IT企業の事業承継はどうやればよい?方法・メリット・成功のポイントを紹介

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

ソフトウェアだけでなくWebや通信インフラなど、技術の多様化に伴いIT企業は増加してきました。企業が増えるにつれ、事業承継を行う企業も増えています。ここではIT企業の事業承継について解説しています。ぜひ参考にしてください。

目次

  1. IT企業の事業承継にある3つの承継方法
  2. IT企業のM&Aによる事業承継はなぜ増えている?2つの理由を紹介
  3. IT企業が行った事業承継M&Aの事例6選
  4. IT企業の事業承継M&A案件一覧
  5. IT企業の事業承継を成功させるポイント
  6. 事業承継における経営の見直しから承継までの6ステップ
  7. IT企業の事業承継にある2つの注意点
  8. IT企業の事業承継まとめ
  9. IT業界の成約事例一覧
  10. IT業界のM&A案件一覧
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1. IT企業の事業承継にある3つの承継方法

まず、IT企業にある3つの事業承継の方法を確認しましょう。承継方法は、以下の3つです。
 

  1. 親族へ行う親族内事業承継
  2. 従業員などに行う社内事業承継
  3. M&Aにより第三者に事業承継

1つずつ、紹介していきます。

①親族へ行う親族内事業承継

親族内承継は、事業承継の中でも従来行われてきました。親族への承継は、後継者の人柄を知っているため相談しやすいからです。

親族に事業承継をすれば、創業者は承継後も事業に関わりやすくなります。声がかけやすいので、気軽に経営に関するアドバイスが可能です。

一方で親族内承継は、後継者が自社にいなければ入社してもらい、基本的なプログラミング言語やWebマーケティングなどのスキルを覚えて実務経験を積んでもらわなければなりません。その後、経営者としてのスキルを身につけてもらうので、事業承継が完了するまでに長ければ10年ほどの期間が必要です。

また、後継者は経営者としての個人保証など負債を背負うことになります。もし、不安を感じるのであれば、親族内承継とは違う方法も検討すべきといえるでしょう。

②従業員などに行う社内事業承継

従業員承継とも呼ばれる社内承継は、社内の従業員や役員を後継者として事業を引き継いでもらう方法です。この場合、後継者はITに関するスキルや実務経験があるので、自社の課題や改善方法を知っていることがメリットといえます。

しかし、従業員に事業承継をすれば企業文化や社風は引き継いでもらえますが、それだけでは事業は大きく発展しません。したがって、経営者としてのスキルを身につける期間が、半年から5年ほど必要です。

もし、従業員への事業承継を考えている場合は、育成期間を考慮して早めに打診してください。

③M&Aにより第三者に事業承継

事業承継は、第三者の個人や企業に対して行うことも可能です。経営スキルがある人物を新たな経営者に選べるので、安心して承継できます。

たとえば、教育ノウハウを持っていたりアプリ開発力の高い企業であったりなど、リテラシーの高い買い手を選ぶことが可能です。

また、第三者が事業承継をする場合、相手を見つけることが難しいといわれていますが、現在はM&Aでの事業承継も珍しくなく、さまざまな承継先が見つけられます。

しかしながら、第三者への事業承継が初めてであれば、M&A仲介会社などの専門家に依頼して、相手を探してもらった方がいいでしょう。

2. IT企業のM&Aによる事業承継はなぜ増えている?2つの理由を紹介

近年、IT企業のM&Aを活用した事業承継は増加しています。増加している理由は、以下の2つです。
 

  1. 優秀な技術者を確保したい
  2. AIなどの最新技術を確保したい


M&Aが増加している理由がわかれば、「承継先が見つからないかもしれない…」という心配も軽減されます。1つずつ、見ていきましょう。

①優秀な技術者を確保したい

優秀な技術者の確保を目的としてM&Aをする企業が増えています。なぜなら、IT業界は人材不足により、技術者確保の需要が高まっているからです。

経済産業省は、IT人材の需給モデルを構築し、既存の統計データを基に日本のIT人材数を推計しました。その結果、若年層の人口減少により、2019年をピークにIT関連産業への新規入職者が退職者を下回り、IT人材の数は減少すると予想されています。また、IT人材の平均年齢が2030年まで上昇し続け、高齢化が進むことも予測されています。

一方で、IT需要予測から推計されるIT人材需要とのギャップを考慮すると、日本のIT人材は労働集約型で生産性が低いことを前提にすると、2030年までに40万から80万人の規模で不足する懸念があります。

たとえば、未経験者を技術者として育成するには、時間とお金のコストがかかります。そこで、イチから教育はせず他のIT企業を買収し、そこに在籍している経験とスキルを持った技術者を確保するのです。

IT企業を買収すれば、教育にかけるコストを削減して優秀な技術者を確保できるので、IT企業の事業承継が増えています。

参考:経済産業省「参考資料(IT人材育成の状況等について)」

②AIなどの最新技術を確保したい

AI技術を獲得するために、IT企業のM&Aを行う企業が増えています。IT業界は技術の進歩が早いため、自社開発のみだと進歩の速度に追いつけないからです。

特に、AI・IoTやHRテック、自動運転などに関しては技術の獲得を目的として事業売買が行われています。したがって、最新技術を使って開発ができる企業を確保したがる買い手が多いのです。

以上の理由で、IT企業のM&Aを活用した事業承継は増加しています。この情勢から考えて、承継先が全く見つからないということは、まずありません。

【関連】システム開発会社のM&A・買収・売却の完全マニュアル【成功事例6選あり】

3. IT企業が行った事業承継M&Aの事例6選

次に、IT企業における事業承継の事例を紹介します。事例は、以下のとおりです。

  1. キャリオットによるソラコムへの事業承継
  2. Phone AppliによるADX ConsultingへのLINER事業の承継
  3. プリンストンによるミナトホールディングスへの事業承継
  4. Keepdataによるピー・シー・エーへの事業承継
  5. ITソフトジャパンによるトライアンフコーポレーションへの事業承継
  6. システムアイによるSHIFTへの事業承継


事業を親族や従業員へ承継する場合、外部に公表されることがほとんどありません。ですから、今回は他社への事業承継の事例に絞って紹介します。

売り手側が事業承継をするに至った理由など、参考にしてみてください。

キャリオットによるソラコムへの事業承継

ソラコムは、フレクトの「Cariot」事業を承継する予定のキャリオットの株式を一部取得し、合弁会社として子会社化することを決定しました。

ソラコムはIoTプラットフォーム「SORACOM」の開発・提供を行っており、フレクトはクラウド技術を活用したDX支援や「Cariot」サービスを提供しています。

モビリティ業界はトラックドライバー不足や業務の非効率性などの課題に直面しており、フレクトは「Cariot」サービスの成長を加速させることで、これらの課題解決を目指しています。この背景を踏まえ、フレクトはソラコムとの合弁会社を設立し、事業展開を図ることにしました。

ソラコムとフレクトが、車両管理クラウド「Cariot」事業の 合弁会社化に関する契約を締結

Phone AppliによるADX ConsultingへのLINER事業の承継

SHIFTのグループ会社であるADX Consultingは、Phone Appliが手掛けるLINER事業を吸収分割方式で承継することを決定しました。

ADX ConsultingはERP、EPM、CRMに関するコンサルティング事業を展開しており、Phone Appliは企業のコミュニケーションやウェルビーイング経営を支援するアプリケーション・サービスを提供しています。

LINERは、LINEやSMSなどのメッセージアプリとCRMの顧客データを連携するアドオンアプリであり、これを継承することで、ADX Consultingはサービス力を強化し、幅広い顧客ニーズに対応することが可能となります。

さらに、SaaS型の収益と導入支援などの派生ビジネスを持つLINERは、ADX Consultingの収益安定化に貢献すると期待されています。

PHONE APPLI、SalesforceとLINEを連携する「LINER」事業承継のお知らせ

プリンストンによるミナトホールディングスへの事業承継

2020(令和2)年8月、プリンストンは、ミナトホールディングスに対して全株式を譲渡し完全子会社となりました。譲渡価額は公表されていません。

売り手のプリンストンは、テレビ会議システム、パーソナルコンピュータ記憶装置および周辺装置の販売などが主事業で、特に固有の米国製品の国内販売代理店としての強みを持っています。

一方、買い手のミナトホールディングスは、国内グループ会社6社(プリンストンが7社目)、海外2社の体制で、メモリーモジュールなどの設計・製造・販売事業を主力に、そのほか、デジタル会議システム、デバイスプログラミング・ディスプレイソリューション、システム開発などを行っている企業グループです。

今回のM&Aでは、両社ともに、今後のデジタルトランス2フォーメーション(DX)関連市場や、通信規格5G向けサービス、IoT関連市場などで、プリンストンがミナトホールディングスの子会社となることで、事業の拡大と成長が見込めると判断した模様です。

なお、プリンストンの株式を所有していた同社取締役3名に対しては、このM&Aと同時に、ミナトホールディングスの新株式第三者割当が実施されています。この割当でミナトホールディングスが調達した金額は、1億2,699万300円です(株式の発行諸費用300万円を差し引いた金額)。

Keepdataによるピー・シー・エーへの事業承継

2019(令和元)年3月、IoT技術やビッグデータを使ってIT事業を経営するKeepdataは、ピー・シー・エーに対して4,500万円でM&Aを行い子会社となりました。

売り手のKeepdataは、IoT技術を活用したサービスを開発するスタートアップ企業で、これまでもさまざまな会社と資本業務提携を行って事業拡大を行っています。

一方、買い手のピー・シー・エーは、中小企業向けの基幹業務ソフトを開発・販売を行っていました。KeepdataにあるビッグデータやIoT技術を使って、新しいサービスを開発することが承継の目的です。

この事例のように、資本はなくても技術があるIT企業が、事業拡大を狙って大手企業とM&Aをする例は新たな技術の開発とともに増えていくでしょう。

ITソフトジャパンによるトライアンフコーポレーションへの事業承継

2019年3月に、ITソフトジャパンはトライアンフコーポレーションに対して3,200万円でM&Aを行いました。

売り手のITソフトジャパンは優良顧客を多数抱えていましたが、経営者の高齢化により事業承継が課題とされていたのです。トライアンフコーポレーションに対して会社を承継し、後継者問題を解決することが狙いとされています。

買い手のトライアンフコーポレーションは、ITソフトジャパンを買収した後、システム開発事業を行っている子会社のインフォメーションサービスフォースと合併しました。合併をすることで、顧客基盤の強化と技術力の向上を狙っています。


ITソフトジャパンのように、後継者不在の問題を解決するために事業承継をする例があるのです。

システムアイによるSHIFTへの事業承継

2019年2月、システムアイはSHIFTに対して9億円でM&Aを行いました。

売り手のシステムアイは、システムコンサルティング事業や開発事業を得意としており、金融や流通業界に精通した技術者を抱えています。一方、買い手のSHIFTはシステムにおける品質保証をするソフトウェアのテスト事業を行っている企業です。

SHIFTはシステムアイを買収することで、金融や流通業界に精通した技術者と顧客を獲得して事業拡大を狙っています。システムアイがSHIFTの子会社となることで、事業の発展を考えているのです。

このように他社へ事業承継をすることで、会社を残したまま買い手と売り手の事業を発展させられます。

また、以下の記事では、IT企業におけるM&A事例について、より詳しく紹介していますので、ご興味のある方はご覧ください。

【関連】IT業界のM&A動向!会社売却のメリットや注意点・事例69選を徹底解説【2024年最新】
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4. IT企業の事業承継M&A案件一覧

本章では、弊社M&A総合研究所が取り扱っているIT企業の事業承継M&A案件をご紹介します。

【オーストラリア/政府認定】総合ITコンサルティングサービス

オーストラリアにて、政府当局に対しシステム開発やSAP導入支援、テスト業務等を提供する総合ITコンサルティング会社です。複数官庁から認定を受けていることから独占的、かつ安定的な案件獲得が可能です。
 

エリア 海外
売上高 10億円〜25億円
譲渡希望額 約25億円(応相談)
譲渡理由 創業者利潤の獲得、さらなる事業拡大

【関連】【オーストラリア/政府認定】総合ITコンサルティングサービス(ウェブサイト・システム) | M&A総合研究所

【確かな技術と顧客基盤】ITインフラ構築

ITインフラ構築、セキュリティ、ブロックチェーンなどの実装、保守、メンテナンスを手掛けている会社です。30年以上の業歴を有しており、取引基盤も充実しています。
 

エリア 海外
売上高 25億円〜50億円
譲渡希望額 希望なし
譲渡理由 戦略の見直し

【関連】【確かな技術と顧客基盤】ITインフラ構築(ウェブサイト・システム) | M&A総合研究所

5. IT企業の事業承継を成功させるポイント

「事業承継をするためにアクションしよう」と判断したものの、どのようにすればうまく事業承継できるかわからないという場合もあるでしょう。

この項では、IT企業の事業承継を成功させるポイントを3つ掲示します。
 

  1. 自社の技術力を高める
  2. セキュリティ管理を万全にする
  3. M&A仲介会社に相談をする


ポイントを知っておけば、実際に事業承継をする前に自社で何をしておけばよいのか明確になります。それでは1つずつ、見ていきましょう。

①自社の技術力を高める

従業員を育成して、自社の技術力を高めましょう。技術力の高い従業員がいるほど、事業承継時の価格は上がるからです。

IT業界の技術者不足は深刻であり、たとえばAIやIot、Fintechをはじめとする最新技術に精通している技術者は少ないといえます。したがって、買い手は優秀な技術者を一度に囲うために事業承継したいと考えているのです。

もし、AI技術の需要が特に高ければ、AI技術をあつかえるように教育しておくことで事業の価値は高まります。研修や勉強会を行い、スキルを向上させて、事業承継に備えて自社の技術力を高めましょう。

②セキュリティ管理を万全にする

自社のセキュリティ管理は万全にしましょう。セキュリティ事故の被害に遭ってしまうと、業務停止せざるを得ないですし、管理が甘いとされて自社の価値が下がってしまいます

セキュリティ事故には機密情報や個人情報の流出、ホームページ改ざんなどがありますが、どれも常に対策を更新しなければならないのが現状です。インターネットを使って事業を行う以上、セキュリティ事故はどの企業にも起こりえます。

つまりは、自社の価値を下げないためにもセキュリティ対策を万全にしなければならないのです。

③M&A仲介会社に相談をする

事業承継をする際にはM&A仲介会社などの専門家に相談しましょう。自力で事業承継を行おうとすると、専門家にサポートしてもらうのより何倍もの時間と労力がかかってしまうからです。

M&A仲介会社にサポートしてもらえば、事業承継の計画立てはもちろん、資料作成や承継先との条件交渉も手伝ってくれます。特に、第三者へ事業承継する場合は手続きが多くなるため、経営者だけでスムーズにこなすことは難しいです。

事業承継は、弁護士やコンサルティング会社もサポートしてくれますが、専門知識や経験が豊富なM&A仲介会社に依頼するのがよいでしょう。

どのM&A仲介会社にするか決めかねるような場合には、M&A総合研究所にお声がけください。M&A総合研究所では、随時、無料相談を実施しています、事業承継についての疑問や悩みなどが内容は問いません。電話でもメールでも、お気軽にご連絡ください。

【関連】IT会社のM&A・事業承継ならM&A総合研究所
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6. 事業承継における経営の見直しから承継までの6ステップ

こちらでは、IT企業が事業承継を行う際の流れを紹介します。承継までは、以下の6ステップです。
 

  1. 現在の経営を見直す
  2. 事業承継の計画を立てる
  3. 誰に承継するか決める
  4. 事業承継の手法を決める
  5. 条件交渉を行って契約書を作成する
  6. 事業承継を実行する

流れを覚えて、事業承継のイメージを掴みましょう。

①現在の経営を見直す

最初に、現在の経営状態を見直してください。経営状態を見直して、自社の強みや経営の問題点を洗い出しましょう。

買い手は、開発経験が少ない人材が多かったり、技術レベルが低かったりするような事業は引き継ぎたくありません。ですから、経営上の問題点は事業承継をする前に改善してください。

経営を見直す際は、以下の点をリストアップしましょう。

  • コストの削減はできるか
  • 業務の効率化はできているか
  • 営業力はあるか
  • 従業員の開発実績は何があるか
  • 従業員の技術力は上げられるか
  • 人材の確保や教育はできているか

同様に、自社の強みも挙げてください。自社製品やサービス、従業員のスキルや取引先のリストなど、後継者が魅力的に思う内容を書き出しましょう。

②事業承継の計画を立てる

経営状態の見直しが終わったら、事業承継の計画を立てます。計画は、以下の点を整理してください。
 

  • 事業承継をいつまでに終えるか
  • 事業承継にどれくらいの期間と費用をかけられるか
  • 今後の収益はどれくらいか
  • 経営上の問題点をどれくらいで改善できるか
  • 従業員や取引先にはいつ話すのか

整理が終わったら、大まかなスケジュールを立てます。スケジュールを立てることで、事業承継を行動に移しやすくすることが可能です。

③誰に承継するか決める

次に、承継相手を決定しましょう。承継先には、親族・従業員・第三者があります。

親族や従業員に対して事業承継する場合、相手の人柄を知っていることから声をかけやすいです。しかし、個人の資金力がない場合には、事業承継することは難しいといえます。

第三者へ事業承継する場合は利益を得られますが、専門家に相談しなければ後継者を見つけることは難しいです。後継者によって事業承継の方法は変化しますが、今まで続けてきた事業を任せる相手ですから、しっかり検討しましょう。

④事業承継の手法を決める

事業承継の相手が決まれば、具体的な承継の手法を決めましょう。事業承継において、よく使われる手法は以下の2つです。
 

  • 事業譲渡
  • 株式譲渡

それぞれの方法について、紹介します。

事業譲渡

会社組織は手元に残し、会社の事業の一部または全部を譲渡する手法を事業譲渡といいます。事業譲渡は、譲渡する内容を指定することが可能です。

たとえば、従業員や取引先、ソフトウェアの権利などのうち、どこを譲渡するか決められます。ただし、譲渡する部分を決められる以上、会社の負債は引き継いでもらえない可能性があるのです。負債を引き継いでもらえない場合、譲渡で得た金額から負債を支払う必要が出てきます。

株式譲渡

譲渡側が持つ株式を譲受側に売却して、経営権を譲渡する方法を株式譲渡といいます。株式譲渡は経営権を譲渡するだけですから、会社を丸ごと、そのままの形で存続させることが可能です。

また、負債も含めて譲渡できます。しかし、資本業務提携の形で事業を行いながら他社をパートナーにしたい場合は注意してください。

経営権を全て譲ってしまうと、望むように事業が進められないので資本業務提携をした意味がありません。経営権を失わないためにも、譲渡した後の持ち株比率について注意しましょう。

⑤条件交渉を行って契約書を作成

承継先と方法が決定した後は、条件交渉を行って合意を得て契約書を作成しましょう。契約書があれば、事業承継後にトラブルが発生しても責任の所在をハッキリさせられるからです。

また、譲渡の条件や価格だけでなく、今後の経営方針も話し合ってください。

合意した内容については、書面にして管理しましょう。承継先が親族や従業員であっても、譲渡条件やリスクを記載した契約書を作成してください。

⑥事業承継を実行する

交渉や契約がすんだら、いよいよ事業承継の実行です。事業承継を実行する前に、従業員や取引先に内容を説明してください。

突然、事業承継を行って経営者が変わると混乱やトラブルの原因となってしまいます。

また、事業承継の後は新しい経営者へのサポートも必要です。経営に慣れるまでの半年から1年程度、アドバイスを行い、新しい経営者をサポートしてあげましょう。

なお、以下の記事では、事業承継の手続きについて詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

【関連】事業承継の手続きを解説!事業承継の方法と流れ・必要書類・相談先・費用も紹介

7. IT企業の事業承継にある2つの注意点

事業承継の流れについて紹介しました。しかし、IT企業における事業承継には以下2つの注意点があります。

 

  1. ソフトウェアなどの特許があれば移転をする
  2. 事業承継の目的と目標を決める

注意点と対策について、見ていきましょう。

①ソフトウェアなどの特許があれば移転をする

ソフトウェアなどの特許があれば、権利の移転をしてください。移転をしなければ、承継先の会社が特許権を侵害してしまい、トラブルの原因となってしまうからです。

自社が単独で保有する特許権を承継する場合、売り手と買い手で行う条件交渉の際に承継する特許権を決定しなければなりません。そして、特許権は登録をしなければ移転の効果を発揮しないので、特許庁に対して承継先へ特許権を移転することを伝える必要があります。

したがって、もし事業承継の内容に特許も含まれるのであれば、必ず移転をしましょう。

②事業承継の目的と目標を決める

事業承継をするにあたり、目的と目標を決めましょう。目的と目標を決めておけば、条件交渉の際に一貫性のある判断ができるので、結果的に事業承継の失敗を防ぐことが可能です。

たとえば、「社員の雇用は必ず守る」などの譲れない条件、「なぜ事業承継をするのか?」という事業承継における目的、「事業承継の後にはこんな会社にしたい」という目標を明確化しましょう。そのうえで優先順位をつけておけば、買い手との交渉をスムーズに進められます。

【関連】IT企業の事業売却(事業譲渡)を成功させよう!事例や相場など解説
【関連】IT企業の株式譲渡(会社譲渡)の相場は?メリットや事例を知って問題解決

8. IT企業の事業承継まとめ

事業承継をすれば、会社を残しながら従業員の雇用を守れます。IT業界は会社同士の競争やトレンドの変化が激しいので、優秀な人材が確保できない企業は今後さらに厳しい経営になってしまうでしょう。

今後の経営が心配であれば、赤字が続いて企業価値が下落する前に事業承継を検討することをおすすめします。

9. IT業界の成約事例一覧

10. IT業界のM&A案件一覧

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