の人事配置によっては、買い手企業の従業員として働くことも考えられるのです。このような場合でも、問題なく業務をこなせるようにPMI作業を行います。

PMIは売り手企業の経営者も手伝い、早く従業員が馴染めるようにサポートしてあげましょう。

6. システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)を成功させるポイント

システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)を成功させるポイントを見ていきましょう。

特に、以下の3点は重要なポイントです。

  1. 開発力の高さ
  2. 人材の技術力の高さ
  3. 専門知識と交渉力

では、1つずつ見ていきましょう。

①開発力の高さ

システム開発会社では、開発力の高さが非常に大切です。特に、近年ではシステム開発会社が急増しています。

そのため、他社と差別化することで譲渡額が上がる可能性が高いです。開発力の高さは、差別化のための大きなポイントといえます。具体的には、以下の点が重要です。

  • どのような技術があるのか
  • これまで培ってきた開発力や技術力
  • 今後どのような開発ができるか
  • 自社のみにしかない強みやノウハウ

買い手企業にとって自社にない開発力を持っているかどうかは重要です。開発力や技術力は、第三者に説明できるように明確にしておきましょう。

②人材の技術力の高さ

システム開発会社は、在籍する人材の技術力も非常に大切です。システム開発会社ではエンジニアの腕がすべてといっても過言ではありません。

仮に、企業自体が小さくても優秀な人材が揃っていれば譲渡価格は上がるのです。

そのため、個人の学歴や実績もアピールポイントとなります。具体的には以下の点が挙げられるでしょう。

  • 従業員の学歴
  • 従業員の職歴
  • これまで携わってきたプロジェクト
  • 他社と差別化できる従業員の強み

優秀な従業員は、買い手企業も欲しがります。どのような人材がいるのかアピールしましょう。

③専門知識と交渉力

譲渡価格を高めるためには、交渉力は非常に大切です。自社の強みやメリットを最大限にアピールできるかどうかで、譲渡価格にも影響します。

交渉を上手く進めるためには、専門知識や経験が必要です。具体的には、税務・法務・財務などの専門知識が必要となります。交渉を上手く進めるためには、M&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。

もし専門知識や経験に自信があるM&Aアドバイザーをお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。

M&A総合研究所には、専門知識や経験の豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、案件をフルサポートいたします。まずは無料相談をご利用ください。

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7. システム開発会社の株式譲渡と事業譲渡の違い

システム開発会社の会社譲渡をするとき、一般的に株式譲渡という手法が使われます。なぜなら、主に会社の株主の名義を変更するだけで会社の資産・負債を買い手企業に譲渡できるからです。

しかし、株式譲渡をすると会社に残したい資産や負債を残すことはできません。もし、会社に残しておきたいものがあるなら、事業譲渡という手法を活用しましょう。

事業譲渡とは、事業の一部・または全てを譲渡する手法です。事業譲渡だと、譲渡する範囲を決めることができます。

しかし、資産・負債に対して1つずつ名義変更の手続きをしたり、従業員との労働契約や取引先との契約もすべて結び直したりすることが欠点です。

そのため、従業員が新たな企業の元で働きたくないといえば労働契約を結び直すことができません。

また、取引先は違う会社と契約を結び直すことになります。このとき買い手企業によっては、取引条件を変えることがあるでしょう。

このように、株式譲渡と事業譲渡には大きな違いがあります。

どちらの手法を使うべき?

結論からいうと、シンプルな手続きで高値で譲渡したいなら株式譲渡、会社に残したいものがあるなら事業譲渡を選びましょう。

基本的には会社ごと譲渡したいなら、株式譲渡をすべきです。事業を譲渡するより会社まるごと譲渡する方が相場も高くなる傾向となっています。

どうしても残したいものがあるときだけ事業譲渡を選ぶようにしましょう。

システム開発会社の事業譲渡については、下記の記事で詳しく説明しています。参考にしてください。

【関連】システム開発会社の事業譲渡(事業売却)の動向やメリット、手続きについて解説

8. システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)は専門家に相談しよう

システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)は必ず専門家に相談しましょう。

なぜなら、システム開発会社の会社譲渡における会社の価値判断はとても難しいからです。システム開発会社の持つエンジニアの価値やIT技術の価値を客観的に判断することは難しいといえます。

そのため、システム開発を含めるIT業界に精通している専門家に相談し、客観的な価値判断をしてもらいましょう。また、エンジニアやIT技術を高く評価してくれる企業に売却することで譲渡価格も高騰します。

もし、思い当たる専門家がいない場合は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所はシステム開発会社の会社譲渡の実績もあるので、安心してお任せいただけます。

会社譲渡に関するあらゆるアドバイスはもちろん、取引完了までM&Aアドバイザーがサポートいたします。

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9. まとめ

システム開発会社の会社譲渡(株式譲渡)は、近年増加しています。会社譲渡を成功させるポイントをしっかり押さえ、抱えている課題を解決しましょう。

システム開発会社の会社譲渡を成功させるためには、専門家の力を借りることも大切です。

10. システム開発業界の成約事例一覧

11. システム開発業界のM&A案件一覧

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